『アランフェス協奏曲』
2009年 02月 23日
第一楽章。この心地よいリズムを聴くと、なぜか私は、いつもバルセロナの街角を思い出します。お洒落、それでいて端正なパセオ・デ・グラシア辺りを。
第二楽章が始まりました。この旋律は「わが心のアランフェス」として、私もリサイタルで歌っています。お客様のリクエストが多い人気曲です。元来がギター曲というところにこだわり、私はずっとヴォカリーズで歌ってきました。自分の声を限りなく楽器に近づけて歌ってみたい気がするのです。しかし今朝は、そんな自分の歌のことをすっかり忘れ、ギターとオーケストラの響きに聴き入っていました。胸の奥に深く、強く染み入る旋律。そこには、メロディー、と、カタカナで書くことを躊躇わせる何かがあります。
第二楽章も終盤にさしかかった時、ふいに、心の奥底が強くふるえるのを感じました。どうしようもない切なさ、哀しさ。時空を越えたどこかへ私の魂は飛び、号泣しているようでした。慟哭、という、日常からかけ離れた言葉が心に浮かびました。
第三楽章が終わる頃、また私は家事をしている自分に戻り、今日の予定が動き出しました。何事もなかったかのように。
音楽は不思議です。予期せぬ時、予期せぬどこかへ、私たちの心を誘ってくれます。
オフィシャルHP:http://www.e-yakushiyo.net/Tani_Megumi.htm