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『魂の歌』   

アンケートの中で、『鳥の歌』とともに、F.モンポウ『魂の歌』についても多くの方が感想を書かれていた。「曲のタイトルどおり、魂に触れました」「教会で聴いているような気がしました」「涙が出て困った」等々…。

歌詞は、16世紀スペインの神秘思想家サン・フアン・デ・ラ・クルスによる。難解な言葉をひとつも使わずに神を讃え上げた詩は易しくて難しい。

その世界をより深く捉えるべく、あれこれ試行錯誤していたときに、たまたま友人に薦められたのが『海のカテドラル(La Catedral del Mar)』だ。
http://megumitani.exblog.jp/12933289/
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分厚い文庫本上下二巻の長編だが、懐かしさも手伝い、一気に読み終えた。中世バルセロナ、そして“海の聖母教会”を舞台に繰り広げられる波乱万丈の歴史ドラマ。テーマとして貫かれているのが聖母マリアへの信仰だ。主人公アルナウは数奇な運命に翻弄されながら、いつもマリア様を仰ぎ、語りかける。かたや弟のジュアンは、進学して修道士となりながらも迷い苦しみ、最後には己の身を炎で焼き尽くして果てる。

アルナウの信仰は理屈ではない。勉学でもない。母親を知らずに育った彼は、マリア様を母と慕い、どんな時にも海の聖母像を見上げ、祈る。その素朴な心、見えない光に輝く心に触れたとき、ふと『魂の歌』のベールが一枚はがれた気がした。「たとえ暗闇でも私にはわかる」と繰り返す、その詩が、ほんの少し感じられる気がした。この時期にこの本にめぐり会えたことが不思議にもありがたかった。

ア・カペラとピアノ・ソロという緊張感に満ちた構成、そして詩の奥に秘められた真意。『魂の歌』は難曲だ。アルナウに習い、素直な心で、生涯追い求めていく作品なのかもしれない。

by Megumi_Tani | 2010-10-12 09:11 | リサイタル | Comments(0)

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