カテゴリ:リサイタル( 148 )   

歌を語る「プログラム」   

先日は「チラシ 」の苦心をご紹介したが、リサイタルに欠かせないもう一つの印刷物「プログラム」の制作にも、毎回、渾身の力を注ぐ。演奏の合間にトークを入れるとはいえ、各々の曲に関してご紹介できるのは、山ほどあるエピソードのほんの一部だ。あれもこれもお話していたら、お喋りだけで2時間が終わってしまう。「それをやると、さだまさしですよ!」と、スタッフの方に突っ込まれた。確かに(^^;;

そこで、当日お渡しするプログラムに拙文を書かせていただくことになる。とはいえ、紙面スペースは限られている。薄暗い客席で細かい文字は読みにくい。そもそも、リサイタルは演奏がメインだ。長々と論文調?のものを掲載する場ではない。あれを捨て、これを捨て、まさに断捨離のごとく中身を絞り込んでいく。演奏内容に沿った的確なエピソードを、コンパクトな文章で分かり易く…。この作業、最終盤には、遠い昔に忘れた「完徹」という言葉が復活する事態にしばしば陥る。食べることも飲むことも忘れ、ひたすらパソコンの画面に向かい続け、ふと気づけば、窓の外は朝…。

プログラムのデザインは、Vamosさん。私が伝えた「キーワード」から「何か」を感じ取り、いつも思いがけないデザインを提供してくれる。バルサの大ファン、熱い心のアーティストだ。

こうして出来上がった原稿を、また何度も何度も校正し、何度も何度も確認し、やっと祝!校了 ⇒ 印刷、となる。

今年は音楽通の方々から、プログラムへのご感想を沢山お寄せいただいた。「色々な知らないエピソードが紹介されていて驚いた」「今後の資料として役に立つ内容」「Notas を とても興味深く読んだ」etc。中には、「マエストロ・モンポウと谷さんのツーショット写真を見て、当たり前ですけど、あぁモンポウは実在したのだなぁ、と実感しました」というご感想も(^_-)-☆

歌を文字で語る「プログラム」。大切にお読みいただけると、とても嬉しい。
第26回リサイタル《スペイン浪漫Ⅲ》

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                             ⓒ藤本史昭


今年のプログラム                            
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by Megumi_Tani | 2017-12-16 15:36 | リサイタル | Comments(0)

チラシのチカラ   

コンサートのお知らせに「チラシ」はつきものだ。ネットの情報が力をもつ今でも、やはり直接お客様の手に渡るチラシの存在は大きい。自分自身を顧みても、ネットではサーッと読み飛ばしてしまうような情報でも、紙媒体で手にすれば、表裏何度も引っくり返して眺め、心惹かれるものは丁寧に読むことになる。デザインから演奏会のコンセプトを感じ取ったり、文体から演奏者あるいは執筆者のお人柄を垣間見たり…。今でも、お客様の中には、パソコン、スマートフォンの類はやりません、という方がいらっしゃる。そんな方達には、昔ながらの郵送DMでのチラシ送付が不可欠だ。

というわけで、リサイタルのチラシ制作には力が入る。私がお伝えしたプログラム概要を基に、デザイナーさんが何種類かのデザインを提示。その中から一つに絞り、レイアウトやら色味やら校正やら諸々の細かい作業を何度も繰り返し、やっと完成する。チラシが出来上がると、さぁ!いよいよ始まるぞ!と、意気が揚がるのだ。

ところが悲しいかな、もらう方にしてみれば、チラシはただの1枚の紙。よほど興味が無ければ丁寧に読んだり、眺めたりはしない。チラシは「散らし」。下手をすれば、いや、多くの場合は?表と裏をチラッと眺めてふ~ん…で、お終いだ 145.png 145.png145.png

さて、リサイタルでは、いつもアンケート用紙をお配りし、お好きな曲やご感想を記入していただく。その中に「あなたはこのコンサートをどこで知りましたか?」という質問がある。今回、お答えの中に「地下鉄の中でご本人からチラシをいただきました」と、書かれている方がいた。地下鉄?はて?…。その方が詳細に書いてくださった経緯を読んで、あぁ!と思い出した。

7月、グラナドスの合唱作品の演奏会に出かけた際のこと。終演後、ホールを出て、地下鉄の乗り場を探すが見つからない。おかしいなぁ、すぐ近くだったはずなのに…。とにかく私は方向音痴というか、こういうアンテナが極めて鈍い。地図を持っていても目的地にたどり着けず、今来た道を同じ場所に戻ることも出来ない。自分では真剣に、大真面目に歩いていても、足が勝手にどこかへ向かってしまう。この時もそんな感じでウロウロしていたら、同じようにウロウロしている風情の女性がいた。「地下鉄の乗り場、こちらですよね…」と、どちらからともなく同行、二人でウロウロ。ほどなく乗り場が見つかり、そろって無事乗り込んだ。近くで何かイベントでもあったのか、車内は若者で大混雑。私達は吊革につかまり、押し合いへし合いするなかで、短い立ち話をした。

「私はピアノの友人に誘われて聴きに来ました。あなたもピアノの方ですか?」と女性。「いいえ。歌です」と私。「歌?クラシックですか?オペラとか歌曲とか?」「スペイン歌曲です。ご存知ですか?」「スペイン歌曲?知りません。歌曲ということはフラメンコとは違うんですか?どんな歌があるんですか?」「今日のグラナドスはもちろん、ファリャ、モンポウ、トゥリーナ、ロドリーゴ…沢山の作曲家の沢山の作品があります」「一曲も知らない…」「日本では本当に知られていないジャンルなんですよ」「そうですか…。それって、どこかで聴く機会はあるのでしょうか?あれば行ってみたいです。あなたはコンサートとか、されないんですか?」そこで私は、バッグの中にチラシが入っていることを思い出した。「じゃぁ、これ、チラシです。まだずっと先、11月ですけど、よろしければどうぞ」「エッ!全部スペイン歌曲のリサイタル?そんなのあるんですか?…」「途中でトークが入るので、初めてでも大丈夫ですよ」チラシの表裏をしげしげと眺める女性。と、そこで彼女の降りる駅に到着。「じゃぁ、私はここで。今日はありがとうございました」「こちらこそ、ありがとうございました。ホームページにスペイン歌曲のことを色々ご紹介してあります。お時間ある時にご覧になってみてください」混雑する車内、もみくちゃにされながら女性は降り、これまた多くの人でごった返すホームに消えて行った。

その女性が、リサイタルにいらしていたのだ。「地下鉄でいただいたチラシがどうしても気になって来ました。とても素敵な歌…」と、初めてスペイン歌曲を聴いたご感想をアンケート用紙いっぱいにご記入くださっている。嬉しいなぁ。
そういえば以前、こんなこともあった。「不思議な出会い

Viva!チラシ!チラシは「散らし」なんかじゃないぞ!

                                ⓒ藤本史昭

今年のチラシ
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by Megumi_Tani | 2017-12-03 13:16 | リサイタル | Comments(0)

1119エピローグ ♪ ありがとうございました   

第26回リサイタルスペイン浪漫Ⅲ終了から一週間。おかげ様でご好評をいただいています。当日のアンケートをはじめ、沢山の方々から嬉しいメッセージをいただきました。ありがとうございます!
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今回のプログラム、実はなかなかコアな内容でした。グラナドス「生誕」150年に捧げる、そのオープニングが〈悲しみにくれるマハ〉。これだけでも、かなり珍しい。続くグラナドス三曲はリサイタル初演、どころか、もしかすると日本初演の可能性あり。となると、お客様にもまったく耳馴染みがない…。第2ステージ〈グラナダに寄す〉〈エル・アレグリート〉あたりでホッとひと息。しかし後半のオープニング〈魂の歌〉は難解です。そもそも日本語でもなかなか理解できない十字架のヨハネの詩が、厳かなピアノと交互にア・カペラで歌われるのですから…。第3ステージはタイトル通り〈響きわたる孤独〉がひたひたと胸に迫るモンポウの世界。そして最終ステージは、ロドリーゴのハチャメチャなクリスマスの歌、ハルフテルのファド、そしてモンサルバージェの皮肉を帯びたハバネラ…。「グラナドスとモンポウ、二人の時代のコントラスト」を大きな柱に、様々な要素の様々なコントラストがいたるところに散りばめられているのですが、それにしても、我ながら凝りに凝ったプログラム。さて、どうなりますか。。。

本番が始まってみれば、冒頭のグラナドスのマハからアンコールまで、お客様が実によく集中して聴いてくださいました。頼もしい!浦壁信二さんのピアノにも実に多くの賛辞が贈られました。歌とピアノの「共演」をお楽しみくださっている!これもまた頼もしい!グラナドスの初演曲〈歌〉〈ヒターノの唄〉〈愛の歌〉、そして、とっつきにくいはずのモンポウ作品が大人気だったことには、予想外の喜びでした。名歌という宝を授けてくれた天上のマエストロ二人に、あらためて深い敬意と感謝を捧げます。
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オペラ・キュレーター、井内美香さんが当日の様子をご紹介くださいました。

今回、印象に残ったことが二つあります。
まずひとつめは、回を重ねるごとに、少しずつお客様の幅が広がってきたこと。同じスペイン通でも語学のエキスパートの方々、ファッション、グルメ関係の方々、同じ音楽でも、オペラの専門家、オペラ愛好家の方々、ドイツ歌曲専門の方々、ピアノ専門の方々、はたまた、常日頃からスペイン大好き、超スペイン・ファンの方々に加えて、普段スペインとは接点がないけれどこのリサイタルに興味を持ってくださった方々、講座やセミナーでお目にかかった方々、そして長年ご支援くださり毎回必ず駆けつけてくださる方々…。拙リサイタルをきっかけに、ひとりでも多くの方にスペイン歌曲の魅力を知っていただければ!こんなに嬉しいことはありません。

二つめは、「心で聴きました」というお客様がとても多かったこと。スペイン語で歌う⇒お客様に歌詞の意味が分からない。このハードルはなかなか高いものです。少しでも歌の内容をお伝えしようと、歌詞大意をプログラムに掲載し、演奏の合間には私自らペラペラお喋り解説させていただくのですが、それでも、なかなか……。しかしこちらも回を重ねるごとに、拙大意訳とトークを手掛かりに、深く心で感じ取ってくださるお客様が増えました。外国語の壁はある、しかし、きっと伝えられる!あらためて勇気をいただいた気がします。

「貴女の“スペイン歌曲”への想いが、よく伝わってきました」とのご感想が一番多かったかもしれません。そうなのです。今回は特に諸々思い入れが深かったせいか、ひとつひとつの歌が、まるで可愛がり過ぎて嫁に出せない娘のように感じられ、リサイタルで手放すのがもったいない(笑)?気持ちでした。

掛け替えのないひとときをご一緒くださった皆様に、心よりお礼申し上げます。
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by Megumi_Tani | 2017-11-26 15:58 | リサイタル | Comments(0)

1119♪ 終演御礼《スペイン浪漫Ⅲ》   

第26回谷めぐみリサイタル
スペイン浪漫Ⅲ~E.グラナドス生誕150年、F.モンポウ没後30年に捧ぐ
大勢のお客様をお迎えして終演しました。
ご来聴の皆様、ありがとうございました。
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by Megumi_Tani | 2017-11-19 18:12 | リサイタル | Comments(0)

1119♪ 浪漫・夢幻   

第26回リサイタル《スペイン浪漫Ⅲ~グラナドス生誕150年、モンポウ没後30年に捧ぐ》本番が明後日に迫りました。手塩にかけて育てた大切な歌の数々をお届けいたします。

エンリケ・グラナドスは、没後100年(2016年)、生誕150年(2017年)と、記念の年が続きました。この時に、歌い手でいられたことを本当に幸せに思います。昨年リサイタルでは、代表的作品をお聴きいただきました。今年は、粋な女マハが亡きマホに捧げる名曲〈悲しみにくれるマハⅡ〉〈悲しみにくれるマハⅢ〉に加えて、リサイタル初演、しかも日本でもスペインでもほとんど演奏される機会のない超レアな三曲をご披露いたします。

フェデリコ・モンポウの世界は、また格別です。抒情を越えた、侘び、寂びに通じる心、さらにそこを突き抜けた幽玄、無限の世界。いわゆるスパニッシュ!とはまるで趣を異にする、スペイン歌曲の奥深さを感じていただけることでしょう。

二人のマエストロを取り巻く時代と人々。共感と共鳴、そして鮮やかなコントラスト!
みんな違ってみんないい…そんな言葉が心に浮かびます。

リサイタルの準備期間に、テロ事件、そしてカタルーニャ独立問題が起きました。ショックを受け、案じ、考え込み…。その折々に歌に向かう自分の心を見つめ、また歌の方も私の心に応えてくれる、そんな日々でもありました。困難な時期、歌い手として、愛する歌の数々を心を込めてお届けしたいと思います。

今のところ、19日は「晴れ」の予報が出ています。冷え込んできましたので、どうぞ暖かくしてお出かけくださいませ。Hakuju Hallにて、お待ち申し上げます。

第26回リサイタル
2017年11月19日(日)14:00開演@Hakuju Hall
ご来聴をお待ちしています!

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by Megumi_Tani | 2017-11-17 17:56 | リサイタル | Comments(0)

【チケットぴあ】販売終了間近です♪   

【チケットぴあ】での販売は、11月16日に終了します。
「今年はぴあで買おうかな」と思っていらした方、どうぞお急ぎくださいませ。

第26回リサイタル
スペイン浪漫Ⅲ~グラナドス生誕150年、モンポウ没後30年に捧ぐ
2017年11月19日(日)14:00開演@Hakuju Hall
ご来聴をお待ちしています!

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by Megumi_Tani | 2017-11-13 21:57 | リサイタル | Comments(0)

1119♪ モンポウ~響きわたる孤独   

冬の午後、薄曇りの空、沈黙の時…。モンポウの音楽には、いつも孤独の影がある。それを嘆くでもなく、誰かに吐露するわけでもない。黙って虚空を見つめ、魂の寂寥を天に託す、そんな世界だ。外へ向かう際の繊細さ、不器用さと、内に秘めた強烈な自負。その相克に苦しみ、魂の安らぎを求め、己の内へ、内へと向かったモンポウ。透明な音、真っ直ぐに歌う旋律、一瞬の激情、鈍くぶつかる和音…その歌たちの何という愛おしさ!

今回演奏する曲のひとつ〈魂の歌〉は、16世紀スペイン神秘主義の巨人、十字架のヨハネの詩による作品だ。モンポウは十字架のヨハネの教えに深く心を傾けていた。その十字架のヨハネに、こんな詩がある。まるでモンポウの音が聴こえてくるような。。。

『孤独な鳥の条件』
孤独な鳥の条件は五つ:
第一、孤独な鳥はもっとも高いところへ飛ぶ
第二、孤独な鳥は仲間にわずらわされない。同類にさえわずらわされない
第三、孤独な鳥はくちばしを天空へ向ける
第四、孤独な鳥はきまった色をもたない
第五、孤独な鳥はやさしく歌う

この世を生きにくい人だっただろうと思う。しっかり者のカルメン・ブラーボ夫人の支えが大きかったに違いない。1985年、私がご自宅にお邪魔した際も、カルメンさんが実に明るく、テキパキと迎えてくださった。マエストロが天に還られる二年前のことだ。没後30年記念の年のリサイタル。名歌〈君の上にはただ花ばかり〉をはじめ、あの日マエストロに聴いていただいた作品をお届けできることを光栄に思う。

第26回リサイタル
2017年11月19日(日)14:00開演@Hakuju Hall
ご来聴をお待ちしています!

モンポウ本人の演奏による〈悲しい鳥〉


同じく〈秘密〉


インタビュー






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by Megumi_Tani | 2017-11-12 23:03 | リサイタル | Comments(0)

1119♪ 2017年ならではの歌   

リサイタルの計画は、大抵の場合、一年か一年半前に決定する。2017年は、グラナドス生誕150年、モンポウ没後30年の記念の年。両マエストロに捧げるプログラムを、ということで、昨年の内に選曲が始まっていた。二人が活躍した時代は、ちょうど19世紀から20世紀へ移り変わる時期に当たる。世紀の境を越えて変わったもの、変わらなかったもの、そのコントラストをお楽しみいただこうと考えた。

走り出して数カ月。ある時ふと気が付いた。今回のプログラムには、当初の想定を越えたコントラストが含まれている。グラナドスとモンポウはもちろん、グラナドスと同時代の音楽家達、モンポウと同時代の音楽家達、甘いハバネラと時事風刺の皮肉なハバネラ、恋バナと祈りの歌 、アンダルシア的なものとカタルーニャ的なもの、同じ作曲家によるあの歌とこの歌…これは面白い!幾重にも重なる対照の妙!プログラムが熟成する感がある。秋にはどんな姿になるのかな?楽しみ!

そして夏、8月17日、バルセロナでテロ事件が起きた。さらに、晩秋を迎えた今、カタルーニャが揺れに揺れている。長く歌い続けて来て、こんな年もあるのだなぁ、と、哀しい痛みを覚える。小さな外国人の歌い手である私には祈ることしか出来ない。しかし逆に考えれば、祈る ことはできる、そんな気持ちがふつふつと湧いてくる。バルセロナ…大好きな街なのだ。

本番まであと2週間。2017年ならではの歌を、虚心に捧げたい。

第26回リサイタル
2017年11月19日(日)14:00開演@Hakuju Hall
ご来聴をお待ちしています!






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by Megumi_Tani | 2017-11-06 23:24 | リサイタル | Comments(0)

1119♪ ハバネラはラバナのアバネラ   

「隣りの客はよく柿食う客だ」みたいな、本日のタイトル。アルファベットを入れて書くと「Habanera は La Habana の Habanera」。スペイン語をご存知の方は、ハハァ~ンと頷いておられるだろう。

ハバネラの綴りはHabanera。スペイン語では H は発音しないので、Habanera は アバネラ、となる。日本で Habanera を広めた方が、スペイン語の「ハ」のルールをご存知なかったか?Alhambra が アランブラではなく、アルハンブラ、として広がったように…。

ハバネラは、その名が示す通り、ハバナ生まれの音楽だ。カリブ海の国キューバの首都ハバナ。正式な名称は La Habana と、Habana の前に定冠詞 La が付く。先述の通り、H は発音しないから、ラ・アバナ。実際に読んでみると、ラバナ、となる。つまり「ハバネラはラバナのアバネラ」は、「ハバネラは、ラ・アバナ生まれのアバネラという音楽です」というわけだ。

今年のプログラムでは、個性的なハバネラ2曲を演奏する。まず前半、19世紀の華として、オペラ《カルメン》のアリア〈恋は野の鳥〉の元歌、イラディエール作曲〈エル・アレグリート〉を。後半では、斜陽スペインの悲哀を歌ったモンサルバージェ作曲〈ピアノの中のキューバ〉を。

グラナドスが生きた19世紀末~20世紀初頭のバルセロナは、モデルニスモの時代だ。キューバのサトウキビで大儲けした財閥の資金=キューバ・マネーがその華やかな文化を支えていた。ガウディのパトロンとして名高いグエルもそんな財閥の一人。豊かな時代、人も世も成熟、爛熟の時代、ブルジョワ達のサロンで、あるいは、街角で、恋の歌〈エル・アレグリート 〉は、きっと愛されていただろう。

しかし、スペインは失う。歴史の歯車がゆっくりと動き、やがてその速度が勢いを増し、これでもか、これでもかとグルグル回り、スペインはいろいろなものを失った。そんないろいろなものの中のひとつ、キューバを失った、その時を、自虐と皮肉を込めて語り歌うのが〈ピアノの中のキューバ〉だ。ハバネラ特有の倦怠感、場末感が何とも魅力的。

歴史は揺れる…。ハバネラも揺れる…。味わいがまるで異なるふたつのハバネラをお楽しみいただきたい。

第26回リサイタル
2017年11月19日(日)14:00開演@Hakuju Hall
ご来聴をお待ちしています!

〈ピアノの中のキューバ〉


室内楽版〈エル・アレグリート〉






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by Megumi_Tani | 2017-10-29 16:18 | リサイタル | Comments(0)

1119♪ カタルーニャの歌たち   

先日来の "独立" のニュースで、カタルーニャの名が日本でも広く知られるようになった。わずか二ヶ月前の8月には、州都バルセロナでテロ事件が起きたばかり。世界の目がカタルーニャに向けられている。

“スペイン” は複雑な国だ。その歴史を知れば知るほど、ひとつの国スペインとして存在することが奇蹟に思えてくる。多様性の国、各々の個性をいかんなく発揮するバラエティー豊かな国。しかし、だからこそ、”ひとつだけどバラバラ” ”バラバラだけどひとつ” このギリギリのバランスを、まさにギリギリのところで保っている。ほんの少しでもそのバランスが崩れると、一気に均衡が破れる。まだまだ目が離せない状況が続いているカタルーニャ。平和裏に解決されることを願うばかりだ。

そんなデリケートな国であればこそ、ご縁があった者はそのデリケートさに謙虚でありたいと思う。いつぞやスペイン音楽のコンサートで、MCがカタルーニャの悪口から始まった時は本当に驚いた。私がカタルーニャ贔屓だから、ということではない。たとえどこかの国の通を自負していても、公の場で、その国の一地方を揶揄するような発言をすることは、外国の文化に関わる人間の姿勢としていかがなものか。逆の場合を考えれば分かり易い。もしも日本通を自負する外国人が「日本のなかでも関東地方の人はケチで有名です」などと、コンサートでヘラヘラ喋れば、たとえ喋った本人はジョークのつもりでも、関東地方の人はいい気はしないだろう。

バルセロナにご縁があった私には、カタルーニャ語の歌も大切なレパートリーだ。素朴な民謡からグラナドス、モンポウ、トルドラらの歌曲、そしてあの 〈鳥の歌〉まで、その表情は柔らかく、切なく、美しい。今回リサイタルで演奏するグラナドス〈Canço d'amor / 愛の歌〉、モンポウ〈Damunt de tu només les flors / 君の上にはただ花ばかり〉〈Neu / 雪〉は、まさにカタルーニャらしい抒情あふれる作品だ。〈Canço d'amor / 愛の歌〉 は、グラナドス没後100年記念の昨年から、ずっと温めていた曲。リサイタル初演になる。

こんな年、こんな時だから、いつにも増してカタルーニャの歌たちが愛おしい。地上で何が起きていようと、音魂は天を駆けめぐる。心を込めて、大切にお届けしたい。

第26回リサイタル
2017年11月19日(日)14:00開演@Hakuju Hall
ご来聴をお待ちしています!

〈鳥の歌〉モンセラート修道院聖歌隊



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by Megumi_Tani | 2017-10-15 20:06 | リサイタル | Comments(0)