スペイン歌曲って、なんですか?2013
2013年 07月 28日
「スペイン歌曲ってなんですか?」この質問にひと言で答えるのはとても難しい。これまでにも何度か、このテーマについて書きました。 「スペイン歌曲って、なんですか?」
「スペイン歌曲って、スペインの作曲家が作った声楽作品のことです。黄金世紀ってご存知ですか?あの時代の曲からグラナドスやファリャやモンポウの歌曲、サルスエラもオペラもあります。えっ?グラナドスもファリャもモンポウもご存じない?そうですか…。日本ではシューベルトやベートーベンみたいに有名ではありませんものね…。そうそう、『鳥の歌』はご存知ですか?そう、カザルスの鳥の歌です。あの歌、よくカザルス作曲って紹介されていますけど、正しくはカタルーニャ地方のクリスマスの歌なんですよ。歌詞はもちろんカタルーニャ語です。あ、カタルーニャ語と日本で言う普通のスペイン語は違うんですけど…。とにかくスペインには民謡を編曲した作品が沢山あります。それじゃぁ、あなたは民謡歌手ですかって?違います。クラシックの声楽です。イタリア歌曲とかドイツ歌曲とか、ありますよね?そういう声楽のジャンルのひとつがスペイン歌曲です。でも、カチコチに固い曲ばかりじゃありません。『ラ・パロマ』って、ご存じですか?そうそう、あのハバネラの!あんな感じの柔らかい曲も沢山あって…」
と、このあたりまで頑張って説明して、だいたい力尽きます。相手の方は、分かったような分からないような表情…。そして最後は、「とにかく一度、コンサートにお出かけください」ということになります。実際にお聴きいただかなければ、何とも話が始まらない。
吉祥寺ドスガトスの高森シェフが著書『バルセロナの厨房から』で、ちょうど同じことを書いています。「ひと言で言って、スペイン料理って何ですか?」と問われると、ウーンと唸り、心の中で「あなた、日本料理をひと言で何だか言えますか?」と、つい呟いてしまうとか…。わかる!その気持ち(苦笑)
今回のリサイタル『愛しのバルセロナ~Barcelona querida』へは、初めてのお客様が沢山来てくださいました。「スペイン歌曲って、なんですか?」と、内心、大いなる疑問を抱えたまま、会場に足を運ばれた方もきっと大勢いらっしゃることでしょう。
ところが、不思議なものです。あの日は、そんな疑問をポーンと飛び越えたところで、舞台とお客様がひとつになった実感がありました。Hakujuホールが、スペインの小さな教会になり、カタルーニャのひなびた村になり、下町の劇場になり、「あら、スペイン歌曲って、いいわね」と、演奏者もお客様もみんな一緒に頷き合ったような…。コンサートはいつも一期一会。本当に掛け替えのないひとときでした。嬉しいことです。親愛なるバルセロナが、またひとつ大きな宝物を授けてくれました。
Las Ramblas (Kuniko Futamura)

▲ by Megumi_Tani | 2013-07-28 00:42 | スペイン歌曲 | Comments(0)