ビクトリア・デ・ロス・アンへレス没後10周年(1)   

2015年1月15日、ビクトリア・デ・ロス・アンへレスが天に召されて十年の節目を迎えた。もうずい分昔のような気がする一方で、まだわずか十年、という気持ちも強い。音楽は時空を越えてつながっている。それでも、あらためて立ち止まると、さびしい。

昨年、大学の後輩君が急逝した。ビクトリア・デ・ロス・アンへレスの熱烈なファンだった彼は、彼女の東京公演の際に関西から駆けつけ、「ロス・アンへレスはすごい!ほんまにすごい!」と、ただただ感動、興奮していた。素朴で人なつこい後輩君の熱い想いが伝わり、私もとても嬉しかった記憶がある。公演終了後、サインが欲しい、という彼をビクトリア・デ・ロス・アンへレスのところへ連れて行った。一緒にいた後輩嬢によると、彼は、たとえわずか一瞬しかそばに近寄れなくてもサインをもらえるように、と、サインペンのキャップを開けるタイミングまで計算して準備していたそうだ。今は、天上で、きっとまた彼女の歌に聴き惚れているにちがいない。

ビクトリア・デ・ロス・アンへレスのレパートリーの広さは驚異的だ。ひとつには声域が広い。リリックな高音からメゾ・ソプラノ顔負けの低音まで、幅広い音域でよく声が鳴る。語学も堪能だ。母語であるスペイン語、カタルーニャ語のほかに、英語、イタリア語、ドイツ語、フランス語等々をこなす。
そして何よりも、そんな諸々すべてを超越して、「ビクトリア・デ・ロス・アンへレスの音楽」そのものがある。人が歌であり、歌が人である。そんな異次元の存在~Diva(女神)。しかもそのDivaの演奏は、いつも自然で温かく、人間味にあふれているのだ。

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この機会に、途方もない数の映像の中から、各ジャンルの演奏各々1曲を集めてみました。他の演奏を楽しむ手がかりにしていただければ幸いです。

まず、皆様よくご存知の『愛の喜び』です。この曲のこんなに心豊かな演奏は聴いたことがありません。ドイツ歌曲は、シューベルト[『鱒』を選びました。リセウ大劇場でのお宝映像です。必見!フランス歌曲は大好きなフォーレの『悲しみ』をどうぞ。スペイン歌曲は、やはり代表作ファリャの『七つのスペイン民謡』とまいりましょう。ピアノはアリシア・デ・ラローチャです。こちらはグラナドス歌曲作品の最高傑作『トナディーリャス』、こんなチャーミングな歌もあります。『カーネーション』

イタリア・オペラからは、プッチーニ『ボエーム』のミミのアリアを。ヴィクトリアが最も好きな役だと、どこかで語っていました。ドイツ・オペラ『タンホイザー』も演奏しています。フランス・オペラというのも不思議な『カルメン』、正真正銘スペインのオペラ、ファリャ『はかなき人生』をご存知でしょうか?スペインといえば、忘れてはならないサルスエラはこちらです。『カルセラーラス』

偉大な音楽家との共演も残されています。ブラジルを代表する作曲家ヴィラ・ロボス指揮による『ブラジル風バッハ第5番』。モンポウのピアノによる『君の上にはただ花ばかり』。そして、カザルスのピアノ伴奏によるブラームス『甲斐なきセレナーデ』

M.バリュス編『セファルディーの歌』は、録音そのものも珍しい、貴重なプライベート映像です。この曲は、谷めぐみのCD『魅惑のスペイン』に収録されています。


優しさあふれる子守り歌


カタルーニャの歌『移民』圧巻です。@カタルーニャ音楽堂


バルセロナ・オリンピック閉会式『鳥の歌』


こちらでは、ビクトリア・デ・ロス・アンへレスの一生を記録したフィルムをご覧になれます。
『Brava, Victòria!』

ビクトリア・デ・ロス・アンへレスについて、これまでに綴ったものです。
『ビクトリア・デ・ロス・アンへレスの想い出』   『鐘は「語る」 』   
『アルベニス~ゴンドラの船歌』  『カザルスホールのこと』

真夜中の部屋。こうして書いていると、音もないのに、ビクトリア・デ・ロス・アンへレスの音楽にすっぽり包まれている気がします。Divaよ、永遠に。

フォーレ『レクイエム』 

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by Megumi_Tani | 2015-01-21 01:04 | スペイン歌曲 | Comments(0)

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