忘れられないリサイタル   

先にお知らせした通り、1月31日NHK文化センター八王子教室で『紀宮殿下に捧げる曲』を歌う。久しぶりに楽譜を取り出してみて、えもいわれぬ感慨が湧いた。

ある日突然お話をいただき、この曲を歌わせていただいたのが2005年。端正なメロディー、アカデミックな編曲、そしてスペイン語の美しさ…。気品あふれる佳曲だった。

その後、2007年のリサイタルで、サプライズの特別演奏をさせていただいた。
実はこのリサイタルは私にとって特別なものだった。2007年は年明けから大きな出来事が続いていた。やっと訪れた春3月31日、知人の演奏会を聴きにカザルスホールへ出かけたものの、精根尽きはてていた私は、音楽に集中する力などない。ただぼんやりと席に座り込んでいた。そこへ、開演のチャイムが聞こえてきた。あ、これは…。『鳥の歌』だった。あまりにも自然に、あまりにも懐かしく、あまりにも深くしみじみと魂に響き入るメロディー…。こうしてはいられない。突然、そう思った。雷に打たれたような、という表現があるが、まさにそんな感じだった。歌おう、歌わなければ。そうだ、この『鳥の歌』を歌わなければ。Si Dios quiere~御心に叶っていれば、必ず歌わせていただけるはず。一瞬にして心が決まった。疲れ果てた体と心に生気が蘇ったことを覚えている。

わずか半年の準備期間。通常ではありえないことだが、沢山の方々のお力添えを得て10月10日、カザルスホールでのリサイタルが実現した。雨女の私のはずが、この日は晴天。美しい秋の夜空がくっきりと広がった。「開場を待つ人の列が表通りまでずっと伸びていますよ」と、スタッフに伝えられた時の嬉しかったこと。舞台のそでで半年前と同じ開演のチャイム~鳥の歌のメロディーを聞いたとき、あぁこの歌が私を呼び戻してくれた、スペインの歌が私を生き返らせてくれた、そんな思いが全身を貫いた。

この特別なリサイタルで、お許しをいただき、『紀宮殿下に捧げる曲』を演奏させていただいた。バルセロナの友人が贈ってくれた『千の風になって~soy miles de vientos』も歌った。思えば、これも不思議な巡り合わせだった。そして最後に歌った『鳥の歌』。この時に、この歌は、正真正銘、私の生涯の歌になったような気がする。

カザルスホールも今はない。『紀宮殿下に捧げる曲』の編曲を担当された心優しいK先生も天国へ旅立たれた。音楽はいつも一期一会。でも、音楽はいつも時空を超える。想い合う心をきっとつないでくれる。
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by Megumi_Tani | 2013-01-14 01:14 | リサイタル | Comments(0)

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