2017秋、切なる祈り   

東京は台風接近中。朝から断続的に大雨が降り続いている。よりによってこの悪天候下の選挙投票日。昨日の期日前投票には長い列が出来ていたそうだ。

そして、スペインでは、カタルーニャが揺れに揺れている。事態は収束どころか、より対立が激化。刻々と変わる情勢に緊張が続いている。日本でも、カタルーニャにご縁のあった人は皆、胸を痛めているだろう。『カタルーニャ独立派が大規模デモ

スペインは複雑な国だ。いつの時代にも、広く人々の間で、スペイン人とは?カタルーニャ人とは?の問いかけがなされてきた。『1119♪ カタルーニャの歌たち

音楽家も例外ではない。グラナドスは書簡のなかで、『ある人は「君はスペイン人なのだから、もっとスペインらしい曲を書け」と言い、ある人は「君はカタルーニャ人なのだから、もっとカタルーニャらしい曲をかけ」と言う。腹立たしい。スペインでもカタルーニャでもない。私の音楽は私自身の中から生まれるのだ』と、書き残している。実際、今年リサイタルで歌う曲のうち、〈悲しみにくれるマハⅡ・Ⅲ〉は、マドリードの下町の粋な女性の歌、〈ヒターノの唄〉はアンダルシア風のリズムと旋律、そして〈愛の歌〉は世紀末カタルーニャをイメージさせる作品、と、グラナドスの作風は多彩だ。

「貴方の音楽はカタルーニャ的ではないが?」とインタビューアーに問われたモンポウ は、「違う。私のカタルーニャ的特性は、すでに新しいものに進化しているのだ」と答えた。たしかに名歌〈君の上には花ばかり〉や〈〉は、カタルーニャうんぬんを超越したもっと普遍的な美に到達している。そして、モンポウが深く心の拠りどころにしたのは、16世紀スペインの神秘主義の巨人、十字架のヨハネの世界だった。〈魂の歌

国連で「カタルーニャの鳥はピース、ピースと啼くのです」と語り〈鳥の歌 〉を奏でたカザルスも、少年時代には、スペイン王室の庇護のもとで音楽を学んだ。スペイン共和政府下ではマドリードの名誉市民にもなっている。内戦勃発後はフランスに亡命。フランコ政権の独裁に断固抗議し、終生反ファシズムを貫いた。カザルスが故郷の聖地モンセラートの修道院聖歌隊に捧げた曲は、カタルーニャ語が禁止されていた時代も、今も、大切に歌われてる。



長い歴史の中で、真剣に、愚直に、時に命をかけた問いを繰り返し、道を見出してきたスペイン、カタルーニャ、そして愛するバルセロナ。2017年の今、平和裏に、賢明に、再び道が見い出されることを、切に、切に、祈る。

第26回リサイタル
2017年11月19日(日)14:00開演@Hakuju Hall
ご来聴をお待ちしています!

90年代バルセロナ


こんな明るいカタルーニャ・ルンバがまた流れる日を。。。。。



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# by Megumi_Tani | 2017-10-22 21:23 | ビバ!エスパーニャ! | Comments(0)

「恩師」   

太鼓の梅屋巴さんが主催されるコンサート『二つの月~Dues llunes Concert』にお邪魔した。副題に「深い感謝を込めて~amb molt Agraïment」とある。巴さんのお師匠様の三回忌に捧げるコンサートだった。黒いお着物、たっぷりと結い上げられた髪、美しい所作、さりげない阿吽の呼吸から繰り出される演奏…。普段、邦楽にはほとんど縁がない私も、存分に楽しませていただいた。

ご縁の糸は不思議だ。当日会場で、出演者のおひとりが小樽の高校の後輩と分かった。受付で「あぁ潮陵に…」と、ふたりで小さく口ずさみ、巴さんもビックリ!実は私は数日前に高校の同期会に出席。皆で校歌を大合唱してきたばかりだった。さらに驚いたことに、この日の別の出演者のお母様も同窓生とのこと。こんなことってあるのかしら\(◎o◎)/「El mundo es un pañuelo~世間は狭い」なぁ。

「恩師に捧げるコンサート」ということで、コンサート前半では、出演者のお一人おひとりがご自分の恩師について語られた。芸の上だけでなく、人生そのものに深く大きな影響を与えられた「恩師」という存在。皆さんのお話を伺いながら、私自身もこれまで節目、節目で出会った大切な方々のことが胸をよぎった。声楽へ進むことを強力に奨めた高校の先生、当初は留学など考えもしなかった私に渡西を強く強く奨めた師、そしてバルセロナの師。いつも誰かに導かれ、いつも何が何だかよく分からないまま、ただ夢中で歩いて来た。バルセロナの師は今年傘寿を迎え、元気で活躍している。これもまた偶然昨日、地元のラジオで彼のインタビューが放送された。カタルーニャ語の響きをどうぞ。
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巴さんとは、フェイスブックの共通のお友達を通じて知り合った。以前、バルセロナでお仕事をされたことがあるそうで、その時の印象を鮮明に覚えていらっしゃる。彼女主催のコンサートのタイトルも副題もカタルーニャ語。このカタルーニャ語に関する質問が時々私のところに飛んでくる。今回は時期が時期なので、お客様にほんの少しカタルーニャのご紹介をしましょう、ということになった。そんな顛末諸々が動画配信されていました。11分頃から私達のトーク。その後、巴さん達の演奏をお楽しみいただけます。

母校の風が吹き、恩師の風が吹き…。リサイタルまでちょうど一ヶ月。今の私に出来るベストの演奏をお届けしたい、と、あらためて思う。

第26回リサイタル
2017年11月19日(日)14:00開演@Hakuju Hall
ご来聴をお待ちしています!

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# by Megumi_Tani | 2017-10-19 13:00 | 思い&想い | Comments(0)

1119♪ カタルーニャの歌たち   

先日来の "独立" のニュースで、カタルーニャの名が日本でも広く知られるようになった。わずか二ヶ月前の8月には、州都バルセロナでテロ事件が起きたばかり。世界の目がカタルーニャに向けられている。

“スペイン” は複雑な国だ。その歴史を知れば知るほど、ひとつの国スペインとして存在することが奇蹟に思えてくる。多様性の国、各々の個性をいかんなく発揮するバラエティー豊かな国。しかし、だからこそ、”ひとつだけどバラバラ” ”バラバラだけどひとつ” このギリギリのバランスを、まさにギリギリのところで保っている。ほんの少しでもそのバランスが崩れると、一気に均衡が破れる。まだまだ目が離せない状況が続いているカタルーニャ。平和裏に解決されることを願うばかりだ。

そんなデリケートな国であればこそ、ご縁があった者はそのデリケートさに謙虚でありたいと思う。いつぞやスペイン音楽のコンサートで、MCがカタルーニャの悪口から始まった時は本当に驚いた。私がカタルーニャ贔屓だから、ということではない。たとえどこかの国の通を自負していても、公の場で、その国の一地方を揶揄するような発言をすることは、外国の文化に関わる人間の姿勢としていかがなものか。逆の場合を考えれば分かり易い。もしも日本通を自負する外国人が「日本のなかでも関東地方の人はケチで有名です」などと、コンサートでヘラヘラ喋れば、たとえ喋った本人はジョークのつもりでも、関東地方の人はいい気はしないだろう。

バルセロナにご縁があった私には、カタルーニャ語の歌も大切なレパートリーだ。素朴な民謡からグラナドス、モンポウ、トルドラらの歌曲、そしてあの 〈鳥の歌〉まで、その表情は柔らかく、切なく、美しい。今回リサイタルで演奏するグラナドス〈Canço d'amor / 愛の歌〉、モンポウ〈Damunt de tu només les flors / 君の上にはただ花ばかり〉〈Neu / 雪〉は、まさにカタルーニャらしい抒情あふれる作品だ。〈Canço d'amor / 愛の歌〉 は、グラナドス没後100年記念の昨年から、ずっと温めていた曲。リサイタル初演になる。

こんな年、こんな時だから、いつにも増してカタルーニャの歌たちが愛おしい。地上で何が起きていようと、音魂は天を駆けめぐる。心を込めて、大切にお届けしたい。

第26回リサイタル
2017年11月19日(日)14:00開演@Hakuju Hall
ご来聴をお待ちしています!

〈鳥の歌〉モンセラート修道院聖歌隊



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# by Megumi_Tani | 2017-10-15 20:06 | リサイタル | Comments(0)

1119♪ ピアニスト浦壁信二さん   

《スペイン浪漫Ⅲ》今年もピアノは浦壁信二さん。スーパー・テクニックと深く柔らかい音色、繊細かつ自由な感性、さらに飄々としたお人柄を併せ持つ、稀有なピアニストだ。初めてご一緒したのは2011年リサイタル。今年で6回目の共演になる。
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スペイン歌曲に限らず、歌曲演奏における伴奏者の力は、とてつもなく大きい。慣習通り「伴奏者」と書いたが、実のところ、伴奏とはとても呼べない。共演者であり、保護者であり、牽引役であり、助っ人であり…。ソリストというのはある意味おめでたい存在なので、共演者にのせられると、百万倍!上手く演奏してしまう。逆の場合は、そう、ちょうど長袴の裾を踏ん付けられているような状態になる。前へ進もうにも進めない、ジャンプしようにも重くて飛び上がれない(>_<)  何故そこでそう弾くの~!と、心中絶叫するハメになる。

しかし、ソリストの方もおめでたく(笑)のぼせているばかりではない。プログラム曲の中で、ピアニストの音色、個性、魅力がいかんなく発揮されることを願う。ピアノの聴かせどころは思いっ切り自由に弾いてほしい。演奏は、共に創るものなのだ。

どういうものか、私は昔から「共演」「共創」に興味があった。舞台の二人の阿吽の呼吸から繰り出される演奏の魅力。初めてそれを実感したのは、大学時代、大阪で聴いたガリーナ・ヴィシネフスカヤのリサイタルだ。夫君、ロストロポーヴィッチのピアノで歌う彼女の姿、舞台から伝わる信頼感。今でも忘れられない。まさか後年、ロストロポーヴィッチと共演した浦壁さんとご縁がつながるとは!

ビクトリア・デ・ロス・アンへレスと師マヌエル・ガルシア・モランテのコンビは、「共演」「共創」の在り方を、まさに目の前で教えてくれた。アルベニス生誕の町カンプロドンで見た演奏会リハーサルの光景は、私の生涯の宝だ。

スペイン歌曲は多彩だ。南スペイン、アンダルシアのオレ!みたいな曲もあれば、ガリシアやカタルーニャのメロディアスな歌もある。クリスマスの歌もあれば、お国自慢の歌もある。グラナドス生誕150年、モンポウ没後30年の今年は、二人のマエストロの有名、無名作品をまとめて歌う。多彩さにますます拍車がかかった。ピアノもひと筋縄ではいかない。先日リハーサルの後、「いやぁ!しっかり濃いプログラムですね」と浦壁さん。
そう!まさにしっかり濃いプログラムです。どうぞ皆様、お聴き逃しなく!

第26回リサイタル
2017年11月19日(日)14:00開演@Hakuju Hall
ご来聴をお待ちしています!

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2016年リサイタル《スペイン浪漫Ⅱ》ⓒ藤本史昭






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# by Megumi_Tani | 2017-10-09 15:10 | リサイタル | Comments(0)

1119♪ ファドの薫り〈あぁ!なんて美しい娘〉   

〈あぁ!なんて美しい娘〉この曲を初めて聴いたのは、ずい分前のことだ。たまたま購入したテレサ・ベルガンサのCDに収録されていた。小曲ながら、一度聴いたら忘れられない哀愁がある。歌いたいな、と思ったけれど、楽譜が見つからない。まだインターネットで楽譜を探す時代でもなかった。いつかまた機会があれば…。


1994年、ビクトリア・デ・ロス・アンへレス来日公演のプログラムに〈あぁ!なんて美しい娘〉が入っていた。ビクトリアはどんな風に歌うのだろう?とても楽しみにして出かけたが、残念ながら、この演奏会でもっとも記憶に残っているのは、配布されたプログラムのお粗末さだ。

〈あぁ!なんて美しい娘〉は〈アイ・ケ・リング・モカ〉と表記されている。
なぜリング?なぜモカ?原題は〈Ai que linda moça〉だ。なぜ linda がリングになった?
なぜ moça がモカになった? ç と c を見間違えたのか?そもそも〈アイ・ケ・リング・モカ〉では、何の歌かまるでチンプンカンプンではないか。

作曲者 Halffter の名前は、スペイン語読みではアルフテルだが、ドイツ系の人なので、しばさしば H を読んでハルフテルと表記される。しかしプログラムでの表記は、アウフテル、だ。アウフテルは一体どこから来た?他のスペイン語の作曲者名、曲名も間違いだらけ。あの曲の解説にも、この曲の解説にも「詳細不明」「内容の明らかなことは不明」と書かれている。よくもまぁ、このまま印刷してしまった?されてしまった?ものだ。

こんなお粗末なプログラムが客に配られていることを、ビクトリアは知っているのだろうか?いや、知っているはずがない。何と失礼な…。いたたまれない気持ちだった。この夜の〈あぁ!なんて美しい娘〉は、あまり覚えていない。演奏会の間中、私はずっと怒っていたのだ。

さて、時は流れて2016年晩秋、また偶然、この歌に遭遇した。ビクトリア・デ・ロス・アンへレスと私の師マヌエル・ガルシア・モランテによるライブ映像だ。



矢も盾もたまらず歌いたくなった。しかも、構想を練っている2017年リサイタルのプログラムにピッタリではないか!今は便利になった。インターネットで楽譜を探せる。さっそく検索して見つけ出し、海外発注するところまで漕ぎ着けた。が、さて、いつ届くか?昔と違って、なしのつぶて、届かない、なんてことはないだろう、と思いつつ、海外発注はちょっと不安がある。まぁ無事届けば歌えるし、届かなければご縁がなかったということで…。
2016年12月31日夜、そろそろ新しい年に日付が変わる頃、ふいにメールが入った。開けてみると、なんと!「楽譜入荷のお知らせ」だ。やった~!

かくして、11月19日、念願の〈あぁ!なんて美しい娘 ~ Ai que linda moça〉を歌わせていただきます。ポルトガルのファドを想わせる哀愁…。お楽しみに!

第26回リサイタル
2017年11月19日(日)14:00開演@Hakuju Hall
ご来聴をお待ちしています!

若きホセ・カレラスが歌うとこんな感じです。彼の健気な魅力全開!



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# by Megumi_Tani | 2017-10-05 00:44 | リサイタル | Comments(0)