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「声の力を学ぶ」連続講座 第9回   

元NHKアナウンサー、山根基世さんが主宰される連続講座『声の力を学ぶ』第9回を聴講させていただいた。

★第1回から第8回のレポートは、こちらのページでご覧になれます。
山根基世「声の力」講座

今回の講師は、詩人、俳人、随筆家、翻訳家としてご活躍のアーサー・ビナードさん。
タイトルは「ケモノの声が出せるか?日本語と英語の源について」。アメリカ、ミシガン州に生まれ、日本で学び、活動するようになられたご自身の歩み、他言語との出会い、他言語で考える楽しさ、アルファベット「R」が表わすもの、翻訳とは何か、言葉とは何か、etc,etc。ユーモアたっぷりのお話は尽きるところがない。最後には、自ら制作された貴重な「紙芝居」もご披露くださり、素敵な二時間が終了した。

アーサーさんの綴りは「Arthur」。意味は熊。「熊五郎ですね」などと笑いを取っておられたが、Arthur に入っているアルファベット「R」は、本来とても勢いのある、強烈な発音を表わす。「Arthur」にはその強烈な「R」が2つもある。日本語で言うちょっと息が抜けた感じの「ああさあ」は、ずい分印象が違うそうだ。関連して、日本語のラリルレロは「R」か「L」か、という問題もある。どちらかといえば「R」??しかし厳密には、そのどちらでもない。「R」は迫力、「L」は優しさ。両者は対極にある。そもそも「R」と「L」は別物なのだ。

絵本『はらぺこあおむし』を題材に、翻訳の真髄についても語られた。翻訳とは、単なる言葉の置き換えではない。言葉の奥にあるものを掘り起こし、掘り下げ、深い根底を確認し、創作すること。そのためには、言葉の奥にある力学を知らねばならない。

アーサーさんは数多くの絵本の翻訳を手掛けておられる。講座後半には、まずそのなかのひとつ、世界的大ヒット曲「What a wouderful word」の歌詞をアーサーさんが翻訳した『すばらしい みんな』を、絵とともに、読み語ってくださった。
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続いて、昆虫語という我々人間には分からない言葉による絵本「なすずこのっぺ?」の読み語り。単語の意味はチンプンカンプン、まったく分からない。しかしそれでも、アーサーさんが深い抑揚をつけて読み、語る声に、会場全体が惹きこまれていく。この絵本に込められたアーサーさんの熱い思いが、真っ直ぐに伝わって来た。
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スペイン語の歌に携わる者として、今回の講座はとても身近に感じられるお話だった。
「R」と「L」は、外国語の歌を歌う日本人にとって永遠の課題だ。「R」と「L」は別物だと言われても、我々には、そもそも別物と捉える感覚が無い。二種類のラリルレロをいかに明確に区別して発音するか、という本来ありえない目的のために、日本語脳には刷り込まれていない舌の動きと悪戦苦闘するハメになる。翻訳についてのお話には、いたく共感。まさに膝を打つ思い。昆虫語による読み語りには、「あぁ、スペイン語の歌を聴いているお客様の大半は、こんな感じなのかなぁ」と、あらためて実感。意味がダイレクトに分からない。でも、何とかして作品にアプローチしようと耳と感性を研ぎ澄ます感覚。そして……アーサーさんの昆虫語による読み語りは、たしかに私達の心に届いた。その根底には、アーサーさんのこの作品への愛がある。そして「声の力」がある。

「日本に来て、母国アメリカを客観視することで、逆にアメリカの中に入り込むことが出来た」とも語っておられた。外国文化に関わっておられる方々の中には、共感される向きも多いのではないだろうか。私も、スペインという国に深く触れることで、日本という国に対するより客観的な視線が養われたような気がする。

講座の締めに、山根さんが紹介されたこの本。鋭いです。
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by Megumi_Tani | 2018-12-15 22:40 | 講座/セミナー | Comments(0)

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