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「声の力を学ぶ」連続講座 第12回

元NHKアナウンサー、山根基世さんが主宰される連続講座『声の力を学ぶ』第12回を聴講させていただいた。

今回の講師は、京都大学大学院 人間・環境学研究科教授、生物言語学・進化言語学者の藤田耕司先生。「言語と声と音楽:その進化的関係を探る」と題し、人類だけがもつ能力といわれる言語と音楽について、他の動物との比較、研究を交えながら、お話しくださった。

言語とは、現生人類だけが持つ普遍的な形質である。言語は単一の能力ではなく、複数の下位機能の結合として成立する複合的能力だ。言語と音楽との共通点は、人類固有かつ普遍的であること、そして階層構造をもつことである。

動物ゲンゴ(あえてカタカナ)と人間言語の比較に関しては、チンパンジー、イルカ、プレリードッグ、鳥、ミツバチ、ベルベットモンキー等々の興味深い写真、動画をご紹介くださった。踊る大捜査線ならぬ踊るミツバチ君のダンス言語には、「今、ここ」に限定されない超越性があり、これは人間言語に近いものだそうだ。プレリードッグがもつ4種類の警戒コールには、対象物の大きさ、形、色の情報に加えて品詞らしきものも含まれているという。鳥は、家畜化による淘汰圧の緩和によって、さえずりに文法をもつようになった。つまり人間に飼われるようになって住居と食料の心配が無くなり、生きることが楽になった結果、さえずりに文法をもつ余裕が出来た、というわけだ。リズムに乗って歌を歌う小鳥ちゃん、音楽に合わせてチャーミングに踊る小鳥ちゃんの動画に、会場から歓声!

しかし、動物ゲンゴが依存しているのは(せいぜい)語順である。他方、人間言語は、階層構造に依存している。人間だけが階層的文法をもち、階層的言語構造は人間の認知作用を司る。汎用階層構造処理能力が、運動、言語、音楽に分かれたのではないか。動物ゲンゴでは命題内容と情動負荷が未分離だが、人間言語では情動と命題が分離した。階層文法をもつ言語が命題内容を、音楽が情動を担うようになった。音声は、階層構造ゆえに生じる曖昧性を解消するために重要な役割を果たしている。

現代の言語コミュニケーションにおける問題点として、情動や共感への過度の依存が挙げられる。人間は領域横断的なあらゆるものを組み合わせる豊かな想像力と創造性を唯一の武器として生き抜いてきた。言語も音楽もその組み合わせによる産物である。

と、極めて文系頭の私が、極めて大雑把に、極めて簡略に纏めさせていただいた(^^;;  
お読みになってお分かりの通り、漢字熟語続出!素人には触れ難い最先端の研究の端っこの端っこをほんのちょっぴり垣間見た思いがした。

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さて、昨年4月にスタートした「声の力」連続講座は、今回で丸一年のカリキュラム終了。在って当然、しかしよく考えると不思議な存在である「声」について、豪華、多彩かつ個性豊かな講師の先生達が様々な角度から熱く語ってくださった。山根基世さんの魅力的なお人柄、絶妙のリード、遠方からも駆けつけていらっしゃる熱心な受講生さん達…。会場の雰囲気も温かい。おかげ様で、私も大いに刺激を受け、楽しく学ばせていただいた。
誠に僭越ながら、第4回には講師の末席を汚させていただいたことにも感謝したい。ありがとうございました。

★今年度の全講座レポートは、こちらのページでご覧になれます。

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by Megumi_Tani | 2019-03-15 22:29 | 講座/セミナー

スペイン歌曲のスペシャリスト♪谷めぐみのブログです


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