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夏がくれば思いだす…♪

夏がくれば思いだす…のは、私の場合、はるかな尾瀬ではない。コンチキチンの祇園祭だ。

さかのぼることン十年。18歳の私は、生まれて初めて、本州の、しかも京都の夏に身を置いていた。暑い。とにかく暑かった。住まいは、八坂神社にほど近い町屋のひと部屋。大家さんのお宅では、本格的な暑さが来る前に、敷物から襖まですべて夏仕様に整えられ、居間にはクーラーもあり、涼しげな和の風情を醸し出していた。さすが京都!しかし我ら、下宿人の部屋にはクーラーはない。部屋が仕切られているので、風通しも悪い。暑い。とにかく暑い。蒸し暑くて夜も眠れない。見るに見かねて、大家さんの若奥さんが、古い大きな扇風機を持って来てくれた。これはありがたい!しかし、熱い空気をいくらかき混ぜても、風がぬるくなるばかりで、ちっとも涼しくならない…。

そこで気がついた。喫茶店に入れば涼しいではないか!少なくとも昼間はこれで解決できる。というわけで、時間を見つけては喫茶店に入り、出来るだけ長時間ねばる努力を始めた(迷惑な客だ)。息もできないほど蒸し暑い町なかから店に入るとホッとする。あぁ極楽、極楽。だが、それも束の間、炎天下→強冷房→炎天下→強冷房…連日これを繰り返すうちに、「温度」が分からなくなった。西日の照り返す四条河原町で突然寒くてブルブル震えだすかと思えば、キンキンに冷房が効いているはずの喫茶店で暑くて汗が噴き出す。冷房病、自律神経失調症だ。暑さのみならず、クーラーにも無防備だった私。当時の道産子は、クーラーなどというものとは無縁だった。そのうちに、口が思うように開かなくなった。顎関節症?噛めない、食べられない、で、栄養補給は、ぬるいお粥を流し込むか、牛乳やミックスジュースをストローで吸い込むしかない。かくして私は、ヘトヘトに疲れ、やつれ果てて?北海道に帰省した。今でもテレビでコンチキチンが聞こえると、あの悪戦苦闘の夏が蘇る。

それにしても、昨今の夏は暑い。今日の東京も35℃越えだ。2020年東京オリンピックは、まさに今の時期に開催される。大丈夫なのだろうか?例えばマラソン。この炎天下を、42.195キロ、2時間以上走り続けるなんて想像も出来ない。ものすごくトレーニングを積んでいる選手であっても、不測の事態が発生しうるのではないか?観客はどうだろう?熱中症大量発生!なんてことにならないのだろうか?そうならないために冷房をガンガン使うのだろうか?ということは、そのために、電気をどんどん使うのだろうか?それでいいのだろうか??と、ずぶの素人ながら、いたく心配になる。

この暑い夏が過ぎたところで、『スペイン浪漫』が待っています。少しずつプログラム・ノートを綴ってまいります。お楽しみに!
ご来聴をお待ちしています。 詳しい情報は、下をクリック060.gif
第23回リサイタル《スペイン浪漫》
2014年10月4日(土)午後2時@Hakuju Hall
# by Megumi_Tani | 2014-07-27 12:21 | エトセトラ

ジャズ・フラメンコ

第11回音楽講座のテーマは『ジャズ・フラメンコ』。ジャズとフラメンコの関係、スペインのジャズ界、ポップフラメンコ等について塾頭・碇順治先生がご講義くださいました。

アフリカ音楽とヨーロッパの12音階が融合して生まれた音楽のひとつ、ジャズ。そのスタイルが限りなく進化・発展するなかで、ジャズ奏者たちは、主旋律に縛られない、より自由な奏法を模索し始めます。ちょうどそんな頃、スペインを旅したマイルス・デイヴィスはフラメンコのミの旋法=モード奏法に出会い、強い閃きを受けました。斬新なスパニッシュモードとジャズとの融合…。これだ!かくして1959年、モード・ジャズの傑作『Kind of Blue』が発表されます。
マイルス・ディヴィス『Flamenco Skeches』~『Kind of Blue』より
マイルス・ディヴィス『Skeches of Spain』~『Kind of Blue』より ビル・エヴァンス編曲

マイルス・バンドのメンバーだったジョン・コルトレーンは、マイルスのモード奏法に大いなる影響を受け、独立後、『Olé』を発表しました。

アメリカ・ジャズ界からのアプローチを受け、スペインでもジャズ・フラメンコが登場します。第一人者はペドロ・イトゥラルデ。優秀かつ大変な努力家だった彼は、テナーサックス演奏のみならず作曲、教育にも力を発揮。マドリード音楽院の教授も務めました。
『ブレリアス』~『Jazz Flamenco』より

上記ペドロ・イトゥラルデ『Jazz Flamenco』にギターで参加していたのが、若き日のパコ・デ・ルシアです。当時、彼はまだ「フラメンコ・ギタリスト」でした。来日時のインタビューでも、ジャズ・フラメンコにはさほど興味を示していなかったそうです。しかし、その数年後に『Entre dos aguas』を発表。世界に衝撃を与えました。
 
オマケですが、私、谷めぐみのパコ・ファン歴は1980年に始まりました(笑)
『スーパーギタートリオ『魂の絵を描く』『Friday night in San Francisco』

パコの影響を強く受けたスペインのミュージシャンのひとり、ホルヘ・パルド
Vientos Flamencos
こちらは、カディス生まれのチャノ・ドミンゲス。ピアノで弾くフラメンコ・ジャズ!
スペインのジャズ・ピアニストといえば、忘れてはならないのがテテ・モントリューです。

締めは、アメリカ出身の世界的ミュージシャン、チック・コリアです。彼はマイルス・バンドのピアニストとして名を馳せ、独立後に発表した『Return to forever』を始め、数々の作品を発表、ヒットを飛ばしました。なかでも『My Spanish Heart 』に収められた『La fiesta』は圧巻です。

こちらは、彼の大ヒット曲『Spain』
カタルーニャ音楽堂でのダンス入りライブ映像


それにしても、です。スペイン音楽が世界のミュージシャンに与えた影響のなんと大きいことか!第5回の講座でご紹介した19世紀クラシック音楽界と20世紀のジャズ界。時とジャンルは違えども、その時代の最も旬な音楽の世界で、よく似た「スペイン現象」が起きていたのでした。あぁ、スペインに出会って幸せだった!あらためてそう感じた講座のひとときでした。

第5回教養講座『Las Músicas de España』(スペインの音楽)
これまでの講座の様子は、こちら。
『第1回』 『第2回』 『第3回』 『第4回』 『第5回』 『第6回』 『第7回』  『第8回』 『第9回』

第10回は、諸般の都合でレポートが抜けていますm(__)m
ジャズ・フラメンコ_e0172134_23555815.jpg

# by Megumi_Tani | 2014-07-17 13:09 | 講座/セミナー

『アンのゆりかご』

NHK朝ドラ『花子とアン』が人気だ。カナダがスペインに変わってしまったとはいえ、子ども時代の私に、異国への憧れを鮮明に焼き付けた、村岡花子訳 『赤毛のアン』

思えば、アンにはあれほど夢中になったのに、翻訳者、村岡花子のことは何も知らない。そこで、朝ドラの原作『アンのゆりかご』を読むことにした。読み終えると、今度は、腹心の友であったという柳原白蓮についても知りたくなった。ここへ来て、またアン絡みにはまっているなぁ…私。
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村岡花子の一生は熱い。赤毛のアンが醸し出す、ある種牧歌的なイメージとはかけ離れている。英語で生涯を貫くこと、愛する人を想うこと。信じて決めたら、一途に、真っ直ぐに突き進む。白蓮事件に名を残す柳原白蓮は、その真っ直ぐさに高貴な血と華やかさが加わり、より人生がドラマチックになる。そう、何事も真っ直ぐに突き進むには、途方もない情熱が要るのだ。そして、その情熱が、時に世間や常識の枠からはみ出してしまうことも二人は伝えてくれる。

どちらの本にも、たくさんの恋文が登場する。ほんの少しの日常の出来事、そして、こちらが本題、相手へのほとばしる想いを、毎日、毎日、書き綴る。世を忍ぶ仲であれば宛先にも様々な細工を凝らし、手紙が無事届いたかどうかと気を揉み、返事が来なければ恋しい人が病気ではないか、はたまた、心変わりしたのではないか、と、案じ…。ものすごいエネルギーだ。想いがあるから書くのだけれど、書くことで益々想いが熟していく。一枚の紙に向かい、ただひたすらに相手を想い、一文字ずつ埋めてゆく。なにも混じるもののない、純粋な時間。

そういえば昔、由紀さおりが歌う『恋文』という曲があった。途中は忘れたが、最後のフレーズで「お慕い申し候」と歌う。私は、この「お慕い申し候」が好きだった。子ども心にも、えもいわれぬたおやかさが感じられ、日本語って美しいなぁ…と思った。

折しも、川端康成の恋文が発見され、話題になっている。『川端康成の若き日の恋文発見』

恋文は、手紙の中でも極秘中の極秘のものだ。相手以外の誰かが読むことなど想定していない。こうして後世の私達が読ませていただくことは、なんとも申し訳ない気がするけれど…。

浪漫の熱い心、恋文。
それでは、皆様、ごきげんよう。

第23回リサイタル《スペイン浪漫》
2014年10月4日(土)午後2時@Hakuju Hall
ご来聴をお待ちしています。 詳しい情報はクリック↑↑060.gif
# by Megumi_Tani | 2014-07-11 00:47 | 本の窓

夏のクリスマス

バルセロナの友人からドーンと大きな郵便物が届いた。何…?クリスマスでもないのに…。

封を開けると、スペインの新聞と雑誌が出て来た。すべて表紙を飾るのはロイヤル・ファミリーだ。
6月20日、新国王即位式翌日の分厚い『EL PAÍS』、「新しい時代」とタイトルを掲げた『LA VANGUARDIA』、新国王一家を紹介する『pronto』には、前国王ホアン・カルロス1世の歩みをまとめた「別冊」が付いている。現地ナマ紙面。これは嬉しい。今の時代、インターネットで様々な情報に触れることができるが、根がアナログ人間の私は、やはり大事なものは「紙」でじっくり読みたいと思う。まして、こんな歴史的な日の新聞は「お宝」だ。
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それにしても不思議だ。いつも突然、彼女から何かが届く。それが実に的を得ているのだ。普段は、ほとんど音信不通で、お互いの詳細など知る由もないのに。そして、彼女の「突然」は、いつも私に大いなるパワーを届けてくれる。
『スペインの扇子』 『絆2011』 『人生の芸術家』  

「今、外では、夏のクリスマス~San Juanの爆竹がけたたましく鳴っています」とメッセージが添えられている。ありがとう!!一緒に入っていたモンセラート修道院のエプロンは、あまりに可愛くて、台所で汚れるのはもったいないけれど、、、さっそく使わせていただきます。
夏のクリスマス_e0172134_057114.jpg

# by Megumi_Tani | 2014-07-02 01:10 | ビバ!エスパーニャ!

スペインの華

どういうものか、私は、スペイン語を「万華鏡」のように感じる。その緻密さ、美しさ、無限の広がり…。発音するだけで、口が、唇が、喜んでいる気がする。錯覚?いえ、確かに…。「スペイン語が美しい?どこが?」「万華鏡?ふ~ん」残念ながら、これまでに共感してくれた人はいなし。私の脳内では極めて明確なイメージなのだけれど…。

同じ「華」をスペインの歌にも感じる。スペインの歌は、その一曲、一曲が、誇り高く咲く華のようだ。ここは、やはり「花」ではなく「華」と書きたい。華の字が、美しさの奥にある棘も毒も涙も感じさせてくれる。色鮮やかに、個性豊かに、凛と在るスペインの歌の華たち。真紅のバラもあれば、真っ白なユリも、愛らしいカーネーションもある。その一輪、一輪を、最も魅力的に咲かせてお客様にお届けする、それが歌い手たる私の務め、喜びだ。

それにしても、漢字の力はすごい。もしも『スペイン浪漫』が「スペイン・ロマン」なら、アララ、どこぞの安い映画みたい…。

今回のリサイタルでは、ステージごとに、まったく色彩の違うスペインの華をお楽しみいただきます。パンフレットをご覧ください~「地中海の薫り」「グラナダ~光と影」「郷愁の華」「粋に、優雅に」

スペインの華_e0172134_2241277.jpg


どれも、ホンとに素敵な曲ばかり!と、本人の私が言うのも変ですが、華が素敵であればあるほど、咲かせる私のモチベーションも上がるというもの。まったくもって、華あっての歌い手なのです。
10月4日、谷めぐみの今年の咲かせ具合を、聴きに、眺めに、ぜひ皆様お出かけくださいませ。

第23回リサイタル《スペイン浪漫》
2014年10月4日(土)午後2時@Hakuju Hall
ご来聴をお待ちしています。 詳しい情報はクリック↑↑060.gif

それでは今日は、軽くスペインひと巡りとまいりましょう!




# by Megumi_Tani | 2014-06-28 22:10 | リサイタル

スペイン歌曲のスペシャリスト♪谷めぐみのブログです


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