グラナドスの『Tonadillas~昔風のスペイン歌曲集』は大好きな作品だ。昔風の、というけれど、決して昔風ではない。古今東西、いつの時代にも通じる男と女のショートストーリー。過ぎた恋を懐かしみ、臆病な男を笑い、秘めた恋に揺れ動き、亡き恋人への思いに慟哭し、好まぬ男をさらりとかわす…。グラナドスが「ゴヤの時代」への限りない憧れをこめた歌の数々は、粋でお洒落、甘く、切なく、小気味よく、どこかちょっぴり可笑しい。歌詞に登場するマホは下町の伊達男、マハは下町の粋な女、とでも訳そうか。マホ君とマハさん、というお名前ではありません、念のため。一曲一曲はごく短い。その中にグラナドスの魅力がギュッと凝縮している。スペインの粋を極めた傑作だ。
留学中、まだお元気だったグラナドスの末娘ナタリアさんのお宅を訪ねた。「パパの曲を日本から来た小さな娘さんがこんなに素敵に歌うなんて!」と驚き、かたく抱きしめてくれたことを思い出す。
グラナドスの末娘ナタリアさんに戴いた papá の写真。
裏面に「Megumiへ~Natalia」と、サインがあります。
『グラナドス歌曲全集』 近年、こういう美しい楽譜にはめったにお目にかかれません。