『ギター前史 ビウエラ七人衆』
2012年 12月 01日
西川和子著『ギター前史 ビウエラ七人衆』 彩流社
16世紀、黄金世紀のスペインで隆盛を極め、その後、突然姿を消した謎の宮廷楽器ビウエラ。20世紀になってギタリスト、E.プジョールが発見するまで、その存在は歴史の彼方にひっそりと埋もれていました。著者は、隆盛期にビウエラの楽曲を作り、演奏し、自ら譜本まで出版した七人のビウエリスタ~ミラン、ナルバエス、ムダーラ、バルデラーバノ、ピサドール、フエンリャーナ、ダサ~に着目。彼らの生涯、人柄、家庭環境、当時の印刷事情、時代背景、社会情勢etc、様々な角度から、ビウエラが栄え、消えて行った謎を解き明かしています。
音楽家ではない方が、ここまで調べて書かれたことは驚きです。感謝!
所謂とっつきにくい歴史書ではありません。語り口が優しく、とても読みやすい。何とか王の息子が何とか王子、その子がやがて何とかⅠ世…この辺りの西洋史は頭がこんがらがってしまいがちですが、この本、巻末には、スペイン王家、ビウエラ七人衆各々の詳しい関係系図が添えられています。有名な<狂女王>をはじめ、<幸運王><敬虔王>なかには<恋に死した王子>なんて呼び名も!ビウエラという楽器を通して、黄金世紀スペインの歴史、人間模様が垣間見えます。ご興味のある方、ぜひどうぞ!『ギター前史 ビウエラ七人衆 スペイン宮廷楽士物語』
個人的には、あのアランフェス協奏曲のJ.ロドリーゴがムダーラについて語った言葉に、クスリと笑ってしまいました。 同じ言葉を、私は、ロドリーゴその人に進呈したい、です。