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「声の力を学ぶ」連続講座 第11回

元NHKアナウンサー、山根基世さんが主宰される連続講座『声の力を学ぶ』第11回を聴講させていただいた。

今回の講師は、神経内科医の岩田誠先生。「声が言葉になるまで-知性の誕生ー」と題し、動物の進化と声と言葉との関係、芸術と声と言葉との関係、知性の誕生と声と言葉との関係etcについて、ユーモアを交えて、たっぷりお話しくださった。

動物の進化史上、自ら子育てをする鳥類、哺乳類に至って、初めて、声が必要になった。ネアンデルタール人は声を言葉に出来ていた。死者を葬ったが副葬品はない。石器を作ったが骨器はない。道具は単純なハンド・アックスで、これが何十万年もの間変わらなかった。特筆すべきは、障害者介護をしていた痕跡があることだ。と、ここで突然、スペインの地名が出て来た。「Sim de Huesos」その名も「骨の穴」!ここで見つかった43万年前のネアンデルタール人の頭蓋には、仲間殺しをした痕があるという。ハァ…史上初の仲間殺しが証明された地がスペインとは(^^;;

障害者介護と仲間殺し、つまり、利他行為と故殺。いずれもヒト族以外の動物にはほとんど見られない行為だ。種の保存という進化の原則からみればマイナス効果を及ぼすこの両行為を、なぜヒト族は行うのか?そこには、声と言葉による情動的コミュニケーションが関与しているのではないか?

言語機能の本質は模倣にある。ヒトの赤ちゃんは生後数日で母親の声を認識し、4か月児になると母親のオウム返しを模倣する。いくつものプロセスを経て、概ね2歳で二語文での発話が可能になる。このような言語能力の発達は描画能力の発達と深い関係がある。言葉の発達とともに描画の対象が広がりをみせ、文章能力の発達とともに状況図を描くことが出来るようになり、やがて、概念的リアリズムを以って空間的位置関係を正確に描くようになる。

では、ヒトはいつから描き始めたのか?と、ここで再びスペイン登場!(故殺の痕跡だけじゃなくてよかった(^^;; )最古とされるのは、4万800年前のエル・カスティ-ジョ洞窟壁画だ。ほかにもスペインのアルタミラエル・カスティ-ジョラ・パシエガ、フランスのショーヴェ等に、貴重な洞窟壁画が残されている。

「洞窟」は日常生活の場ではなかった。ヒトは、非日常の特別な場としての洞窟に入り、力強い大型動物や呪術師と思しきヒトの姿を描いた。絵が描かれた洞窟は音響効果が高く、特にバリトンやバスの声がよく響く。骨製、木製の楽器も作られた。暗い洞窟、仄かな明かり、地鳴りのように低く響く声、素朴な楽器の音色、呪い舞うヒト…。絵画洞窟の中では、総合アートによる「祈り」が行われていた。芸術、すなわち絵画、音楽、舞踏、歌謡等々は、ヒトの脳のみに可能な活動だ。芸術行為とは「祈り」の表現だったのではないか?芸術と医療と祈りはひとつだったのではないか?

最後に「声が言葉になって可能になったこと」として、以下の5つを挙げられた。
1.過去の記憶と未来の展望
2.不可解な現象の説明
3.社会的な関係の分析
4.自己存在理由の認識、確認
5.他者の存在の理由づけ

声というものの原初から芸術、知性の誕生まで!
とても興味深く学ばせていただきました。

★「声の力講座」第1回から第10回のレポートは、こちらのページでご覧になれます。

エル・カスティ-ジョ洞窟壁画



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by Megumi_Tani | 2019-02-15 22:51 | 講座/セミナー

スペイン歌曲のスペシャリスト♪谷めぐみのブログです


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