人気ブログランキング | 話題のタグを見る

第2期 連続講座「声の力を学ぶ」第10回

元NHKアナウンサー室長山根基世さんが主宰される「第2期『声の力を学ぶ』連続講座
第10回を聴講させていただいた。
★第1期と第2期これまでのレポートはこちら ⇒ 「声の力を学ぶ』連続講座

今回の講師は、カウンターテナー・演出家の彌勒忠史氏。「裏声歌手が語るファルセットの魅力」と題し、ファルセットとは何か?ファルセットとはどんな声か?ファルセットで歌われているのはどんな曲か?等々、一般にはほとんど知られていないファルセット(裏声)の世界とその魅力について、豊富な音源を交えて、分かり易くお話しくださった。

ファルセット~falsetto の「falso」はイタリア語で「嘘・偽り」の意。縮小語尾が付いて「falsetto」、つまり、ファルセットは「嘘・偽りちゃん」 というわけだ。しかも日本語では「裏声」……なんたるネーミング(怒)!

カウンターテナーとは、ファルセット~falsetto (裏声)で女性の声域(高音域)を歌う男性歌手のこと。クラシック音楽では希少な存在とされるが、より広い歌の世界に目を向けてみれば、むしろ裏声を使う歌唱が主流だ。そこで、音源第1弾「宇宙のファンタジー」。懐かしい!遠い昔のディスコ通いが蘇る(笑)


音源第2弾:裏声を使用した大ヒット曲


続いて、津軽民謡「ホーハイ節」、奄美民謡「朝花節」、長唄「越後獅子」、ヨーデル「スイス グリンデルワルドのヨーデル」、ハワイの歌「美しい花」など、裏声のみ、あるいは地声と裏声を巧みに組み合わせた歌唱の音源を鑑賞。最後に、ルネッサンス後期の歌曲「千々の悲しみ」を。この曲は、天正遣欧少年使節団の四人が、豊臣秀吉の前で演奏した可能性があるという。彌勒忠史氏と山根基世さんは舞台「語りと音楽でつづる天正少年使節の物語」で共演されている。

裏声の出る仕組み、話しているときと裏声を出しているときの声帯の状態、その使い方の違いなどについてもご説明くださった。希少な声帯の持ち主である彌勒氏は、専門医の研究のため?鼻からファイバースコープを入れて歌う実験の被検者を務められたこともあるそうだ。

子どもの頃から、お母様と叔父様の影響でクラシックやジャズに馴染み、テレビCMの日野皓正に憧れてトランペットを吹き、思春期にはバンド活動。マリオ・デル・モナコの公演を観てこれしかない!と東京藝術大学へ。藝大卒業後、バッハ・コレギウム・ジャパンでファルセットに目覚めた。自分にとって音楽とは、ありとあらゆる世界のものだった。カウンターテナーになったのも、それが自分にとってとても自然だったから。ずっとそうやって歌ってきたから。

「そうですね。今、話していて、やはりまたそう思いましたけど…」と、お話の途中で、何度か呟かれる場面があった。意識、無意識、両方で、常に問題意識を持っておられることが分かる。稀有なる声、ご自身が何の無理もなく自然だと感じる歌い方。その在り方を確立するために、人知れず研鑽を重ねて来られたに違いない。

お話しする声はバリトン。歌えばカウンターテナー。このチェンジ感を「移弦」と表された。言い得て妙!

歌い手の声探しの旅は永遠に続く。本講演のタイトル「裏声歌手が語るファルセットの魅力」に、カウンターテナー彌勒忠史氏の矜持をみた思い。ビバ!

男声ユニット La Dill(ラディル)一番左が彌勒氏






by Megumi_Tani | 2020-01-11 23:00 | 講座/セミナー

スペイン歌曲のスペシャリスト♪谷めぐみのブログです


by Megumi_Tani