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アルベニス~ゴンドラの船歌   

ビクトリア・デ・ロス・アンへレスのレパートリーの広さは驚異的なものです。オペラのプリマドンナとして、ミミなどの娘役から、ドラマチックな蝶々夫人、はたまたカルメン、ファリャの「はかなき人生」のサルーなど多彩な役をこなし、その一方で、ドイツ、フランス、イタリア等々世界各国の歌曲を幅広く演奏しました。往年の名伴奏者ジェラルド・ムーアの引退記念コンサートに、フィッシャー・ディスカウ、エリザベート・シュワルツコップとともにゲストとして招かれたことからも、彼女の実力のほどが分かります。(この時にシュワルツコップと一緒に歌った「猫の二重唱」は、それはそれは楽しいものでした)。

そのビクトリア・デ・ロス・アンへレスが、終生変わらず大切に歌い続けたのが愛する母国スペインの歌曲でした。黄金世紀以前の古い歌から、近代、現代の作品、セファルディーの歌、スペイン各地の民謡、とりわけカタルーニャの民謡…。スペインの歌、という夢を追いかける私にとって、彼女はまさにバイブルのような存在です。

「歌は語るように、語りは歌うように」という言葉がありますが、彼女の歌は、まさにいつも「語って」います。どこまでも自然体で、借りものではない、己の言葉で語る歌。そんな彼女の演奏そのものが、私の憧れでもあります。

リサイタルの4ステージ第一曲目アルベニス「ゴンドラの船歌」は、今回初めて演奏する小品です。1986年の夏、アルベニス生誕の町カンプロドンで、ビクトリア・デ・ロス・アンへレスとマヌエル・ガルシア・モランテによる演奏を聴きました。ごく短い曲なのに、その静けさと美しさに息をのみました。アルベニスが残した声楽作品は数少なく、楽譜もなかなか手に入りません。それでも後にやっと探し当て、以来、ずっと演奏の機会が来るのを待っていました。手元にCDもありません。聴いたのは、あのとき一度だけ。それなのに…記憶というのは不思議です。夜のカンプロドンの町、コンサート会場で入念なリハーサルを繰り返す二人、そしてあの豊かな歌とピアノの響きが、今もはっきりと心に蘇ります。
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by Megumi_Tani | 2013-05-19 12:51 | スペイン歌曲 | Comments(2)

Commented by 太田公士 at 2013-05-21 10:49 x
先日ご紹介いただいたロス・アンへレスのCD、「カタルーニャ民謡集」が昨日届き、谷さんのリサイタルの予習(笑)も兼ねて、早速聞きました。本当に素晴らしい! まさに語るような歌声とはこのことかと思いました。
谷さんがバイブルと言われる一端が、少しですがわかるようなきがします。
いよいよリサイタルが近づいてきましたね! これから本番までは、最もナイーブな時間かと思います。大切にお過ごしくださいね! 心から楽しみにいたしております。
Commented by Megumi_Tani at 2013-05-22 00:22
お取り寄せ、到着が早くてよかったですね。予習までしていただき(笑)ありがとうございます。今日のブログで、また珍しいCDをご紹介させていただきました。
生涯の「Gran Diva」にめぐり会えたことは、歌い手として本当に幸せだったと思います。

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