願い~CD『スペイン浪漫』   

先日発売のCD『スペイン浪漫』に込めた願いについて、書いてみたい。

スペイン歌曲は世に知られていない(涙)。長く歌い続けている私が言うのも癪だが、本当に知られていない。初めてお目にかかった方に自己紹介させていただくと、様々な反応が返ってくる。

「あら!お話しする声は高いのに、歌う時はあの野太い声になるんですか?」
⇒ フラメンコの歌い手と間違えている。
「谷さんって歌の方かと思っていたら、オレ!の踊りの方だったんですね」
⇒ フラメンコの踊り手と間違えている。
日本では、当のスペイン人も驚くほどフラメンコが盛んだ。故に仕方がないのだが、「スペイン…」と聞いただけで、大抵の方はまずフラメンコを連想される。もちろん私もフラメンコは大好きだ。一流の踊り手、歌い手の突き抜けたパフォーマンスには激しく魂を揺すぶられる。人間存在そのものを賭けた、まさにスペインならではの芸術だ。同じスペインに、この同じ「人間存在そのものを賭けた、スペインならではの芸術」としてのスペイン歌曲があるのだが、はてさて、その存在感のなんと希薄なことよ(涙)。

とりあえず、クラッシクの声楽の歌い手と理解してくださった方の多くには、こう尋ねられる。「あの…スペイン歌曲って、どんな曲があるんですか?」
もう一歩進んで(後退して?)「あの…スペイン歌曲って、なんですか?

濱田滋郎先生が「第26回リサイタル 」にお寄せくださったコメントにあるように、スペイン歌曲は「どれを聴いても同じようで、ローカルな面白さが売り物のジャンル」と、極めて単一化して受けとめられている節もある。大雑把にいえば「スペインって、ビバビバ!って感じ!」というところか。いつも底抜けに明るくビバビバ!あまり悩まずビバビバ!明日は明日の風が吹くビバビバ!etc。

もちろん、ビバビバ!も大いなるスペイン歌曲の魅力の一つだ。私自身、スペイン歌曲に出会うまで、自分がビバビバ!な要素がある人間とは知らなかった(笑)。しかしスペイン歌曲におけるビバビバ!、すなわち陽気さ、明るさの陰には、えもいわれぬ哀しみがある。哀しいから笑う、哀しいから弾ける…。相矛盾する心が、いつも共にある。まさに光と影のように。そして、同じく濱田先生が指摘されているように、「一度でもよく聴き込んでみるなら、そこには量り知れぬほど多用なヴァラエティが秘められている」。喜び、悲しみ、別れ、恋、情熱、嘆き、優しさ、祈り…。誰にでも覚えがある思い、人間の飾らない心情を、凛として、潔く、しかも端正に、豊かに表現するところに、スペイン歌曲の真髄がある。

よく言われる情熱!だけではなく、ビバビバ!だけでもない、スペイン歌曲の様々な顔を知っていただきたいと願い、選曲した。一般にスペイン歌曲を聴く機会は極めて少ない。このささやかなCDを通じて、その奥深い魅力の一端に触れていただければ嬉しい。

スペイン浪漫~谷めぐみスペイン歌曲ライブCDリサイタル

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by Megumi_Tani | 2018-09-23 22:45 | CD | Comments(0)

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