519♪ 鳥の歌   

「リサイタルの〈鳥の歌〉楽しみにしています!」と、メッセージをいただきました。
ありがとうございます。

祈りの曲を集めた第1ステージ。締めは、迷わず〈鳥の歌〉を選んだ。「すべての人を救う神の御子がお生まれになった、と、鳥たちが喜び告げて行く」と歌う、カタルーニャのクリスマス・キャロル。パウ・カザルスのチェロ演奏で名高い。



初めて聴いたのは三十数年前、LPレコードだった。ほんのちょっぴりスペイン語をかじっただけの私は、カタルーニャ語を知らず、歌詞カードを見ても読めない、歌えない。。。その後バルセロナへ渡り、レッスンを受けた時の喜び。「チェロをイメージして歌ってはダメ。メグミはソプラノ。メグミはメグミの〈鳥の歌〉を」という恩師の教え。とある老婦人の前で歌わせていただいた際、その方が涙を浮かべてギュッと抱きしめてくださったこと…。思い出は尽きない。

帰国記念リサイタルから、ずっとアンコールの締めに〈鳥の歌〉を歌ってきた。アンコール、ということは、正式にプログラム入りはしない、ということだ。これではいけない!と、2010年には〈鳥の歌〉づくしのリサイタルを開いた。これまでの歌い手人生の中で、最も数多く演奏した曲だろう。近年は、恩師マヌエル・ガルシア・モランテ編に加えて、ホアキン・ニン編も歌っている。

歌うたびに、歌の姿が違う。ある時は厳かに、ある時はセンチメンタルに、またある時は限りなく優しく…。とてもシンプルな歌なのに、いや、とてもシンプルな歌だからこそ、変幻自在にその在り様が変わる。導かれる世界が変わる。その行き先は、いつも私自身にも分からない。

2019年は、どんな〈鳥の歌〉が舞い降りてくれるのだろう?
一期一会のその時を、ぜひご一緒に!

第27回谷めぐみスペイン歌曲リサイタル『スペイン浪漫』
2019年5月19日(日)午後2時開演
会場:Hakuju Hall
チケット好評発売中!
詳細は、HPをご覧ください⇒『スペイン浪漫Ⅳ
ご来聴をお待ちしています♪






# by Megumi_Tani | 2019-02-17 22:36 | リサイタル | Comments(0)

「声の力を学ぶ」連続講座 第11回   

元NHKアナウンサー、山根基世さんが主宰される連続講座『声の力を学ぶ』第11回を聴講させていただいた。

今回の講師は、神経内科医の岩田誠先生。「声が言葉になるまで-知性の誕生ー」と題し、動物の進化と声と言葉との関係、芸術と声と言葉との関係、知性の誕生と声と言葉との関係etcについて、ユーモアを交えて、たっぷりお話しくださった。

動物の進化史上、自ら子育てをする鳥類、哺乳類に至って、初めて、声が必要になった。ネアンデルタール人は声を言葉に出来ていた。死者を葬ったが副葬品はない。石器を作ったが骨器はない。道具は単純なハンド・アックスで、これが何十万年もの間変わらなかった。特筆すべきは、障害者介護をしていた痕跡があることだ。と、ここで突然、スペインの地名が出て来た。「Sim de Huesos」その名も「骨の穴」!ここで見つかった43万年前のネアンデルタール人の頭蓋には、仲間殺しをした痕があるという。ハァ…史上初の仲間殺しが証明された地がスペインとは(^^;;

障害者介護と仲間殺し、つまり、利他行為と故殺。いずれもヒト族以外の動物にはほとんど見られない行為だ。種の保存という進化の原則からみればマイナス効果を及ぼすこの両行為を、なぜヒト族は行うのか?そこには、声と言葉による情動的コミュニケーションが関与しているのではないか?

言語機能の本質は模倣にある。ヒトの赤ちゃんは生後数日で母親の声を認識し、4か月児になると母親のオウム返しを模倣する。いくつものプロセスを経て、概ね2歳で二語文での発話が可能になる。このような言語能力の発達は描画能力の発達と深い関係がある。言葉の発達とともに描画の対象が広がりをみせ、文章能力の発達とともに状況図を描くことが出来るようになり、やがて、概念的リアリズムを以って空間的位置関係を正確に描くようになる。

では、ヒトはいつから描き始めたのか?と、ここで再びスペイン登場!(故殺の痕跡だけじゃなくてよかった(^^;; )最古とされるのは、4万800年前のエル・カスティ-ジョ洞窟壁画だ。ほかにもスペインのアルタミラエル・カスティ-ジョラ・パシエガ、フランスのショーヴェ等に、貴重な洞窟壁画が残されている。

「洞窟」は日常生活の場ではなかった。ヒトは、非日常の特別な場としての洞窟に入り、力強い大型動物や呪術師と思しきヒトの姿を描いた。絵が描かれた洞窟は音響効果が高く、特にバリトンやバスの声がよく響く。骨製、木製の楽器も作られた。暗い洞窟、仄かな明かり、地鳴りのように低く響く声、素朴な楽器の音色、呪い舞うヒト…。絵画洞窟の中では、総合アートによる「祈り」が行われていた。芸術、すなわち絵画、音楽、舞踏、歌謡等々は、ヒトの脳のみに可能な活動だ。芸術行為とは「祈り」の表現だったのではないか?芸術と医療と祈りはひとつだったのではないか?

最後に「声が言葉になって可能になったこと」として、以下の5つを挙げられた。
1.過去の記憶と未来の展望
2.不可解な現象の説明
3.社会的な関係の分析
4.自己存在理由の認識、確認
5.他者の存在の理由づけ

声というものの原初から芸術、知性の誕生まで!
とても興味深く学ばせていただきました。

★「声の力講座」第1回から第10回のレポートは、こちらのページでご覧になれます。

エル・カスティ-ジョ洞窟壁画



第27回谷めぐみスペイン歌曲リサイタル『スペイン浪漫』
2019年5月19日(日)午後2時開演
会場:Hakuju Hall
チケット好評発売中!
詳細は、HPをご覧ください⇒『スペイン浪漫Ⅳ
ご来聴をお待ちしています♪


# by Megumi_Tani | 2019-02-15 22:51 | 講座/セミナー | Comments(0)

519♪ Falla 反戦の歌   

スペイン浪漫Ⅳ』第1ステージで演奏する「わが子を腕に抱く母たちの祈り」は、1914年、マヌエル・デ・ファリャ38歳の作品だ。愛するわが子を戦争に取らないでほしい、と願う母の心が切々と歌われる。

時は、第一次世界大戦下。カディスに生まれ、マドリードで学んだ後、パリへ渡り、かの地で多くの作曲家と出会い、その才能を認められ、作曲家としての足掛かりを築いたファリャにとって、美しいパリが、更にはヨーロッパ全体が戦渦に巻き込まれることは耐え難い苦しみだったに違いない。戦いを忌み、母親の切なる願いを歌にしたのだろうか。

一方で、この曲においては、オペラ「はかなき人生」「7つのスペイン民謡」「恋は魔術師」「スペインの庭の夜」等々にみなぎるファリャ特有の強烈な個性:仄暗い運命、複雑かつ激しいリズム、鮮やかな色彩感、凝縮された情念etc は、影を潜めている。その音楽は、どこまでもセンチメンタルだ。若きファリャが自分の作品の方向性を模索していた?そんな気もする。

以前この曲を演奏した際、お客様のひとりが「スペイン版 ”君死にたまふことなかれ” ですね」とのご感想をお寄せくださった。愛する弟へ手向ける詩を以って反戦のメッセージを放った与謝野晶子。若き母親が神様に祈り、願う歌に反戦の想いを込めたファリャ。この二人が2つ違いの同世代であることも、思えば興味深い。

ちっぽけな歌い手の私だが、今この歌を、改めて、大切に歌いたいと思う。

第27回谷めぐみスペイン歌曲リサイタル『スペイン浪漫』
2019年5月19日(日)午後2時開演
会場:Hakuju Hall
チケット好評発売中!
詳細は、HPをご覧ください⇒『スペイン浪漫Ⅳ
ご来聴をお待ちしています♪

”熱いFalla”の代表作品「恋は魔術師」


サルーのアリア~オペラ「はかなき人生」より


# by Megumi_Tani | 2019-02-13 22:39 | リサイタル | Comments(0)

519♪2つのアヴェ・マリア   

今回のリサイタルスペイン浪漫Ⅳは、新元号のもとでの開催になる。思い起こせば(すっかり忘れていたのだが)、昭和から平成に変わった、その時も3日めにリサイタル本番を迎えていた。一生のうちに2度も改元間もない時にリサイタルを開かせていただけるとは!それにしても、昭和から歌い始め、平成も30年もあったのだから…。
El tiempo vuela~光陰矢のごとし。なんと長く歌わせていただいて来たことか…。

第1ステージでは、新しい時代の安寧と平和を願い、「祈り」の歌を4曲演奏させていただく。そのうち2曲は「アヴェ・マリア」だ。「アヴェ・マリア」といえば、シューベルト、グノー、カッチーニ、マスカーニ …と、まさに名歌繚乱。ヒーリング・ソングとして一時期ブームにもなった。

今回演奏するトゥリーナとゴメスの「アヴェ・マリア」は、そんなブームからはひっそりと外れ、各々独自の味わいを放っている。トゥリーナの「アヴェ・マリア」は、彼の作品の中でもあまり知られていない秀作だ。遠くからひたひたと近づいてくるピアノの和音、南スペインの気配、えもいわれぬ透明感…。他方、ゴメスの「アヴェ・マリア」は、人の世を生きる者の熱く切ない想い、願いが共感を誘う。

「祈り」を歌う時、Hakuju Hallの空間がふと教会のように感じられる。スペインの祈りの調べをご一緒に体感していただきたい。

第27回谷めぐみスペイン歌曲リサイタル『スペイン浪漫』
2019年5月19日(日)午後2時開演
会場:Hakuju Hall
チケット好評発売中!
詳細は、HPをご覧ください⇒『スペイン浪漫Ⅳ
ご来聴をお待ちしています♪


「Ave Maria」の飾り文字
ジョセップ・マリア・ジュジョール(1879~1949)作
バルセロナ在住の建築家、丹下敏明氏がお写真を提供してくださいました。
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# by Megumi_Tani | 2019-02-10 18:47 | リサイタル | Comments(0)

519♪ピアニスト浦壁信二さん   

リサイタル開催を知った方から、さっそくエール&チケットのお申し込みをいただいています。ありがとうございます。第27回リサイタルスペイン浪漫

今年もピアノは浦壁信二さん。7回目の共演です。初めて組んだのは、東日本大震災の年、2011年のリサイタル でした。11月半ばというのに猛烈な台風が…。寄せられたご感想のひとつ「代々木の森に雨が降りましたね…」は忘れられません。ステージ前半は追悼の祈りの歌を、後半は、この年に生誕110年を迎えたロドリーゴの作品を演奏しました。超ロマンティックな「アランフェス」、典雅な歌曲の数々から愛嬌たっぷりな民謡調の小品まで、ロドリーゴ三昧のプログラム。この本番を収録したのがCD「Plegaria~祈り」です。

今年2019年は、ロドリーゴ没後20年にあたります。ということで、第4ステージには、久しぶりの「アランフェス」ほか、ロドリーゴの珍しい歌曲がプログラム入りしました。

浦壁さん。知る人ぞ知る名手です。確固たるテクニック、深い音楽性に加えて、こちらのインタビューにある通り、「共演」というものを知っている稀有なピアニストでもあります。「アーティストインタビュー”浦壁信二”

昨秋リリースしたCD「スペイン浪漫」を聴いたバルセロナの恩師マヌエル・ガルシア・モランテから「メグミとピアニスト、二人におめでとう!」とメッセージが届きました。名伴奏者として、ビクトリア・デ・ロス・アンへレスと長く共演した師からのこの言葉は、私達にとって何よりの喜び、そして励みです。

素晴らしいピアノ、飄々としたお人柄。共演を重ねるごとにファン急上昇!
歌好き、スペイン好きの方のみならず、ピアノ好きの方も、ぜひお楽しみください。
ご来聴をお待ちしています。

チケットお申込み等、詳細はHPをどうぞ。




# by Megumi_Tani | 2019-02-04 11:49 | リサイタル | Comments(0)