不思議な出会い
2014年 08月 09日
「あの、スペインの歌はご存知ですか?」「知りません。ファドとは違う…?」「ファドはポルトガルの音楽です」私は、バッグからリサイタルのチラシを取り出した。「初めてお目にかかって、何だかいきなり失礼ですけれど…。私はスペイン歌曲の歌い手です。日本ではあまり知られていないジャンルですが、スペインの歌には心に深くしみる作品が沢山あります。私はスペインが好きで、好きで、ずっと歌い続けてきました。これを機に、スペイン歌曲に興味を持っていただければ嬉しいです」そう言ってチラシを渡した。マダムはニッコリ笑顔で受け取り、表も裏も熱心に眺めている。
「今日ここでお目にかかったのも何かのご縁だわ。Hakuju Hall?あ、ここに地図が載っているわね。チケットは、ここに書いてあるチケットセンターに電話すればいいのね。分かりました。私、必ずまいります」エッ?私の方が驚いた。「そ、そ、そんな…。たった今、偶然お目にかかったばかりなのに…。スペインの歌のお話をさせていただけただけでも嬉しいですから。どうぞご無理なさらないでください」「無理?とんでもない。これも何かのご縁ですもの。帰ってさっそくチケットセンターに電話します。私、必ずまいります」マダムは真顔で、そう仰る。予期せぬ展開に慌てる私。「あの、本当に来てくださるのですか?本当によろしいのですか?もしももしももしも、本当に本当に本当に来てくださるのであれば、私、今、たまたまチケットを持っていますから、わざわざ電話をしなくても、ここで直接チケットをお求めいただくことが出来ます。その方がお手間を取らせずに済みますから一応申し上げましたけれど、でも、でも、でも、とにかくご無理なく、アワワワワ…」驚きすぎてうまく言葉が出てこない私。「あら!よかった。では私、ここで戴いてまいります。1枚お願いします」マダムはお財布を取り出し、私からチケットを受け取り、「ではお先に。当日を楽しみにしています」と、ふわりと店を出て行った。
夕方の混雑したコーヒー店、ほんの15分間ほどの相席のテーブル、「音楽は人の心を素直に感動させてくれます」と真剣に語る名も知らぬ美しいマダム…。こう書いていても何だか夢のような気がする。「スペインが好きで、好きで、ずっと歌い続けてきました」と私が言った時、大きく頷いてくれた表情が印象的だった。ありがとうございました。10月4日、Hakuju Hallで、お待ちしています。
パソコンは一切やらない、と、仰っていたから、このブログにお礼を書いても、読んではいただけないのだけれど…。
ご来聴をお待ちしています。 詳しい情報は、下をクリック
第23回谷めぐみリサイタル《スペイン浪漫》
2014年10月4日(土)午後2時@Hakuju Hall
10月4日、ヴォカリーズで歌います。