バルセロナ出身の作家、
カルロス・ルイス・サフォンが亡くなった。突然の訃報に、私を含め、世界中の『
風の影』ファンが驚いた。癌との闘病を続けていたらしい。まだ55歳の若さだった。
1993年にデビュー。2001年に出版された『
La Sombra del Viento~風の影』が大ベストセラーになった。舞台は1945年のバルセロナ。「忘れられた本の墓場」で出会った一冊の本をきっかけに、主人公ダニエルと彼を取り巻く人々の運命の糸が絡み合う。
いずれの作品も劇画調。サスペンス仕立てのストーリーとともに、随所に散りばめられた「バルセロナ」が魅力だ。お馴染みの広場や通り、老舗のバルやレストラン、夕暮れの街角、行き交う人々の会話…。読み手は、いつの間にか、その日その時のバルセロナにタイムスリップさせられてしまう。主人公ダニエルと一緒に狭い通りの角を曲がったり、闇に眠るモンジュイックの丘を探検したり…。現実だけれど現実ではない、架空だけれど架空ではない、カルロス・ルイス・サフォンが創り出す「迷宮バルセロナ」の何と誘惑的なことか。
下記サイトでは、『風の影』の舞台をたどることが出来ます。
ちょうどこのStay home 期間中、『風の影』を読んでいた。くたびれて古き佳きバルセロナにちょっと避難?したくなると、彼の著書を取り出す。コロナ禍なんて関係なく、風のように去って行ったカルロス・ルイス・サフォン。ありがとう。そして、安らかに。