渋谷駅とスーツケース   

午後のJR渋谷駅。ホームへの階段を三段ぐらい上ったところで、外国人旅行者と思しき女性が途方に暮れている。スーツケースが重くて、持って階段を上がれないのだ。いわゆる爆買いオーラは感じられない。いかにも素朴に困り果てている様子。エスカレーターもエレベーターも近くには無い。とにかくその階段を上るしかないのだ。思わず、助っ人を買って出た。私も大きなトートバッグを抱えていたが、それでも片手は空いている。一人より二人の方がマシだろう、と。ところが、このスーツケースが予想以上に重い。お腹にグッと力を入れて、二人で持ち上げる。ちょっと頭クラクラ。それでも何とか三、四段上ったところへ、横からサッと誰かが現れた。見ると、スーツ姿のダンディな外国人のおじ様だ。重いスーツケースをあっという間に一人で持ち上げ、階段を上り、ホームまで運んでくれた。「○△×~○△×~」何語かさっぱり分からないけれど、たぶん「ありがとう」らしき言葉を彼女が繰り返すうちに、ダンディおじ様は、もうさっさとホームの先へ向かっている。Thank you~~!! 遠ざかる背中に慌てて叫ぶと、ふり向き、ニッコリ笑って手を振った。


「渋谷駅とスーツケース」には、忘れられない思い出がある。スペイン留学を終えて帰国した時のことだ。まず、成田に着くと、私のスーツケースが消え失せていた(後日、モスクワの空港に放られていたことが判明)。一週間後、運よく、誠に運よく成田に届いた、今日の彼女に負けず劣らず重いスーツケースを引きずり、渋谷にたどり着いた。渋谷駅での移動、階段である。重い、とにかく重い。中には大切な楽譜が入っているのだ。一段持ち上げてはふぅ~、また一段持ち上げてはふぅ~という具合。それにしても…。まぁ見事なほど誰も助けてくれない。チラッと一瞥して通り過ぎる人は何人もいたが、皆、見なかったことにして?通り過ぎてしまう。スペインでは考えられないことだった。イヤ味な外国かぶれになる気は毛頭ないが、それでも、あぁここは日本よ…と、ちょっぴり情けない気がしたものだ。


今日の渋谷駅。広い階段には、もちろん大勢の人、人、人…。元気そうな、少なくとも私より力がありそうな若者も沢山、沢山いた。しかし、あの困り果てている外国人女性に手を貸そうとする人はいなかったし、必死な彼女と私を助けてくれたのは、外国人のおじ様だった。なんだかなぁ。。。


東京オリンピックに向けて、ボランティアをしましょう、とか、外国語を学びましょう、とか、声高らかに色々呼びかけられているけれど、日常の、ごく普通の場での相手への共感、気働きこそ、コミュニケーションの基本のキでは?

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by Megumi_Tani | 2017-05-16 22:19 | 思い&想い | Comments(0)

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