異国の歌を歌う   

ウルグアイはじめ中南米諸国で活躍しているオペラ歌手、千田栄子さんのコンサートに出かけた。本邦初演の作品を含む中南米、スペイン歌曲によるプログラム。「バラと柳」「ブラジル風バッハ第5番」など私がレパートリーにしている曲も演奏され、とても興味深く拝聴した。

ゆったりとした歌声、どこまでも自然体。曲の合間のお話には、彼女が活動している国々への愛とrespeto(敬意)があふれていた。「ブエノスアイレスを知っていても、アルゼンチンを知っていることにはなりません」という彼女の言葉は、とかくステレオタイプで安易に外国を捉えがちな私たちに警鐘を鳴らしている。

以前、某スペイン歌曲コンサートに出かけた折のこと。開演の挨拶が、いきなりバルセロナの人への悪口で始まったのには驚いた。マドリードの人と比較して、ああだこうだと面白おかしく揶揄する。満場のお客様はゲラゲラ大笑い。歌い手は興に乗ってしゃべり続けていた。

不愉快だった。客をバカにしてはいけない。客席には誰が座っているか分からないのだ。私でさえこんなに腹が立つ。もしもバルセロナ出身のスペイン人が聞いていたら、どんな気持ちになるだろう。日本人として恥ずかしい。ご本人は親しみをこめた軽いジョークのつもりだったのかもしれない。しかし、親しさと不躾さは違う。

いかに慣れ親しもうと、異国の文化に対する謙虚さを失ってはいけない。身をもって感得したrespeto、そして愛があれば、それは自ずと舞台ににじみ出る。千田さんの歌を聴いて、あらためてその思いを強くした。
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by Megumi_Tani | 2010-06-16 08:58 | 思い&想い | Comments(0)

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