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519♪ グラナドス「ちいさな歌」   

3月24日は、エンリケ・グラナドスの命日だ。
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103年前の今日3月24日、第一次世界大戦のさなか、乗船していた船がドイツ潜水艇の攻撃を受け、愛する妻とともに英仏海峡に消えたグラナドス。人生最高傑作のオペラ『ゴイエスカス』ニューヨーク初演に立ち会い、その大成功を見届け、安堵と希望を胸に故郷バルセロナへ帰る途中だった。乗船した船は当初予約していた便ではなかった。ニューヨークでの成功を祝う行事が続いたために帰国を延期。予約を変更していたのだ。もしも予定通りの船に乗っていれば…。

グラナドス夫妻が乗っていた船サセックス号は全体が沈没したわけではない。片側は大きく破壊されたが、残った部分もある。夫妻の居室は残った部分にあったため、持ち物等はそのまま残されていた。しかし二人はその時、たまたま破壊され沈んだ側にいたらしい。船内を散歩でもしていたのだろうか。海の景色を眺めていたのだろうか。もしも二人が外に出ず、部屋でくつろいでいたなら…。

そんなドラマチックなグラナドスの生涯は、昨年スペインで映画にもなった。


没後100年にあたる2016年、生誕150年にあたる2017年、グラナドスに捧げるリサイタルを開かせていただけたことをとても嬉しく思う。バルセロナでお目にかかった末娘ナタリアさんも天国で喜んでくださったかな、と思うと、胸が熱くなる。

拙リサイタルのタイトルとしてお馴染みになった「スペイン浪漫」のインスピレーションを与えてくれたのもグラナドスだった。自他ともに認める超ロマンティスト・グラナドス。「ロマン」は、しばしば「浪漫」と記される。この浪漫の当て字を考えたのは夏目漱石だそうな。その夏目漱石とグラナドスは同じ年に生まれ、同じ年に亡くなっていた!
この大発見に歴史好きの私はドキドキ!「スペイン浪漫」というタイトルがピーンと閃いたのだ。

スーパーピアニストであり、即興の名手でもあったグラナドスの歌曲作品は、ピアノパートの難易度が極めて高い。かなり自由に、いわば即興風に弾くことを想定しているのだろうな、と思わせる譜面によくお目にかかる。しかも、人生の絶頂期に突然命を奪われたのだから、自分亡きあとを考えて楽譜を整理する、などという作業は行っていない。一見書き散らした?あるいは書きかけ?のような作品もある。演奏者は、グラナドスの意図はするところはこうかな?ああかな?と手探りで、マエストロの世界を探索、逍遥することになる。

歌曲集として「Tonadillas~昔風の粋な歌曲集」「Amatorias~愛の歌曲集」が有名だが、そのまにまに、グラナドスならではの翳りを帯びた、忘れがたい佳曲が埋もれている。今年はそんな作品群の中から「ちいさな歌」を演奏する。文字通りの小曲、カタルーニャ語による歌詞は子守り歌の内容だが、歌とピアノが描く音楽は、どこか世紀末を感じさせるまさに大人の子守り歌。静かに、秘めやかに歌ってみたい。


第27回谷めぐみスペイン歌曲リサイタル『スペイン浪漫Ⅳ』
2019年5月19日(日)午後2時開演
会場:Hakuju Hall
チケット好評発売中!
プログラム、曲目紹介、チケットご購入等々、
詳細は、HPをご覧ください⇒『スペイン浪漫Ⅳ
ご来聴をお待ちしています♪



グラナドス本人が弾く「スペイン舞曲第2番オリエンタル」

グラナドスと大の友人だったカザルスが弾く「スペイン舞曲第5番アンダルーサ」



by Megumi_Tani | 2019-03-24 20:40 | リサイタル | Comments(0)

519♪ わが心のアランフェス~ヴォカリーズの魅力   

ロドリーゴ没後20年の今年。久しぶりに「アランフェス」を歌う。

昔からヴォカリーズに心惹かれて来た。大学時代はラフマニノフのヴォカリーズ、後に、ヴィラ・ロボスのブラジル風バッハ第5番のアリア。そしてある時、アランフェスのあの哀しくも美しいテーマをヴォカリーズで歌おう!と、思った。

声楽と器楽との違いは、歌詞があること。旋律と伴奏、そこに歌詞が加わり何かを表現する。歌詞を歌い語る、歌詞の意味を伝える。これはとても重要な要素だ。そのために、外国語で歌う際、歌い手はせっせと語学を学び、繰り返し練習し、演奏会ではお客様に歌詞大意訳をお渡しし、MCでその内容を解説し…と、出来る限りの努力をする。

同時に、声は、ひとつの楽器、としても捉えられる。声そのものが何かを語り、表現している。楽器としての声を言葉の束縛から解放し、自由に鳴りたいように鳴らせてあげる、それもまた歌い手の役目?醍醐味のような気がする。

アランフェス協奏曲の第2楽章は、その旋律がすでに物語だ。内戦後、荒廃したスペインの人々の心を癒した、とか、流産したロドリーゴ夫人の心を慰めた、とか、様々な添え書きがあるが、この作品のすごさは、そんな一切の解説も解釈も必要としないことだろう。演奏する者、聴く者に深く染み入り、ひとりひとりの心を見えない世界に飛翔させる。元々がギター曲なのだから歌詞は無い。旋律だけで何かを語っている。ならば声も声だけで何かを語れるはず。しかも雄弁に。そんな信念のもと、敢えて歌詞を付けず、ずっとヴォカリーズで歌ってきた。

2019年のヴォカリーズによる「わが心のアランフェス」が、どんな姿を見せるのか。
私自身も楽しみです(^^)


第27回谷めぐみスペイン歌曲リサイタル『スペイン浪漫Ⅳ』
2019年5月19日(日)午後2時開演
会場:Hakuju Hall
チケット好評発売中!
プログラム、曲目紹介、チケットご購入等々、
詳細は、HPをご覧ください⇒『スペイン浪漫Ⅳ
ご来聴をお待ちしています♪









by Megumi_Tani | 2019-03-22 23:04 | リサイタル | Comments(0)

『天地悠々』兜太・俳句の一本道   

金子兜太さん。このお名前を久しぶりに聞いた。私は昔からラジオ党だ(今は、ラジコなる便利なものも出来た)。スペインから帰って間もない頃、何かの番組に兜太さんがレギュラー出演されていた。俳句の番組ではなかったと思う。その時々の話題についてアナウンサー氏と自由にお喋りされるのだが、その悠然たる話しぶり、時に鋭く時に軽妙に本質をズバリとつく語り口に惹かれ、毎週楽しみに聞いていた。番組終了時、とても寂しい気がしたことを覚えている。

兜太さんは昨年2月、98歳で天に還られた。2012年から急逝される直前まで、兜太さんを取材、撮影したドキュメンタリー映画『天地悠々』が公開される。監督・脚本は、NHKディレクター、プロデューサーとしてあの伝説の『シルクロード』をはじめ数々の名番組を制作された河邑厚徳氏。語りは山根基世さん。

上映日:3/22(金)  4/17(水)  5/29(水) 13:30~16:30
映画終了後には兜太さん縁の方々のお話も聞ける、貴重な機会です。
チケットは【ぴあ】にて発売中!
詳細は、HPをご覧ください。 天地悠々 兜太・俳句の一本道

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第27回谷めぐみスペイン歌曲リサイタル『スペイン浪漫Ⅳ』
2019年5月19日(日)午後2時開演
会場:Hakuju Hall
チケット好評発売中!
プログラム、曲目紹介、チケットご購入等々、
詳細は、HPをご覧ください⇒『スペイン浪漫Ⅳ
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by Megumi_Tani | 2019-03-18 11:14 | エトセトラ | Comments(0)

「声の力を学ぶ」連続講座 第12回   

元NHKアナウンサー、山根基世さんが主宰される連続講座『声の力を学ぶ』第12回を聴講させていただいた。

今回の講師は、京都大学大学院 人間・環境学研究科教授、生物言語学・進化言語学者の藤田耕司先生。「言語と声と音楽:その進化的関係を探る」と題し、人類だけがもつ能力といわれる言語と音楽について、他の動物との比較、研究を交えながら、お話しくださった。

言語とは、現生人類だけが持つ普遍的な形質である。言語は単一の能力ではなく、複数の下位機能の結合として成立する複合的能力だ。言語と音楽との共通点は、人類固有かつ普遍的であること、そして階層構造をもつことである。

動物ゲンゴ(あえてカタカナ)と人間言語の比較に関しては、チンパンジー、イルカ、プレリードッグ、鳥、ミツバチ、ベルベットモンキー等々の興味深い写真、動画をご紹介くださった。踊る大捜査線ならぬ踊るミツバチ君のダンス言語には、「今、ここ」に限定されない超越性があり、これは人間言語に近いものだそうだ。プレリードッグがもつ4種類の警戒コールには、対象物の大きさ、形、色の情報に加えて品詞らしきものも含まれているという。鳥は、家畜化による淘汰圧の緩和によって、さえずりに文法をもつようになった。つまり人間に飼われるようになって住居と食料の心配が無くなり、生きることが楽になった結果、さえずりに文法をもつ余裕が出来た、というわけだ。リズムに乗って歌を歌う小鳥ちゃん、音楽に合わせてチャーミングに踊る小鳥ちゃんの動画に、会場から歓声!

しかし、動物ゲンゴが依存しているのは(せいぜい)語順である。他方、人間言語は、階層構造に依存している。人間だけが階層的文法をもち、階層的言語構造は人間の認知作用を司る。汎用階層構造処理能力が、運動、言語、音楽に分かれたのではないか。動物ゲンゴでは命題内容と情動負荷が未分離だが、人間言語では情動と命題が分離した。階層文法をもつ言語が命題内容を、音楽が情動を担うようになった。音声は、階層構造ゆえに生じる曖昧性を解消するために重要な役割を果たしている。

現代の言語コミュニケーションにおける問題点として、情動や共感への過度の依存が挙げられる。人間は領域横断的なあらゆるものを組み合わせる豊かな想像力と創造性を唯一の武器として生き抜いてきた。言語も音楽もその組み合わせによる産物である。

と、極めて文系頭の私が、極めて大雑把に、極めて簡略に纏めさせていただいた(^^;;  
お読みになってお分かりの通り、漢字熟語続出!素人には触れ難い最先端の研究の端っこの端っこをほんのちょっぴり垣間見た思いがした。

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さて、昨年4月にスタートした「声の力」連続講座は、今回で丸一年のカリキュラム終了。在って当然、しかしよく考えると不思議な存在である「声」について、豪華、多彩かつ個性豊かな講師の先生達が様々な角度から熱く語ってくださった。山根基世さんの魅力的なお人柄、絶妙のリード、遠方からも駆けつけていらっしゃる熱心な受講生さん達…。会場の雰囲気も温かい。おかげ様で、私も大いに刺激を受け、楽しく学ばせていただいた。
誠に僭越ながら、第4回には講師の末席を汚させていただいたことにも感謝したい。ありがとうございました。

★今年度の全講座レポートは、こちらのページでご覧になれます。

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第27回谷めぐみスペイン歌曲リサイタル『スペイン浪漫Ⅳ』
2019年5月19日(日)午後2時開演
会場:Hakuju Hall
チケット好評発売中!
プログラム、曲目紹介、チケットご購入等々、
詳細は、HPをご覧ください⇒『スペイン浪漫Ⅳ
ご来聴をお待ちしています♪



by Megumi_Tani | 2019-03-15 22:29 | 講座/セミナー | Comments(0)

519♪【ぴあクラシック】春号に掲載されました   

【ぴあクラシック】春号、記念すべき第50号!に5月19日リサイタルが紹介されました。
オペラ研究家、岸純信先生が、身に余る光栄なお言葉を寄せてくださっています。
詳細は、HPをどうぞ。スペイン浪漫Ⅳ
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第27回谷めぐみスペイン歌曲リサイタル『スペイン浪漫Ⅳ』
2019年5月19日(日)午後2時開演
会場:Hakuju Hall
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詳細は、HPをご覧ください⇒『スペイン浪漫Ⅳ
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by Megumi_Tani | 2019-03-09 22:29 | リサイタル | Comments(0)

519♪ 頼もしき兄貴分アルベニス   

19世紀半ばに艶やかな花を咲かせたハバネラだったが、前々回ご紹介した通り、ハバネラはスペイン生粋のリズムではない。にもかかわらず、「異国スペインの音楽」として、スペイン国内よりも国外で人気があった。ハバネラだけではない。オペラ『カルメン』のビゼーを筆頭に、リスト、ラロ、シャブリエ、グリンカら多くの外国の音楽家が「異国スペイン」をテーマに作品を発表した。

では、その肝心のスペイン国内の音楽事情は?というと、未だこれといった顕著な動きがみられない。一時代前の壮大な音楽劇から庶民の楽しみに姿を変えた歌芝居サルスエラは大流行していたが、スペインならではの芸術としての音楽は生まれていなかった。

そこに登場したのがイサーク・アルベニスだ。カタルーニャ地方カンプロドンに生まれ、幼い頃からピアノの才能を発揮。ドイツ、ベルギー、パリなどで学び、各地で演奏して腕を磨き、ス-パーピアニストとして大活躍した。

そんなアルベニスが、ふと考えた。「スペインの音楽はこのままでいいのだろうか?」「我々の音楽、スペイン音楽とは何だろう?」…。豊かな才能に恵まれ、若い頃から広く他国の音楽に触れ、それらを素直に、謙虚に、しかも深く本質的に学んだアルベニスだからこそ抱けた問題意識だったのではないか。スペインの音楽について研究を続けていた故郷カタルーニャの先輩、教師でもある作曲家フェリペ・ペドレルとの出会いにも影響を受け、アルベニスは自らが目指す「スペイン音楽」を模索し、その道を切り開いて行く。
49歳で亡くなるまで、人気ピアニスト、音楽教授として活躍しながら、名高い組曲『イベリア』を始め、数多くの作品を発表した。

アルベニスと出会った人は皆、彼の人柄に魅了されたという。少年時代の数々の冒険エピソードはどうやら少々”盛られた”話も含まれているようだが、そんな逸話がいかにも似合う、スケールの大きな味のある人物だったらしい。温かく、懐が深く、面倒見がよくて太っ腹。困っている友のためとあらば一肌脱ぐことを厭わない。ユーモアに溢れ、友人達を愛し、常に故国スペインを想いつづけた。口ひげを蓄え、堂々と恰幅のよいお姿だが、実は、繊細で寂しがり屋でもあったのでは、と、勝手に想像している。アルベニスとの友情から、あるいはアルベニスの薫陶を受け、あるいはアルベニスの援助を受け励まされ…グラナドス、ファリャ、トゥリーナら後輩達が「スペインならではの芸術音楽」を築いていった。自らが演奏家であり作曲家であり、しかも仲間達のために尽力、奔走する、そんなアルベニスの存在無くして、スペイン音楽の次代の扉が開かれることはなかっただろう。

残念ながら、アルベニスの歌曲作品はあまり多く残されていない。しかし、あたかも歌曲のごとく定着し、演奏される機会が多いのが「グラナダ」だ。元々は、ピアノ作品『スペイン組曲第1集』の中の第1曲。器楽曲の名旋律に歌詞が後付けされた作品は複数あるが、「グラナダ」はその中でも傑作のひとつだ。「A~~y!」と始まるフレーズは、グラナダを、故国スペインを愛したアルベニスその人の深い溜め息のようにも感じられる。ピアノと歌との掛け合いの妙もお楽しみに!

第27回谷めぐみスペイン歌曲リサイタル『スペイン浪漫Ⅳ』
2019年5月19日(日)午後2時開演
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by Megumi_Tani | 2019-03-08 23:06 | リサイタル | Comments(0)

519♪ ラ・パロマ   

スペイン浪漫Ⅳ』第2ステージ「ハバネラの時代」を締めくくるのは、イラディエールの最高傑作「La paloma~ラ・パロマ」。既述の「エル・アレグリート」のような添え書きは一切不要。19世紀半ばからずっと世界で愛されているハバネラの名曲だ。

ハバナの港を去る船乗りが、たったひとり見送りに来た娘に「俺を忘れないでおくれ」と歌う別れ歌。しかしその曲調のなんと長閑で愛おしいことよ!ゆったりと揺れるリズム:ハバネラに導かれ、21世紀に生きる私達の心は、いつのまにかセピア色に霞む古き佳き時代、19世紀に旅をする。ハバナよ、ハバネラよ、お前を忘れはしない、と歌の主人公の船乗りよろしく、思わず呟いてしまう。。。

クラシックとポピュラー、その境界を自由自在に行き来する何ともチャーミングな歌。
世界的大ヒット曲らしく、歌のほかにも様々な楽器による演奏で愛されてきた。






「光と影」「生と死」「黒と赤」…凛とした対照の妙が魅力のスペイン。
第1ステージから第2ステージは、真摯な祈りから熱く粋な恋歌へ。「聖と俗」のコントラストをお楽しみいただきたい。

第27回谷めぐみスペイン歌曲リサイタル『スペイン浪漫Ⅳ』
2019年5月19日(日)午後2時開演
会場:Hakuju Hall
チケット好評発売中!
詳細は、HPをご覧ください⇒『スペイン浪漫Ⅳ
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by Megumi_Tani | 2019-03-03 21:31 | リサイタル | Comments(0)