前生はサムライ   

可愛いスペイン人の女の子と会った。女の子、といっても立派な臨床心理学者。才色兼備、小柄でチャーミングな女性だ。

スペインで日本語を勉強中とのこと。生魚を含めて日本食は何でもOK。夕食の麺料理を上手に箸を使って食べていた。「駅ごとに大きな街があるみたい」「こんなに複雑で難しい地下鉄を、みんな理解しているの?」…etc。今回が初来日、見るもの聞くものが珍しい様子だ。

その彼女が真顔で言った「私の前生はサムライだと思う」と。理由は分からないが、なぜか、そう思うのだそうだ。ジーンズ姿の可愛い彼女が「戦国のお姫様」ではなく「サムライ」と言うのが、また愉快で興味深い。自分はスペイン人だが、どこか何かちょっぴり欠けている部分がある。それが日本のような気がする、と。当然のことだが、街を歩けば日本語ばかりが耳に飛び込んで来る。意味がすべて分かるわけではないのに違和感がなく、それどころか懐かしく居心地が良いそうだ。

「メグミさんは、どうしてスペインが好きなの?」彼女の問いに「ちょうど今、貴女が言ったのと同じ気持ちよ」と私は答えた。前生が騎士か!妃か!あるいは扇子を振り回す悪賢い女中か(笑)!などとは考えたこともないが、要するに私も、よく理由が分からないままスペインが好きなのだ。これは、熱狂的、というようなものではない。もっと静かで深く、揺るがない何かだ。「なるほど!私にとっての日本とメグミさんにとってのスペインは同じなのね」彼女は大きくうなずいた。

「年越しそばが楽しみ!」と言っていた彼女。元旦にはお屠蘇を飲み、初詣に出かけるのだろうか。
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# by Megumi_Tani | 2009-12-20 09:33 | ビバ!エスパーニャ! | Comments(0)

Vaya con Dios 再び   

愛しい生徒さんとの別れがあった。生徒さん、といっても、私より年長の女性。「歌が歌いたくて」と、初めてレッスンに来られたのは、もう十年ほども前のことだろうか。お仕事が忙しい中、また遠方に引っ越されても、熱心にレッスンに通われた。その後、大病に見舞われ、お稽古を中断。「必ず、また来ます」の言葉通り、奇跡の回復を遂げ、レッスンに復帰。一時は「病気だなんて、何かの間違いね」と冗談を交わすほど元気になられたが、まさかの再発。そして闘病の末、今年、天に旅立たれた。

お洒落で、いつも颯爽としていた彼女。いつかドシャ降りの日、ジーンズに雨靴のスタイルでレッスンに現われ、「先生、ごめんなさい。こんな格好じゃ、とてもエレガントな歌を歌う気分になれないわ」と、嘆いた。

発声練習の折、私が「口角を引いてポジションを上げる説明」に四苦八苦していると、突然、彼女が叫んだ「先生、分かった!目をパッチリ開ければいいのよ。そうすると、ほら、笑顔になって声がよく響く!」そして鏡に向かって目をパチクリ、ニッコリして「アラ!どうしましょう。私、ますます美人になっちゃうわ」と、笑わせた。レッスンで、この「目をパッチリ」の説明をする時は、いつも彼女の面影が心をよぎる。ウィットに富んだチャーミングな女性だった。

レッスンの後、お気に入りの紅茶店でよくオシャベリをした。頭脳明晰、しかも微妙な心のひだを感じ合える素敵な女性だった。こうして書いていても、凛とした笑顔が目に浮かぶ。

さようなら、は似合わない。Vaya con Dios~ごきげんよう。貴女に神様のご加護がありますように。

そして、また逢いましょう。いつか、きっと。
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# by Megumi_Tani | 2009-12-12 08:55 | エトセトラ | Comments(0)

2010102計画   

「竹やぶ焼けた」「ダンスがすんだ」「まさかさかさま」皆様ご存知、回文である。「磨かぬ鏡」「残念 捻挫」「世の中バカなのよ」かと思えば、こんなものもある「和歌山や遥か光るは山や川」「いつまで待つか、勝つまで松井」

コンサートのマネージをお願いしているカノン工房さん。Wikipediaには「カノンとは回文的音楽」とある。音符を前から読んだものと後ろから読んだものを同時に演奏するもの、だそうな。

第20回リサイタルの開催が決まった。
http://www.e-yakushiyo.net/Tani_Megumi_Recital_2010.htm

「2010年10月2日」前から読んでも後ろから読んでも同じ数字が並ぶ、回文的?日付である。「2010102計画」とでもすれば、何か重大ミッションのようだ(笑)。第20回2010年10月2日午後2時開演、と並べても、0と1と2しか出てこない。なんだか楽しくなってきた。

ガンバラズに頑張って、当日は「小唄うたう子」になろう!
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# by Megumi_Tani | 2009-12-04 08:57 | リサイタル | Comments(2)

お化けのレクイエム   

日曜日の朝、ラジオから初めて聴く合唱が流れてきた。知らない現代の作曲家の作品、レクイエムである。重苦しい和音、切り裂くような声、ちょうど日本語で「お化け~」と言う時と同じメロディーが延々とつづく。「オバケ~♪オバケ~♪オバケ~♪」…。「ゆったりとした日曜の朝にお聴きいただくにはふさわしくない曲かもしれません」解説者自らがそう言っている。確かにふさわしくない。「しかし」と、彼は続けた「作曲者は、この曲に、二十世紀という時代への深い怒りをこめているのです。我々もその怒りに耳を傾けようではありませんか」ハァ~。くたびれて、私はラジオのスイッチを切った。

様々なメッセージを込めるのもいい。「芸術は爆発だ!」という名言もある。しかし、日々生きることで大変なのに、音楽を聴いてまでくたびれたくはない。怒声や恨み節のような音を、これでもか!と浴びせられるのはいかがなものか。やはり音楽は「快なるもの」がいい。人は明るい曲に元気をもらい、悲しみや嘆きの曲に共感して癒される。音と心がひとつになる、それは快なる瞬間だ。

恐いもの、気味悪いものとは、誰だってひとつになんかなりたくない。怪談の季節でもあるまいし。「お化け」は、ごめんこうむりたい。
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# by Megumi_Tani | 2009-12-02 09:06 | エトセトラ | Comments(0)

似た者同士   

近所の酒屋さんに寄った。ワインの品揃え豊富なお店である。「ボジョレー・ヌーボーですか?」とお上さん。「いえ。探しているスペインのワインがあって…」と私。すると、お上さん、ニッコリ!「嬉しいわねぇ、そういうお客さん。ウチは木曜定休だから、発売日(第三木曜)も関係ないの。ボジョレーだけがワインじゃないし」なるほど…。

数日後、フードコーディネーターの女性とご一緒した。お仕事柄、美酒、美食に関して、かなりの経験を積んでいらっしゃるらしい。「ボジョレー・ヌーボーは“お祭り”として飲むには楽しいですよ。でもまぁ、そんなところで」そうか…。

そのまた数日後にお目にかかったワイン通のセニョール。「僕、ボジョレー・ヌーボーは飲みません。ああいう若いワインを飲むと、お腹を壊しちゃうんですよ」それはそれは…。

まったく関係のないお三方。でも、流行にちょっと乗らない、似た者同士である。そのお三方とお喋りしてフムフムと納得する私、やっぱり似た者同士である。
…そんなことで納得するな!、と、叱られそうだけど。
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# by Megumi_Tani | 2009-11-29 07:59 | エトセトラ | Comments(6)