<   2010年 05月 ( 4 )   > この月の画像一覧   

コーヒー繚乱   

私はコーヒーが好きだ。濃い目に淹れて、ミルクもお砂糖も無しで飲む。以前は、コンサートの前、本番中にもガブガブと飲んでいた。コーヒーのカフェインで歌っていた?のかもしれない。

その私も、缶コーヒーなるものは苦手だった。何故あんなものを買う人がいるのだろう…??と、いぶかしく思うほどだった。チルドカップ入りのものはまだ許せる。しかし缶入りの、あの口に残るエグ味が嫌だった。飲んだ後で、どうしても“うがい”をしたくなる。自動販売機で飲み物を買う際にも、決して缶コーヒーを選ぶことはなかった。

ところがしばらく前、仕事と野暮用が重なり、猛烈に忙しい日があった。疲れて駅のホームで電車を待っている時、無性にコーヒーが飲みたくなった。「コ、コ、コーヒー…」まるで禁断症状である。仕方なく、自動販売機で「新発売」と称する缶コーヒーを買った。飲んでみると、これが…意外にまともな味である。あの大嫌いなエグ味がほとんど感じられない。長い年月の間に缶コーヒーも進化していたのだ!大量のコマーシャルもあながち嘘ではなかったのだ(メーカーさん、ゴメンなさい)。

以後、いくつかの種類を試してみた。その気になって周囲を見回すと、実におびただしい数の缶コーヒー、チルドカップ入りコーヒー、ペットボトル入りコーヒーetc.が売られている。とびきり美味しいものはないが、まぁ、ひどいハズレもない(少々ハズレ、薄い、甘すぎ、は多々あり)。朝専用、モーニングなどと銘打ってあると、何となく夜には買ってはいけないような気がするから可笑しなものだ。

スペイン語では、café(カフェ)!この響きだけで、幸せな気分になる。カフェ・ソロ(濃い目のブラック)、カフェ・コルタード(カフェ・ソロに少量のミルクが入ったもの)、カフェ・コン・レチェ(ミルクコーヒー)…。街中いたるところにあるBarで気軽にひっかける。安い。そして美味しい。私のコーヒー好きは(ついでにワイン好きも!?)、スペインですっかりエスカレートした次第。

歌う量が増えると、コーヒーの量も増える。
煙草を吸う人は、ここで一服くゆらせるのだろうな…という時に、コーヒーが欲しくなる。
[PR]

by Megumi_Tani | 2010-05-29 09:24 | エトセトラ | Comments(0)

「君は君のプレーをすればいい」   

今年はサッカーワールドカップの年だ。何となくいつもよりテレビでスペイン語を聞く機会が増えるような気がして嬉しい。バルセロナ時代、カンプノウの近くに住んでいた。といっても、当時は、ほとんどサッカーに興味がなかった私。今思えば、もったいないことをした。

夜ごと繰り返されるバイクの騒音に疲れ果て、転居を決行したは2002年のちょうど今頃。日韓大会開催中で、テレビからは毎日ポルノグラフィティの「Mugen」が聞こえていた。ラテン系&アップテンポの曲調が妙に疲れを癒してくれた。今でも彼らの曲を聴くと、あのとんでもない引越し騒動を思い出す。

昨夜、ワールドカップ関連で、メッシを取り上げた番組を見た。彼が結果を出せずに苦しんでいた時、マラドーナが「君は君のプレーをすればいい」と言ったそうな。

このところ、ずっとそのことを考えていた。「君は君のプレーをすればいい」つまり「君は君の歌を歌えばいい」演奏とは、そういうもののような気がする。いや、そうでなければいけない気がする。「私は、私の演奏をします」と演奏者自身が明確に感じられる何かがあってこそ初めて、人前での演奏たりえるのではないか?もちろん、唯我独尊は禁物だ。ただの自己満足はもっと良くない。演奏として最悪かつ無意味なのは、有名なあの方この方の真似だろう。いくつもの罠を回避し、熱く、クールに、客観的に、どこまで自らの演奏を追求していけるか…。「これが私の歌です」と言える歌。スペイン歌曲に限らず、どんな歌を歌う時にも、このゴールを目指す。このゴールには終わりがない。ここだ!と思えば、その先にまたゴールがあることが分かる。

ゴールに立ちはだかるのは、強力なキーパーだ。2002年大会では、ドイツの名キーパー、カーンが大活躍していた。そして今年のジャパン・ブルー、サプライズ選出された川口選手に心を込めてエールを送りたい。

演奏家のゴールにキーパーはいない?いや、いる。最も手ごわいキーパーは、自分自身だ。ああだ、こうだと理由をつけて、進路をふさぎ、ゴールを阻止しようとする。
[PR]

by Megumi_Tani | 2010-05-24 10:10 | 思い&想い | Comments(2)

『鳥の歌』   

「この曲は、日本で一番有名なスペイン音楽かもしれない」と、前回の日記に書いた。しかしこれは、外国人から見ての話である。そんな風に思うスペイン人は誰もいない。スペインは、ひとつの国であってひとつの国ではない。『鳥の歌』はカタルーニャの歌である。厳密に言えば、『鳥の歌』は、日本で一番有名なカタルーニャ音楽である。

1971年10月24日、ニューヨークの国連本部での記念コンサート。95歳直前のカザルスは「私の故郷カタルーニャでは、鳥たちはピース!ピース!と鳴きながら飛ぶのです」「ピース!ピース!」とくり返し、『鳥の歌』を奏でた。超満員の聴衆は皆、涙したという。この演奏によって『鳥の歌』は、気高くも厳かな魂をこめた曲として、広く世界中に知られるようになった。

一留学生の私が出会った『鳥の歌』は、少し様子が違っていた。バルセロナでは、誰と話しても、カタルーニャの数ある民謡の中のひとつ、という感じだった。確かに、ほかの曲とは違う。しかし、日本で抱いていた崇高な、ある種神格化されたイメージではなく、もっと身近で親しい曲だった。レッスンで、つい朗々と歌おうとすると、「それはカザルスの真似か?チェロで弾けばそうなるが、メグミはソプラノだ。ソプラノらしく、もっと自然に歌え」と叱られた。

どういうものか、『鳥の歌』を歌う時には、心が鏡になる。泣いたり、笑ったり…過ぎた記憶が走馬灯のように駆けめぐる。カタルーニャの歌、スペインの歌…そんな枠を越えて、あらゆる人の心を静かに澄ませる歌…。これが、ひとり私だけの思いではないことを、昨秋いただいた手紙が教えてくれた。

夏を越え、秋を迎え、10月2日には、どんな鳥が飛び立つのだろう。
[PR]

by Megumi_Tani | 2010-05-16 07:39 | スペイン歌曲 | Comments(0)

プログラム決定♪   

第20回リサイタル(10月2日(土)/白寿ホール)のプログラムが決まった。悪戦苦闘とはこのことよ…という日々。ブログの更新もすっかりご無沙汰してしまった。

テーマは「鳥の歌」
あのチェロの巨匠パブロ・カザルスが平和への強いメッセージを込めて奏でたこの曲は、もしかすると日本で一番有名な「スペイン音楽」かもしれない。

しかし、私が今回「鳥の歌」をテーマに選んだのは、そのような荘厳な理由からではない。もちろん、有名だから、でもない。昨秋、ある方からいただいた一通の手紙がきっかけだった。流麗な筆字でしたためられたその手紙を読んだ時、青く白い鳥が心の中に舞い降りた気がした。そして、その少し寂しげな、それでいて、どこか泰然とした鳥の姿を、そのまま歌いたいと思った。

これまでのプログラミングは、歌が歌を呼び、音が音を呼ぶ作業だった。ところが今回はテーマが先行した。柔らかな鳥の後ろ姿がどんな歌を呼び寄せるのか?この鳥はどこへ飛び立とうとしているのか?見えない何かと寄り添い、語らい、湧き出した歌を抱きしめ、突き放し…。練りに練り、凝りに凝って、最後はとてもシンプルなプログラムが組み上がった。

余計なものはいらない。ただ真っ直ぐな歌を歌いたい。
[PR]

by Megumi_Tani | 2010-05-08 09:54 | リサイタル | Comments(4)