スペイン語で歌うこと、
カタルーニャ語のこと、歌詞についてあれこれ書いて来た。その一方で、一切歌詞無し→ヴォカリーズで歌い続けて来た曲がある。「わが心のアランフェス」だ。
世界初のギター・コンチェルト、ホアキン・ロドリーゴ作曲「
アランフェス協奏曲」。哀愁を帯びた第2楽章のテーマは世界で最も有名なスペインの旋律かもしれない。ギターのために書かれた曲だが、そのあまりの美しさに、
弦 、
管、様々な楽器がこぞって奏でるようになった。やがて、
スペイン語、フランス語、英語、ドイツ語等々の歌詞が付けられ、歌としても演奏されるようになった。
ジャズ、イージーリスニング等々のスタイルでも大ヒットしている。
どういうものか、私は、最初からこの曲はヴォカリーズと決めていた。オリジナルがギター曲、ということは、元々歌詞が無い。歌詞が無くてもあの旋律は十分に、十分すぎるほどに語っている。言葉は要らない。ギターが切々と語るように、声という楽器で語ってみたい。生身の楽器である声は、刻々と変化する。声の変化とともに、語られるものも刻々と変わる。
その真逆ともいえる作品がグラナドス作曲「スペイン舞曲第5番-アンダルーサ」だ。こちらは元々ピアノ曲。後年、スペイン語の歌詞が付けられた。この後付けの歌詞がピタリと嵌っている。アンダルシアの地を讃える内容もさることながら、曲のリズムと歌詞のスペイン語が見事に合致、ともに躍動している。この曲最大の魅力、粋で妖しく弾けるリズム。これはヴォカリーズの領分ではない。キレのいい歌詞あればこそ!
スペイン歌曲といってもいろいろな曲がある。その ”いろいろ” が実に ”いろいろ” 。メロディアスでリズミックで、粋で素朴で嬉しくて哀しくて、そして何より人間らしい。9月10日リサイタルでは、”いろいろ” な味を存分にお楽しみいただきたい。
グラナドス本人が弾く「スペイン舞曲第5番アンダルーサ」
右手のメロディーに乗せて「Andalucia~♪」と歌い始めます。