バッハ、モーツァルト等の古典からショパン、シューマン、ショパン、グリーグらの作品、そして数々の自作曲まで、超絶技巧を駆使し、超ロマンティックな音楽を奏でる超イケメンの人気ピアニスト!そんなグラナドスが己の音楽を語る手段は、何といっても「ピアノ」だっただろう。「弾くこと」と「語ること、表現すること」は、彼にとって同義だったに違いない。
ピアニストとして、作曲家として、そして教育家として大活躍するなかで、グラナドスの心にふと「歌」が湧き上がる。それは彼にとって本流本命のピアノに較べれば、ちょっとした閃き、ささやかな慰めのようなものだったかもしれない。しかしそこは天才グラナドス!粋と情熱が凝縮した、極めて魅力的な作品を残してくれた。
代表作『Tonadillas~昔風の粋な歌曲集』は、各々がショート・ストーリー仕立ての12曲。シンプルそのものの歌とピアノにのせて、マハとマホの恋模様、男と女の情感の機微が、時に大胆に、時に細やかに歌われる。
『Tonadillas~昔風の粋な歌曲集』の3年後に発表された『Canciones amatorias~愛の歌曲集』は、前作に較べて、音楽の翼をより大きく広げた作品だ。優雅で華やかな、そしてどこか深い陰影をおびた音楽は、まさに「浪漫の人グラナドス」の面目躍如。歌とピアノが織りなす世界が美しい。
グラナドスの作品を歌うと、えもいわれぬ懐かしさ、愛おしさが蘇る。あぁ帰って来た、そんな気がする。9月19日開催の
第25回リサイタル『スペイン浪漫Ⅱ~グラナドス没後100年に捧ぐ』では、今の私に出来る精いっぱいの演奏を、天上のマエストロと愛娘ナタリアさんに捧げたい。
ちなみに、日本でも大人気の『スペイン舞曲第5番アンダルーサ』は、元々はピアノ曲です。あまりに魅力的な音楽ゆえ、後に、歌詞が嵌め込まれました。9月に歌います