Vaya con Dios 再び   

愛しい生徒さんとの別れがあった。生徒さん、といっても、私より年長の女性。「歌が歌いたくて」と、初めてレッスンに来られたのは、もう十年ほども前のことだろうか。お仕事が忙しい中、また遠方に引っ越されても、熱心にレッスンに通われた。その後、大病に見舞われ、お稽古を中断。「必ず、また来ます」の言葉通り、奇跡の回復を遂げ、レッスンに復帰。一時は「病気だなんて、何かの間違いね」と冗談を交わすほど元気になられたが、まさかの再発。そして闘病の末、今年、天に旅立たれた。

お洒落で、いつも颯爽としていた彼女。いつかドシャ降りの日、ジーンズに雨靴のスタイルでレッスンに現われ、「先生、ごめんなさい。こんな格好じゃ、とてもエレガントな歌を歌う気分になれないわ」と、嘆いた。

発声練習の折、私が「口角を引いてポジションを上げる説明」に四苦八苦していると、突然、彼女が叫んだ「先生、分かった!目をパッチリ開ければいいのよ。そうすると、ほら、笑顔になって声がよく響く!」そして鏡に向かって目をパチクリ、ニッコリして「アラ!どうしましょう。私、ますます美人になっちゃうわ」と、笑わせた。レッスンで、この「目をパッチリ」の説明をする時は、いつも彼女の面影が心をよぎる。ウィットに富んだチャーミングな女性だった。

レッスンの後、お気に入りの紅茶店でよくオシャベリをした。頭脳明晰、しかも微妙な心のひだを感じ合える素敵な女性だった。こうして書いていても、凛とした笑顔が目に浮かぶ。

さようなら、は似合わない。Vaya con Dios~ごきげんよう。貴女に神様のご加護がありますように。

そして、また逢いましょう。いつか、きっと。
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by Megumi_Tani | 2009-12-12 08:55 | エトセトラ | Comments(0)

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