モンポウの歌曲   

プログラムノート第2回は、フェデリコ・モンポウの歌曲についてご紹介します。

スペイン歌曲と出合ってまだ間もない頃、モンポウ作曲「夢のたたかい」という作品を、ビクトリア・デ・ロス・アンへレスのLPレコード(!)で初めて聴きました。スペインには、こんなにも繊細で美しい歌曲があるんだ…。エル・ビートやガルシア・ロルカ採譜による古謡「18世紀のセビリャーナス」しか知らなかった私には、新鮮な驚きでした。レコード店を片っ端から探してみると、モンセラート・カバリェやホセ・カレラスのLPはあるけれど、テレサ・ベルガンサのLPはない。しかも歌詞カードを見ると、綴り方が何だかスペイン語と違っている。カタカナ読みできるはずの歌詞が読めない…。なぜ?…。当時の私は、カタルーニャについて、カタルーニャ語について、何も知らなかったのです。手がかりを探そうにも、肝腎の楽譜が手に入りませんでした。のちにバルセロナへ渡り、老舗の楽譜店Casa de Beethovenでドキドキしながら「“Combat del somni”の楽譜をください」と言った時のこと、先生におそるおそるこの曲のレッスンをお願いしたときのことを懐かしく思い出します。

ピアニストとしての腕前を有していたモンポウは、「歌と踊り」「内なる印象」など、多くのピアノ作品を残しました。一方で、歌曲の分野にも「夢のたたかい」のほか、「魂の歌」「牧歌」「川面に雨がふりしきる」「シル河の金の砂」など、独自の印象深い作品があります。私のCD「魅惑のスペイン」に収録した「雪」は大好きな作品ですが、日本ではほとんど演奏される機会がありません。触れればこわれてしまいそうな儚さ、にぶく透明な世界。薄曇りの冬の空から、はらはらと舞い落ちる雪のかけらが見えるようです…。

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by Megumi_Tani | 2013-04-25 12:08 | スペイン歌曲 | Comments(2)

Commented by 太田公士 at 2013-04-25 14:01 x
モンポウ、いいですね!
谷さんの『魅惑のスペイン』には「牧歌」と「雪」が収録されていますが、CDの最初に入っているので、最初に聞いた曲がこの2曲でした。素晴らしい歌唱で、大変感動しました。
何れも、とても静謐で内省的な情感豊かな作品だと感じます。日本人の我々にもダイレクトに響いてくるものがあるような……。
「雪」はピアノも情景的で、静かに雪が落ちてくる様子が描写されているように思います。しかし単なる情景描写に留まらず、日本的な「もののあわれ」に通じる寂寥感や人恋しさ、時にかすかに響く不協和音が解決した時のかすかな暖かみなど、とてもいい曲。好きです。
「牧歌」もモンポウならではの静かな曲想の中に、恋する熱い思いを感じます。今回のコンサートでもモンポウを何曲か歌われるのですね! 楽しみです!!!

カタルーニャ語との出会い、そうだったんですね! バルセロナに「ベートーヴェンの家」という楽譜屋さんがあるのですね! 面白いですね。
Commented by Megumi_Tani at 2013-04-26 00:49
太田様、ありがとうございます。
ご指摘の通り、モンポウの抒情は、日本人の私たちにも自然に響きますね。主張するのではなく、黙って感じ、見つめるような…。
「牧歌」の静かに熱く燃える心。「雪」の切ないまでの寂寥感、孤独…。大好きです。
「ベートーベンの家」風格ある老舗です!

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