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『鳥の歌』   

「この曲は、日本で一番有名なスペイン音楽かもしれない」と、前回の日記に書いた。しかしこれは、外国人から見ての話である。そんな風に思うスペイン人は誰もいない。スペインは、ひとつの国であってひとつの国ではない。『鳥の歌』はカタルーニャの歌である。厳密に言えば、『鳥の歌』は、日本で一番有名なカタルーニャ音楽である。

1971年10月24日、ニューヨークの国連本部での記念コンサート。95歳直前のカザルスは「私の故郷カタルーニャでは、鳥たちはピース!ピース!と鳴きながら飛ぶのです」「ピース!ピース!」とくり返し、『鳥の歌』を奏でた。超満員の聴衆は皆、涙したという。この演奏によって『鳥の歌』は、気高くも厳かな魂をこめた曲として、広く世界中に知られるようになった。

一留学生の私が出会った『鳥の歌』は、少し様子が違っていた。バルセロナでは、誰と話しても、カタルーニャの数ある民謡の中のひとつ、という感じだった。確かに、ほかの曲とは違う。しかし、日本で抱いていた崇高な、ある種神格化されたイメージではなく、もっと身近で親しい曲だった。レッスンで、つい朗々と歌おうとすると、「それはカザルスの真似か?チェロで弾けばそうなるが、メグミはソプラノだ。ソプラノらしく、もっと自然に歌え」と叱られた。

どういうものか、『鳥の歌』を歌う時には、心が鏡になる。泣いたり、笑ったり…過ぎた記憶が走馬灯のように駆けめぐる。カタルーニャの歌、スペインの歌…そんな枠を越えて、あらゆる人の心を静かに澄ませる歌…。これが、ひとり私だけの思いではないことを、昨秋いただいた手紙が教えてくれた。

夏を越え、秋を迎え、10月2日には、どんな鳥が飛び立つのだろう。

by Megumi_Tani | 2010-05-16 07:39 | スペイン歌曲 | Comments(0)

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