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声は鏡、声は力

在宅時によくラジオをかけている。ある時ふと気が付いた。ここ1,2年だろうか、女性アナウンサーやアシスタント嬢がよく笑うのだ。その笑い方が凄い、というより酷い。ケッケッケッケ!キャキャキャキャ!ヒッヒッヒッヒッ!ア~ハッハッハ!まさに抱腹絶倒、お腹がよじれ、涙が出てどうしようもない時の笑い方なのだが、その「声」が笑っていない。つまり、可笑しくもないのに、あたかも大笑いしているような声だけ立てている。丸わかりだ。極めて不自然、極めて聞き心地が悪い。番組を明るく、という制作方針?
すると先日、とある番組。前週は夏休みで出演しなかった女子アナ嬢が戻ってきた。雑談の途中でアナウンサー氏が問いかけた「〇〇さんは、ご自宅ではあまり笑わないそうですね」すると女子アナ嬢がケロリと答えた。「そうですねぇ。家ではそんなに笑いません。今日はまたこちらに元気に笑いにやって来ました!」と。あ、やっぱり。笑うこと、正確には、笑い声を立てることは、彼女たちにとってれっきとしたお仕事なのだ。話の中身は何でもいい。とにかくケタケタ笑う。甲高い声で一定時間笑い続ける。こんな素っ頓狂な笑い声もどきでリスナーの心が明るくなると本気で考えているのだろうか?だとしたら…甘い。人間の耳は意識、無意識、両方でとても敏感だ。理屈を越えて何かを感じ取る。声は鏡だ。声は発話者の心根を映し出す。

首相最後の記者会見はいつもと少し様子が違っていた。今回はプロンプターが使われなかったことも大きな要因だろう。前半はメモを見ながら、しかし後半はご自分の言葉で語られているように拝見した。僭越ながら、我々の暗譜と似た要素があると思う。歌詞が頭に入り、心に馴染み、歌詞の言葉を自分の言葉として歌い語れるようになった時、初めてお客様に歌の心が伝わる。楽譜を見て歌っているうちは、とてもお客様の前に出すことは出来ない。会見全体の声もいつもより落ち着いている印象だったが、記者の質問に答えたとき、ふいにトーンが上ずった。声は正直、声は鏡。一瞬にして発話者の心を映し出す。

先日病院へ行った。順番を待っていると、ドアの向こうから医師が患者さんに話しかける声がかすかに聞こえてくる。声のトーンが明るい。きっと患者さんに朗らかに接しようとしているのだ、お医者様も大変だなぁ…などと勝手にお察ししたが、もうひと息集中してみると、その声は作り声ではなく、本当に大らかで明るい。そういえば、アクリルカーテン越しの受付の方々も皆さん、リラックスして働いている様子。「先生のお声、明るくて、とてもいいですね」と思わず申し上げると、「いやぁ、そんなこと言われたの初めてだなぁ」とニッコリ。その声も明るい。何だかこちらもホッとする。そう、声は力だ。声は癒しを与えてくれる。

近所に若いご家族が引っ越してきた。お兄ちゃんと弟くんが朝から元気に外で遊んでいる。ちょっぴりアニキ風を吹かせ、虫取り網を片手に走り回るお兄ちゃん。甘えん坊だけれどマイペースな弟くん。くったくのない二人の会話、邪心のない、想いそのままの声。あぁ夏の朝だなぁ…なんて、のどかな気分になる。声は力、声はエネルギーを与えてくれる。

コロナ禍に放り込まれて約半年。「声」についてこんなに敏感になるのは、「声」が自由を奪われたことへの反動かもしれない。
今日で8月が終わる。潮目が変わり、よき兆しが見えることを祈りたい。

★スペインの画家ホアキン・トレンツ・リャドの原画展が開かれます。
9月17日~22日@東京/横浜10月8日~12日@横浜
入場無料、予約特典あり。
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by Megumi_Tani | 2020-09-01 00:46 | エトセトラ

スペイン歌曲のスペシャリスト♪谷めぐみのブログです


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