浪漫の心
2014年 06月 08日
ところで、この浪漫という言葉、西洋ロマンティシズムの
「ロマン」に、夏目漱石が漢字を当てたといわれています。浪漫…風情のある響きですね。漢字のもつ力を感じます。
スペインのロマンティシズムは、ただ甘くうっとりと優雅なものではありません。逃れえぬ現実の厳しさ、宿命を受け入れる凛々しさ、痛みゆえの喜び、諦観ゆえの熱い祈り…。そんな激しく強く、時に矛盾する様々な要素が陰影を成し、スペイン独自の世界を生み出しています。一筋縄ではいかないロマンティシズム、とでもいうのでしょうか。19世紀末から20世紀初頭にかけての日本では、大正浪漫の華が咲きました。その艶やかさ、奥に秘められた儚さは、スペインの心にどこか相通じるものがあります。この時代、スペインでは、アルベニス、グラナドス、ファリャら、重要な音楽家が活躍していました。スペイン浪漫…。粋と情熱と命をこめた、
スペインならではの浪漫を存分にお楽しみいただきたいと思います。
それにしても驚いたのは、夏目漱石とグラナドスが同じ年の生まれで、同じ年に亡くなっていることです(1867 / 慶応3~1916 / 大正5)。漱石は重度の胃潰瘍が命取りになり、グラナドスは、自作のオペラ『ゴイエスカス』のニューヨーク初演に立ち会い、その帰路で、乗った船がドイツ潜航艇の無差別攻撃を受け、夫人とともに英仏海峡の藻屑と消えました。こうして二人のお顔をしみじみと眺めていると、浪漫の時代がすぐそこに感じられるような気がします。
グラナドス「 嘆き または マハと夜鶯」~ゴィエスカスより
第23回リサイタル《スペイン浪漫》
2014年10月4日(土)午後2時@Hakuju Hall
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