ありがとう!ドミンゴ 再び
2014年 10月 21日
東日本大震災、福島の原発事故を受けて、日本公演を予定していた外国人演奏家が次々と来日を取りやめた。あの演奏会もキャンセル、この演奏会もキャンセル、あの人も来ない、この人も来ない、あの有名な〇〇さんは慌てて日本を脱出したらしい…。連日流れるニュースは寂しいものだった。そんななか、ドミンゴはやって来た。予定通り。なんの変更もない。そしてアンコールの《ふるさと》で、日本に温かいエールを送ってくれた。 『ありがとう!ドミンゴ』
「歌」が存在する意味、歌うこと、歌い手であること、なぜ歌うのか…。音楽の無力さに打ちのめされていた私は、ほら、と、ドミンゴに背中を押されたような気がした。歌おう、歌わなければ…。
急に力が湧き、秋に、予定通り、リサイタルを開くことを決めた。プログラムはすべて組み換えた。歌で、愛するスペインの歌で、鎮魂の祈りを捧げたい。そして、コンサート半ばには、ホールいっぱいのお客様と一緒に《ふるさと》を歌った。 『Recitalあれこれ《ふるさと》』
歌い手としての人生のなかで、忘れられない曲、忘れられない場面がある。その一瞬の記憶が、歌うこと、歌い続けることを支えてくれる。