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ヴォカリーズによる~わが心のアランフェス

ピアノ、ギターなどの器楽曲に歌詞が付けられた作品がある。いかにも後付け、という感じのやや不自然な詞もあれば、まるで最初から歌詞として書かれたかのように、旋律にピタリとはまっている曲もある。今回のリサイタルでは、そんな作品の中から「スペイン舞曲第5番」「グラナダ」「カディス」を歌う。いずれもオリジナルのピアノ曲に熱い恋心を歌った詞が載せられた傑作。¡Viva España! スペインの魅力全開!である。

同じく歌う「ヴォカリーズによる~わが心のアランフェス」は、J.ロドリーゴ作曲「アランフェス協奏曲」から生まれた作品である。日本でもよく知られたギター協奏曲の第二楽章。哀愁をおびたメロディーに、スペイン語、フランス語、英語など(未確認だが、日本語もあるらしい)の歌詞がつけられ、クラシック、ポピュラー、ジャズetc、様々なジャンルの歌い手が歌ってきた。「恋のアランフェス」「我が心のアランフェス」「Faraway」などのタイトルをご存知の方も多いだろう。

どういうものか私は、この「歌版アランフェス」を知った当初から、歌詞で歌う気持ちになれなかった。美しく端正に細やかに流れる旋律のどこかに、恋の歌詞など寄せつけない何かがある。甘さではなく苦さ、希望ではなく諦め、願いではなく祈り…。ただロマンチックなだけのアプローチを拒否するような、痛いほどの孤独を感じていた。

あとになって、この第二楽章は、ロドリーゴが病で亡くした息子への深い祈りをこめてかいた作品であることを知った。やはり言葉で多くを語る曲ではない、と思った。以来ずっと声だけ、つまりヴォカリーズで歌っている。音に精一杯の祈りをこめて、と、願い、歌っている。
by Megumi_Tani | 2009-09-28 08:08 | スペイン歌曲

スペイン歌曲のスペシャリスト♪谷めぐみのブログです


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