スペインと『カルメン』   

オペラ・キュレーター井内美香さんが主催されているオペラ勉強会『みんなでオペラ』に参加させていただいた。テーマは「カルメン」。二年前に続く二度目の登場だ。さすが人気オペラ!一度目の様子⇒「カルメン勉強会

今回は、フランスオペラにおける『カルメン』という視点で、歴史、内容、ビゼーの他の作品について等々を分かり易くお話くださった。井内さんお手製の♥入り登場人物相関図も楽しい!『美しきパースの娘』の緊張感溢れるシーン、二つのバージョンの『カルメン』のいずれ劣らぬ奔放且つ鬼気迫るシーン、誠に見応えがある。音で描く鮮烈なドラマ、艶やかな色彩、激しく衝突する人間の性…。天才ビゼーの、まさに天才ぶりをあらためて実感した。

『美しきパースの娘』は、この曲で有名です。


昨日視聴した『カルメン』のひとつ。フィナーレ

そこで、あらためて考えさせられた。スペインにとって、『カルメン』とは何なのだろう?と。

このオペラが書かれた19世紀半ば、音楽界では「スペイン」が大流行していた。異郷スペイン、魅惑の国スペイン、光と影の国スペイン…。リスト、ラロ、シャブリエ、リムスキー・コルサコフetc。ヨーロッパやロシアの名立たる音楽家達がこぞって「スペイン風」の作品を発表、その筆頭に挙げられるのが『カルメン』だろう。

カルメンは、ヒターナ(gitana):ロマの女だ。セビーリャを舞台にした、魔性のロマの女と実直なバスク男とのドラマティックな恋愛悲劇。しかし、カルメンがロマだということはあまり認識されず、スペイン人女性は皆カルメン、とでもいうようなある種ステレオタイプ的イメージが出来上がっている。日本人女性が皆、お蝶夫人ではないように、スペイン人女性が皆、魔性の女カルメンであるはずがない。井内さんも挙げておられたが、『マノン・レスコー』『サロメ』はたまた『痴人の愛』等々、洋の東西を問わず、魔性の女は存在する。

更に、オペラには、ロマの仲間達、占い、酒場、闘牛士、誘惑、恋、裏切り、嫉妬、殺人etc、何とも怪しげな要素が、これでもかこれでもかと盛り込まれている。観客は否応なしに妖しくも謎めいた魅惑の国スペインに誘われる仕掛けだ。

フランス人による、つまり外国人による原作、台本、作曲だからこそ、ここまで極端な作品が出来たのかもしれない。しかもその作品の出来が超一流と来たから、たまったものではない。オペラ『カルメン』を通した「スペイン像」「スペイン女像」がすっかり世に定着してしまった。

その『カルメン』を貫く情熱はそのままに、その凛々しさもそのままに、人間の喜怒哀楽を真っ直ぐに歌うスペイン歌曲の世界がある。決して極端な何かではない、市井の人誰もが心に知る想い(喜び、哀しみ、嘆き、憧れ、諦め、願い、祈りetc )を飾らず、潔く、しかも端正に歌う。その存在は、艶やかな大輪の華オペラ『カルメン』を前にするといかにも小さく儚いが、だからこそ大切にお伝えしたいと、あらためて強く願う。

冠婚葬祭の時にしか会わない遠い親戚?(笑)のようだった『カルメン』をグッと身近に感じさせてくれたのが、ここ数年取り組んできたイラディエール作曲「エル・アレグリート」だ。新しいCD「スペイン浪漫」にも収録されている。ぜひお聴きいただきたい。

10月30日開催「毎日メディアカフェ」でも、この歌のお話をします。

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お申込み受付中!
10月30日(火)午後6時30分
どなたでも参加できます。入場無料・要事前お申込み
お申し込みはこちら ⇒ 2018年10月30日のイベント

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by Megumi_Tani | 2018-10-21 00:39 | Musica あれこれ | Comments(0)

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