スペインにはお国自慢の歌が沢山ある。より正確に言えば、スペインという「お国」の自慢ではなく、我が村、我が町、我が郷土を誇り、讃え、高らかに歌い上げる。もちろん日本各地にも無数の民謡やご当地ソングが存在するが、スペインの頑たる「お国自慢」は格別だ。これには、スペインという国の複雑な歴史が大きく影響している。グラナドス〈スペイン舞曲第5番~アンダルーサ〉は、オリジナルのピアノ曲に、後年、歌詞が付けられた作品だ。アンダルシアをエキゾチックな女性に例え、その怪しい魅力を讃えている。
さて、リサイタルに向けて本日ご紹介の曲は、F.M.アルバレス作曲〈グラナダに寄す〉
我が夢のアランブラ~!と冒頭から声高らかに歌い上げるこの曲は、グラナダの佳き地、佳き音色、佳きものを次々と掲げ、かの地の魅力を讃える。「我が安らぎの地、美しきグラナダ、アンダルシアの栄光、イスラムの王妃、優しき鐘の音…。我が天国アルプハーラよ、さらば!こんなにお前を愛する者を忘れないでおくれ!…」
イスラムの王妃が出てくるあたりがグラナダの歴史を髣髴とさせる。冒頭のアランブラとは、アルハンブラ、あの有名なアルハンブラ宮殿のこと。「Alhambra」と綴り、スペイン語はhを読まないが、日本では誰かがhを読み???アルハンブラ、として広まってしまった。最後に出てくるアルプハーラは、シエラネバダ山脈を望む「白い村」で名高い地方の名前だ。アルベニスもファリャも、グラナダに恋し、アランブラを愛し、彼の地から大いなるインスピレーションを得た。今回演奏するアルバレスも〈グラナダに寄す〉のほかに、グラナダへの惜別の想いを歌った作品〈別れ〉を書いている。万人を虜にするグラナダの魅力!セギディーリャのリズムに乗って、凛と歌ってみたい。
第26回リサイタル
2017年11月19日(日)14:00開演@Hakuju Hall
ご来聴をお待ちしています!
さきほど歌の最後に登場したアルプハーラ地方。今日は、画家・石井崇先生が現地アルプハーラで撮影された写真をご紹介させていただきます。先生とは昔々の
「プラテーロとわたし」以来のご縁。折しも9月6日から12日まで、大阪・あべのハルカス近鉄本店にて、先生の展覧会が開かれます。関西方面の方、ぜひどうぞ!
『イシイタカシ 情景画の世界 』
24時間水が流れる泉