『アンのゆりかご』
2014年 07月 11日
思えば、アンにはあれほど夢中になったのに、翻訳者、村岡花子のことは何も知らない。そこで、朝ドラの原作『アンのゆりかご』を読むことにした。読み終えると、今度は、腹心の友であったという柳原白蓮についても知りたくなった。ここへ来て、またアン絡みにはまっているなぁ…私。
村岡花子の一生は熱い。赤毛のアンが醸し出す、ある種牧歌的なイメージとはかけ離れている。英語で生涯を貫くこと、愛する人を想うこと。信じて決めたら、一途に、真っ直ぐに突き進む。白蓮事件に名を残す柳原白蓮は、その真っ直ぐさに高貴な血と華やかさが加わり、より人生がドラマチックになる。そう、何事も真っ直ぐに突き進むには、途方もない情熱が要るのだ。そして、その情熱が、時に世間や常識の枠からはみ出してしまうことも二人は伝えてくれる。
どちらの本にも、たくさんの恋文が登場する。ほんの少しの日常の出来事、そして、こちらが本題、相手へのほとばしる想いを、毎日、毎日、書き綴る。世を忍ぶ仲であれば宛先にも様々な細工を凝らし、手紙が無事届いたかどうかと気を揉み、返事が来なければ恋しい人が病気ではないか、はたまた、心変わりしたのではないか、と、案じ…。ものすごいエネルギーだ。想いがあるから書くのだけれど、書くことで益々想いが熟していく。一枚の紙に向かい、ただひたすらに相手を想い、一文字ずつ埋めてゆく。なにも混じるもののない、純粋な時間。
そういえば昔、由紀さおりが歌う『恋文』という曲があった。途中は忘れたが、最後のフレーズで「お慕い申し候」と歌う。私は、この「お慕い申し候」が好きだった。子ども心にも、えもいわれぬたおやかさが感じられ、日本語って美しいなぁ…と思った。
折しも、川端康成の恋文が発見され、話題になっている。『川端康成の若き日の恋文発見』
恋文は、手紙の中でも極秘中の極秘のものだ。相手以外の誰かが読むことなど想定していない。こうして後世の私達が読ませていただくことは、なんとも申し訳ない気がするけれど…。
浪漫の熱い心、恋文。
それでは、皆様、ごきげんよう。
第23回リサイタル《スペイン浪漫》
2014年10月4日(土)午後2時@Hakuju Hall
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