カテゴリ:スペイン歌曲( 70 )   

101回めの命日   

昨日3月24日は、エンリケ・グラナドス101回目の命日だった。

ニューヨークでオペラ『ゴイエスカス』初演の大成功に立ち会い、数々の賛辞を受け、ホワイトハウスにも招かれ、安堵と喜びに満たされてバルセロナへ帰る、その途中、グラナドス夫妻が乗った船は英仏海峡でドイツ潜航艇の無差別攻撃を受け、沈没した。いったん救助されかかったグラナドスだったが、波間でもがく妻アンパロを見つけ、彼女を助けようと、再び海へ…。二人の姿が戻ることはなかった。

グラナドスは泳げなかった。そもそも海が嫌いだった。ニューヨークへの船旅も渋っていたが、第一次世界大戦勃発のために、いつまでたっても日の目を見ない『ゴイエスカス』の初演を、メトロポリタン歌劇場が引き受けてくれたのだ。行かないわけにはいかない。いや、何が何でも行きたかっただろう。『ゴイエスカス』は、グラナドスが愛したマハとマホの世界そのものの物語だったのだから。しかし、意を決して敢行したその船旅で命を落とすことになった。哀しい戦争の犠牲だ。

後日談が残されている。グラナドスの息子のひとりは、水泳100メートル自由形のスペイン・チャンピオンになった!彼の妻も水泳のチャンピオンであり、彼らの息子達-グラナドスの孫にあたる-も、長距離と短距離の選手になった。突然の海での悲劇に襲われたグラナドス一家。しかし子ども達は「水」に負けなかった。それどころか、水に親しみ、水を制覇してみせたのだ。「おじいちゃんとおばあちゃんは船の事故で亡くなった。でも、もしも泳げれば、助かっていたかもしれない。そう思って、パパは一生懸命水泳のトレーニングに励んだんだ。お前達も頑張るんだよ」と、グラナドスの息子さんがそのまた二人の息子さんに語ったのでは…。などと思いを巡らすと、ふと心が和む。

昨年は没後100年、そして今年は生誕150年。グラナドスの記念の年に現役の歌い手でいられたことを心から幸せに思う。秋11月のリサイタルでは、人気の作品に加えて、日本ではほとんど知られていない隠れた名歌を捧げたい。

グラナドス夫妻、最後の写真
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by Megumi_Tani | 2017-03-25 23:31 | スペイン歌曲 | Comments(0)

天使の応援?   

秋リサイタルに向けて、選曲も佳境。今年のタイトルは《スペイン浪漫Ⅲ~E.エンリケ・グラナドス生誕150年、F.モンポウ没後30年に捧ぐ》。浮かび上がるイメージ、ストーリー、伝えたいこと、声、ピアノの響き…。それらを、どんな形でこの世に具現化するか。わずか2時間のあの時空を目指して、エネルギーのすべてを注ぎ込む。楽しいけれど大変、大変だけれど楽しい作業だ。

どんなに好きでも、人間、たまにはくたびれる(笑)。そんな時、いつも心に浮かぶ光景がある。1986年夏、アルベニス生誕の町カンプロドンで聴いたビクトリア・デ・ロス・アンへレスと師マヌエル・ガルシア・モランテの演奏会、そのリハーサルだ。
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バルセロナから車で2時間ほどのところにあるカタルーニャの鄙びた町カンプロドン。中世の面影をそのまま残す町の修道院で演奏会は開かれた。私は弟子特権?で、二人のリハーサルを最初から最後まで、ずっと聴かせてもらった。客席には私ひとり。美しく、贅沢な時間だった。スペインでも日本でも二人の演奏会を何度も聴いたが、このリハーサルは格別で、あたかも一幅の絵のごとく鮮明に心に焼き付いている。この時に聴いたアルベニスの『Barcarola』は、後に私の大切なレパートリーになった。Youtubeでも見つからない、ほぼ無名の曲だが、歌えば、心は一瞬であのカンプロドンに飛んで行く。歌の原点に立ち返らせてくれる。 『ビクトリア・デ・ロス・アンへレスの想い出

ここ数日ボンヤリとそんなことを考えていたら、なんと!FBで、バルセロナ在住の建築家丹下敏明氏が自ら撮影したカンプロドンの写真をアップしてくださった。嬉しい偶然!
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シエスタの時間にホテルを抜け出し、町を歩き回ったことを思い出す。懐かしい…。こういう時は、ちょっと厚かましいけれど、天使(Àngel ~アンヘル)が空の上から応援?してくれている気がする。ありがとうございます。頑張ろうっと!

カタルーニャ音楽堂での記念リサイタル。1:01:30あたりから『Barcarola』です。

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by Megumi_Tani | 2017-03-20 00:04 | スペイン歌曲 | Comments(0)

「Neu - 雪」   

「Neu」というタイトルのモンポウの歌曲がある。「Neu」とは、カタルーニャ語で「雪」の意。単調に刻まれる和音、ゆっくりと漂うメロディー…。どこまでも簡素なピアノと歌がひとつの宇宙を創りだす。2分にも満たない小曲だ。

先日の日本・カタルーニャ友好親善協会テルトゥーリア『カタルーニャから生まれた名歌曲』で、この「Neu」をご紹介した。といっても、当日は盛り沢山のプログラムに加えて、懇親パーティー会場への移動時間を確保してください、とのことで、かなり押せ押せの進行。講師の私本人が、タイムキーパーよろしく、手元のパソコンに表示される時刻を睨みながら進めていく。予定の曲を諦め、お聴きいただいている曲を泣く泣く途中でカットし、ご披露するエピソードを少々短縮…。頭の中で分数を計算しながらの、なかなかスリリングな?展開だ。

講演も中盤、話題が今年没後30年を迎えたモンポウに及び、カタルーニャを、そしてスペインを代表する名歌「君の上にはただ花ばかり」をお聴きいただく。あえて、日本では知られていないカルメン・ブスタマンテの演奏。この曲はカットするわけにはいかない。皆さんと一緒にCDを聴きながら、時間調整のために次の「Neu」は取り止めにしよう、と、考えていた。モンポウの歌曲の中でもほとんど無名に近い作品だ。まぁ仕方がない、と。ところが、「君の上にはただ花ばかり」の余韻に浸っている間に、CDデッキから「Neu」が流れ始めてしまった。アララ!これは止められない。途中でカットするほどの長さもない曲なのだ。「「Neu」という作品です。演奏は、谷めぐみ。とても短い曲で…」と大慌てで解説。Ai!, quina tristesa fa~あぁ!なんという寂しさだろう…。印象的なこのフレーズが繰り返され、静かに、本当に静かに曲が終わった。会場に、えもいわれぬ溜息があふれた。

懇親パーティーでの一番人気は「Neu」。これには驚いた。最後の歌詞「Ai!, quina tristesa fa」に、皆さん、深く感銘を受けていらっしゃる。研ぎ澄まされた音、あらゆるものをギリギリまで削ぎ落とした美、無の中の無限…。モンポウが求め、追求した世界は、我々日本人の魂と響き合うものがあるのかもしれない。と同時に、佳き出会いがあれば、原語が分かる分からない云々の壁を軽々と飛び越えて、深く共感、共鳴し合えることを、あらためて実感。

拙CD「谷めぐみが歌う魅惑のスペイン」をお持ちの方、第2曲に「Neu」収録されています。どうぞお聴きになってみてください。

モンポウ:哀歌~「内なる印象」より

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by Megumi_Tani | 2017-02-18 23:48 | スペイン歌曲 | Comments(0)

カザルスはこんな人   

2月3日(金)開催、日本・カタルーニャ友好親善協会テルトゥーリアにて、カタルーニャから生まれた名歌曲の数々をご紹介する。

言わずと知れたチェロの巨匠パウ・カザルス。平和を祈り、理想を掲げ、強く真っ直ぐに生きた信念の人。あのあまりにも有名な国連でのコンサートをご記憶の方は多いと思う。明日1月20日はアメリカ大統領就任式。もしもカザルスが生きていたら、今の世界に、何を語るのだろう。。。
RTVE制作ドキュメント「Pau Casals y la paz - 2011 (Imprescindibles)」

カザルスは偉大なチェロ奏者であるとともに、指揮者、作曲家でもあった。ピアノの腕前もなかなかだったらしく、ビクトリア・デ・ロス・アンへレスの伴奏をしたライブ録音が残されている。



歌曲作品の中から「Adios…!」を昨年の第25回リサイタルで演奏した。日本初演!嬉しいことに大好評をいただいた。作品に触れると、強靱な精神の持ち主カザルスが、実は、極めてナイーブな、超のつくロマンティストだったことが分かる。強いから弱くもなれる、弱さを知るから強さの意味も分かるのだ、きっと。合唱曲では、モンセラート修道院の聖歌隊に贈られた作品が美しい。
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日本・カタルーニャ友好親善協会テルトゥーリア 2月3日(金)18時30分開演
会場、お申し込み方法など、詳細はこちら ⇒ 『カタルーニャから生まれた名歌曲』


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by Megumi_Tani | 2017-01-19 23:32 | スペイン歌曲 | Comments(0)

ビクトリア・デ・ロス・アンへレス没後12年   

今日1月15日、ビクトリア・デ・ロス・アンへレスの12回目の命日を迎えた。もう12年?まだ12年?そのどちらでもない。懐かしい思い出は遠い日の記憶のような気がするけれど、彼女の歌はいつも共に在り、力を与えてくれる。生きることは歌うこと。そんなメッセージを、さりげなく、でも力強く、伝えてくれる。 『ビクトリア・デ・ロス・アンへレスの想い出』
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2月3日開催、日本・カタルーニャ友好親善協会テルトゥーリア『カタルーニャから生まれた名歌曲』 でも、彼女の歌をお楽しみいただきたい。 

69歳のコンサート@サン・クガット修道院


貴重!モンポウを讃えるコンサート
アリシア・デ・ラローチャとともに。二人は同じ年生まれの仲良しでした。


最後の演奏会@リセウ劇場

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by Megumi_Tani | 2017-01-15 22:33 | スペイン歌曲 | Comments(0)

トルドラはこんな人   

2月3日(金)開催、日本・カタルーニャ友好親善協会テルトゥーリアにて、カタルーニャから生まれた名歌曲の数々をご紹介する。あえて「カタルーニャ」にフォーカスすれば、最も重要な音楽家のひとりがエドアルド・トルドラだろう。バルセロナのリセウ音楽院で学び、バイオリニストとして活躍した後、バルセロナで教鞭をとり、カザルス・オーケストラのコンサートマスターも務めた。作曲家として、バイオリン、オーケストラ等の作品のほか、沢山の歌曲も残している。ファリャの未完の遺作『アトランティダ』を弟子ハルフテルが完成させ、1961年にバルセロナで初演した際、リセウ劇場で指揮したのもトルドラだった。

トルドラの作品は日本ではほとんど知られていない。原因は、おそらく大半の歌詞がカタルーニャ語だからだろう。カスティリャーノ(スペイン語)の作品も多少あるが、トルドラ独特の柔らかく優美な音楽には、私見ながら、カタルーニャ語の方がよく合う。パステル画のような淡い色彩、伸びやかなメロディー、軽やかなリズム…。トルドラの音楽には、地中海の街バルセロナの薫りがする。

ホセ・カレラスが歌う名曲『5月』


こんな小粋な曲も。歌は、グラナドスの愛弟子だったコンチータ・バディア


こちらは、カスティリャーノ(スペイン語)の歌詞による作品


日本・カタルーニャ友好親善協会テルトゥーリア 2月3日(金)18時30分開演
会場、お申し込み方法など、詳細はこちら ⇒ 『カタルーニャから生まれた名歌曲』

バイオリンのための作品

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by Megumi_Tani | 2017-01-14 23:41 | スペイン歌曲 | Comments(0)

モンポウはこんな人   

2月3日(金)開催、日本・カタルーニャ友好親善協会テルトゥーリアにて、カタルーニャから生まれた名歌曲の数々をご紹介する。カタルーニャ語の歌詞による、という部分も含めて、最も重要で、最も忘れがたい作品は、モンポウ作曲『夢のたたかい』だろうか。どこまでも素直で透明な悲しみ、あたかも空気にとけ込むようなメロディーは、一度耳にすれば忘れられない。音楽は、人、だ。内気で繊細、見えないものをじっと視つめるマエストロ・モンポウの横顔が垣間見える気がする。
『モンポウの歌曲』  『君の上にはただ花ばかり』   『夢のたたかい』

さて、その『夢のたたかい』の珍しい動画を発見しました。プライベート・ビデオとのことで、画質、音質とも悪いですが、歌/ホセ・カレラス、ピアノ/ アリシア・デ・ラローチャ、演奏終了後、舞台袖からなんと!モンポウ本人が登場し、ピアノを演奏しています。小柄なラローチャと並ぶと、モンポウの背の高さがよく分かりますね。それにしても、こんな貴重な録画をアップしてくださる方がよくいらっしゃったものです。 (画面上部の白い文字をクリックして、ご覧になることをお薦めします)



日本・カタルーニャ友好親善協会テルトゥーリア 2月3日(金)18時30分開演
会場、お申し込み方法など、詳細はこちら ⇒ 『カタルーニャから生まれた名歌曲』

モンポウはこんな人

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by Megumi_Tani | 2017-01-11 00:06 | スペイン歌曲 | Comments(0)

カレラスとドミンゴ   

一昨日Facebookに、カレラスとドミンゴのツーショットの写真がアップされた。「ホセ!誕生日おめでとう!」と、ドミンゴからのメッセージが添えられている。そうか、12月5日はカレラスの誕生日だったのか…。そこへFBお友達から「今、来日中では?」との書き込みがあった。そうだ、忘れていた。彼は12月4日に東京でクリスマス・コンサートを開いたばかり。70歳、古希にあたる誕生日を日本で迎えたことになる。遅ればせながら¡Feliz cumpleaños! おめでとうございます。

貴公子?王子様?いくつになっても彼にはそんなイメージがある。あの三大テノールの舞台では、ほかの二人よりひと回り小柄な体で大奮闘、熱唱する姿が人気を集めた。私が彼のナマ声を初めて聴いたのは、80年代、バルセロナのリセウ劇場だった。地元が生んだ大スター★会場は大いに盛り上がっていたが、肝腎の彼の声には伸びがなかった。ほどなく、病による休養を発表。なるほど、と、納得した記憶がある。その後、病を克服、奇跡の復活を果たし、今も活躍を続けている。

貴公子カレラスに対し、ドミンゴは素敵なおじさま、というところだろうか。実際には、もうオジサマならぬおじいちゃまのお歳(75歳)だが、今も現役。ますます元気に世界を飛び回っている。つい先日、フィデル・カストロ前国家評議会議長逝去の折りには、初めてのキューバ公演のため、偶然ハバナに滞在していたようだ。このブログでも何度か書いたが、私は昔々の「カルメン」以来、ドミンゴのファンである。東日本大震災直後の「さくら」に勇気をもらったことは、決して忘れられない。

スペインが生んだ二大スター、カレラスとドミンゴ★★ 貴重な映像が残されている。カレラスが病を乗り越えて復帰することを、サプライズで、ドミンゴがお客様に告げている。場所は、リセウ劇場。
(画面上部の白い文字をクリックして、ぜひ大きな画面でご覧ください)



ドミンゴのお人柄、おずおずとステージに進み出るカレラスの純真な姿。9月のリサイタル「スペイン浪漫Ⅱ」でご紹介した、アルベニス、グラナドス、カザルス、ファリャ、トゥリーナ、マラッツらの友情が蘇る。同郷の友、同郷の仲間。素晴らしい。

こちらは、二人お揃いでのインタビュー


亡きパヴァロッティに捧げる歌

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by Megumi_Tani | 2016-12-07 00:57 | スペイン歌曲 | Comments(0)

ファリャ前、ファリャ後   

スペインの三大作曲家、アルベニス、グラナドス、ファリャ。三人揃って、キャリアの始まりはスーパーピアニストだが、作曲家として為した仕事には違いがある。作品のほとんどがピアノ曲だったアルベニスに対し、グラナドスは、やはりピアノ曲中心ではあるものの、歌曲集『トナディーリャス』『アマトリアス』、遺作オペラ『ゴイエスカス』等、声楽のジャンルにも名作を残した。ファリャになると、ピアノ曲はもちろん、歌曲、オペラ、バレエ音楽、室内楽等々、オーケストラや舞踊を駆使した作品を手掛け、その音楽世界はより多彩に、より高次に広がった。ファリャで一つの頂点を極めたスペイン音楽は、その後、試行錯誤を繰り返しつつ、様々な方向に枝分かれする。

録音、録画に関しても、ちょうど技術の端境期だったことが分かる。幸いなことに、三人とも本人の演奏が残されているが、長兄アルベニスと次兄グラナドスには動画が見当たらない。三男坊ファリャは動く姿をちらっと見ることが出来るが、演奏中の動画はやはり見当たらない。ところが、ファリャとも深い交流があり、『恋は魔術師』ピアノ版を得意としたルービンシュタイン(1887~1982)になると、演奏中の動画が一気に増える。ちょうどファリャ前後の数年が変わり目だったのだ。ファリャがもうほんの少し長生きしていれば、私達は、彼の生真面目な?指揮ぶりにお目にかかることが出来たのかもしれない。

●本人の演奏です。お宝!
アルベニス


グラナドス


ファリャ


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ルービンシュタインが弾く、ファリャ『恋は魔術師』


『恋は魔術師』といえば、やはりこれ!なぜかポルトガル語の字幕入り(^^;;

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by Megumi_Tani | 2016-10-30 23:21 | スペイン歌曲 | Comments(0)

苦労人?ファリャ   

「グラナドスのほうが熱狂的なファンがいますよね!」先日のブログを読まれた方からメッセージが届いた。ウ~ン、たしかに。。。

グラナドスは、数々のロマンティックな作品群とともに、やはりそのドラマティックな人生が深く印象に残る。名ピアニスト、名作曲家、国際的名声、栄光の頂点、第一次世界大戦、予期せぬ悲劇の最期…。人生そのものがまるで一編の映画のようだ。残された写真を見ると、お洒落でダンディ、なかなかのイケメンである。

一方、生真面目に、ひたすらに、音楽の高みを追求し続けたファリャの人生は、いささか映画には不向きかもしれない。グラナドス同様に、ある意味では長生きした分、グラナドス以上に国際的名声を得たが、ファリャの生きる姿勢は終生変わらなかった。謹厳実直、寡黙、律儀、いつも黒づくめの服。地味、派手、で言えば、地味?いや、しかし、その一見地味なファリャの音楽におけるエネルギーの爆発ときたら!尋常ではない。熱さ、濃密さ、鋭敏さ、華やかさ、骨太さ、そして緻密さ…。先輩アルベニスもグラナドスも達しえなかった境地を、ファリャは見据えていた。第一次世界大戦、スペイン内戦、第二次世界大戦に翻弄され、遠いアルゼンチンで最期を迎えている。

己に厳しく、先輩やお世話になった人への感謝を決して忘れなかったファリャ。「グラナドスのほうがファンが多いのですが…」もしも、こんな問いを投げかけたら、きっと答えるに違いない。「当然です。敬愛してやまないマエストロ・グラナドス。彼ほど素晴らしい音楽家はいません。私など足元にも及ばないのです」と。こういう方は気苦労が多い。なかなか自らがスター★になれないタイプだ。まだダメだ、まだ足りない、と、自分を責め続けてしまう。生きるのが辛かっただろうな。。。

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by Megumi_Tani | 2016-10-28 00:23 | スペイン歌曲 | Comments(0)