『アルゲリッチ、私こそ、音楽!』
2014年 10月 27日
真摯に激する魂、奔放な生命力、豊かな母性、あどけない幼女の心、柔和な微笑み、虚ろなまなざし、壮絶な孤独、その存在のすべてを昇華する音楽…。マルタ・アルゲリッチ、その人のむきだしの姿を、監督は、実娘ゆえの、天才芸術家に翻弄されてきた人ゆえの、女同士ゆえの複雑な視線を絡ませながら、淡々と映しだしてゆく。
邦題『アルゲリッチ、私こそ、音楽!』は、びっくりの意訳だ。原題は『Bloody daughter』。映画のなかで、この言葉の出所が分かる。Bloody daughter の名のもとにカメラを回し続ける娘ステファニーと、それに赤裸々に応える母親マルタ。 この映画を成立させたのは、ほかの誰でもない、女神マルタ・アルゲリッチその人であることが痛いほど分かる。
ずっしり重い赤ワインのような映画です。渋谷ル・シネマにて。11月7日まで。