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楽譜を作る

秋のプログラムが決まり、恒例の楽譜作りが始まった。

スペインものは楽譜が手に入りにくい。日本で注文を出しても、なかなか届かない。運よく何かの楽譜に遭遇したら、必ず買う。たとえその時に必要でなくても、いささか高価なお値段でも、とにかく買う。今、私の手元にある楽譜は、そうやって長い年月をかけて買い集めたものばかり。貴重な財産だ。

「コピー欲しいんですけど」いとも簡単に言う人がいる。「その楽譜、一ヶ月貸してくれません?」と言った人もいた。先日対談させていただいた濱田滋郎先生も同様の経験を話されていた。貸したまま帰ってこない楽譜が沢山あるそうだ。言語道断である。

失礼m(__)m つい話が横道にそれた。

プログラムの曲の中から、移調が必要なもの、手書きだったり古かったりして見にくいものをピックアップし、楽譜を作る。今はパソコンが作業の大部分を肩代わりしてくれるので楽になった。スペインの歌を始めた頃は、何種類もの太さの異なるペンを用意し、一音、一音、丁寧に五線紙に埋め込んでいったものだ。

シャープをナチュラルにしたり、フラットをダブルフラットにしたり、そうかと思えば、スペインの楽譜屋の棚の奥で数十年眠っていたであろうカビ臭い楽譜のかすれた文字を読み取ったり…。なかなか根気のいる作業である。パソコンで作った楽譜をプリントアウトし、今度は、入力しきれない文字や記号を手で書き込んでいく。最後にタイトルを確認、やっと完成である。出来上がった楽譜をピアニストに渡し、「さぁ、やるぞ!」と二人で自らにゴーサインを出す。

夜なべ仕事が続く。ひどく疲れるが嫌ではない。きれいで見やすい楽譜を作ることはもちろん大事だが、楽譜とジッと向き合うことで見えてくることが沢山あるのだ。たった一つの音符に作曲者の意図を感じることもある。見えない地道な作業の積み重ねが必ず歌に生きてくる。

とはいえ、これも程度問題である。ひたすらパソコンの画面に向い、楽譜の山と格闘していると、目も頭も入力する腕も限界に近づく。キャー!!と叫んで、外を走り回りたくなる。
by Megumi_Tani | 2009-04-30 10:32 | エトセトラ

スペイン歌曲のスペシャリスト♪谷めぐみのブログです


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