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第2期 連続講座「声の力を学ぶ」第7回

昨夜のブログから24時間。台風19号による甚大な被害が次々と明らかになり、更に拡大している。今日は急に冷え込み、雨が降ってきた。どうぞ少しでも早く事態が収束に向かいますように…。

台風直撃の前々日、元NHKアナウンサー室長山根基世さんが主宰される「第2期『声の力を学ぶ』連続講座第7回を聴講させていただいた。
★第1期のレポートはこちら ⇒ 第1期『声の力を学ぶ』連続講座

今回の講師は、サックス・クラリネット奏者にしてミジンコ研究の第一人者、映画にも出演すれば、東京薬科大学生命科学部、広島大学大学院生物圏科学研究科の客員教授も務められる坂田明さん!「声の中に入る。声をかぶる。」と題し、声と音楽、声と言葉、音楽と人生等々について、実演を交え、熱く語ってくださった。

ご自身による「平家物語」の朗読。
声音、リズム、抑揚、すべてが坂田さんオリジナル。変幻自在、独自の境地、発散される強烈なエネルギーが会場を圧倒する。朗読をされているときの状態を「自分が出している声をかぶっている、声の中にに入ってしまっている」と表現された。

ご自身による「音戸の船歌」の歌唱。
息が音に変わる、という意味では、本質的に声も楽器も同じだ。息を声にし、音にし、書いてあるだけであればただの文字にしか過ぎないことば一つ一つを、思うように、自由自在に表現する。その時、己の魂が揺れる。その揺れが伝わり、聴く者は感動を覚える。

声(ことば)と音楽は仲良しだ!
声(ことば)は、音または音楽と置き換えることが出来る。つまり、「声の中に入り、声をかぶった状態」と「音の中に入り、音をかぶった状態」は同義である。
声(ことば)と音、それは魂の乗り物、風景である。声(ことば)は心から発するもの、言霊(ことだま)であり、古来、神に捧げるものだった。そこには根源的に嘘がない。

「かぶる」について:
「声の中に入り、声をかぶること」は、単なるイリュージョン(幻覚、錯覚)ではない。「かぶる」とは、例えば、太陽を浴びる、ふろの湯を浴びる、音を浴びる等に用いられる「浴びる」同様、比喩的な表現である。赤ちゃんがことばを喋れるようになるのは、親の喋ることばを浴びているからであり、文法や単語、発音を勉強するからではない。同じ様に、「かぶること」が出来るようになるには、自らの実践を通して、「かぶる」を体感、体得するしかない。

「音をかぶり、音に入った状態」とは:
「自分の魂が揺れている状態」である。その揺れが声とともに伝わり、相手の魂を揺らす。その ”揺れ” を聴き手は"感動" と捉える。

あの話題、この話題、書き挙げればキリがない。ユーモアたっぷりの語り口で聴き手の心をグッとつかんだかと思えば一転、あたかも憑依されたかのごとき朗読、天に捧げる歌。多言語に通じ、アイヌ語についても道産子の私よりずっと造詣が深い。なんと!モンゴルのホーミーまで実演してくださった。締めには、ご自慢の楽器で、「スターダスト」「見上げてごらん夜の星を」「ひまわり」を演奏♫ 全員がうっとり聴き惚れ、終了した。

質問コーナー:
魂を揺らせる条件とは?:生き方、感性、技術の訓練~心と体の両方を鍛えること。

朗読と歌とサックスの違いは?:「音の中に入る、音をかぶる」という意味では同じだが、自分にとって最も達成感があるのはサックス。緊張感をもって吹き続ける→死ぬ→また吹く、を、ずっと繰り返してきた。自分の中に蓄積されたもの、自分の中に在るものしか出てこない。自分の中に無いものは決して出て来ない。長く続けることが大切。

他人の評価について:評価を参考にはするが、自分の感覚と必ずしも一致するとは限らない。相手が分からなくても、まず自分が面白いことが一番。その面白さが相手に伝わる。100人のうち3人が聴いていればいい!

会場をクスクス笑わせ、煙に巻きながら、実は、真摯に、誠実に、とても大切なことを語ってくださっている。サックスの演奏について、ふと呟かれた一言が耳に残った。「気が済むようにやりたいんだよね」。「気が済む演奏」を真の意味で実現することは至難の業だ。根気よく心と体を鍛え、たゆまぬ練習で技術の裏付けを獲得し、己が面白いと思うもの=己の魂が揺れるものを、己の思うがままに表現する。このシンプルかつ極めて困難な道を求め続けて来た人ならではの「ことば」に、こちらの魂がゆらゆらと大きく揺れた。

帰りがけ、愛器を背負い、小さなお帽子を頭にちょこんとのせたお姿が何ともチャーミング。さりげなく、力強く、励まされた時間。ありがとうございました。

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by Megumi_Tani | 2019-10-14 21:45 | 講座/セミナー

スペイン歌曲のスペシャリスト♪谷めぐみのブログです


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