人気ブログランキング |

タグ:アルベニス ( 7 ) タグの人気記事   

519♪ 頼もしき兄貴分アルベニス   

19世紀半ばに艶やかな花を咲かせたハバネラだったが、前々回ご紹介した通り、ハバネラはスペイン生粋のリズムではない。にもかかわらず、「異国スペインの音楽」として、スペイン国内よりも国外で人気があった。ハバネラだけではない。オペラ『カルメン』のビゼーを筆頭に、リスト、ラロ、シャブリエ、グリンカら多くの外国の音楽家が「異国スペイン」をテーマに作品を発表した。

では、その肝心のスペイン国内の音楽事情は?というと、未だこれといった顕著な動きがみられない。一時代前の壮大な音楽劇から庶民の楽しみに姿を変えた歌芝居サルスエラは大流行していたが、スペインならではの芸術としての音楽は生まれていなかった。

そこに登場したのがイサーク・アルベニスだ。カタルーニャ地方カンプロドンに生まれ、幼い頃からピアノの才能を発揮。ドイツ、ベルギー、パリなどで学び、各地で演奏して腕を磨き、ス-パーピアニストとして大活躍した。

そんなアルベニスが、ふと考えた。「スペインの音楽はこのままでいいのだろうか?」「我々の音楽、スペイン音楽とは何だろう?」…。豊かな才能に恵まれ、若い頃から広く他国の音楽に触れ、それらを素直に、謙虚に、しかも深く本質的に学んだアルベニスだからこそ抱けた問題意識だったのではないか。スペインの音楽について研究を続けていた故郷カタルーニャの先輩、教師でもある作曲家フェリペ・ペドレルとの出会いにも影響を受け、アルベニスは自らが目指す「スペイン音楽」を模索し、その道を切り開いて行く。
49歳で亡くなるまで、人気ピアニスト、音楽教授として活躍しながら、名高い組曲『イベリア』を始め、数多くの作品を発表した。

アルベニスと出会った人は皆、彼の人柄に魅了されたという。少年時代の数々の冒険エピソードはどうやら少々”盛られた”話も含まれているようだが、そんな逸話がいかにも似合う、スケールの大きな味のある人物だったらしい。温かく、懐が深く、面倒見がよくて太っ腹。困っている友のためとあらば一肌脱ぐことを厭わない。ユーモアに溢れ、友人達を愛し、常に故国スペインを想いつづけた。口ひげを蓄え、堂々と恰幅のよいお姿だが、実は、繊細で寂しがり屋でもあったのでは、と、勝手に想像している。アルベニスとの友情から、あるいはアルベニスの薫陶を受け、あるいはアルベニスの援助を受け励まされ…グラナドス、ファリャ、トゥリーナら後輩達が「スペインならではの芸術音楽」を築いていった。自らが演奏家であり作曲家であり、しかも仲間達のために尽力、奔走する、そんなアルベニスの存在無くして、スペイン音楽の次代の扉が開かれることはなかっただろう。

残念ながら、アルベニスの歌曲作品はあまり多く残されていない。しかし、あたかも歌曲のごとく定着し、演奏される機会が多いのが「グラナダ」だ。元々は、ピアノ作品『スペイン組曲第1集』の中の第1曲。器楽曲の名旋律に歌詞が後付けされた作品は複数あるが、「グラナダ」はその中でも傑作のひとつだ。「A~~y!」と始まるフレーズは、グラナダを、故国スペインを愛したアルベニスその人の深い溜め息のようにも感じられる。ピアノと歌との掛け合いの妙もお楽しみに!

第27回谷めぐみスペイン歌曲リサイタル『スペイン浪漫Ⅳ』
2019年5月19日(日)午後2時開演
会場:Hakuju Hall
チケット好評発売中!
プログラム、曲目紹介、チケットご購入等々、
詳細は、HPをご覧ください⇒『スペイン浪漫Ⅳ
ご来聴をお待ちしています♪






by Megumi_Tani | 2019-03-08 23:06 | リサイタル | Comments(0)

5月18日の粋?   

セルバンテス文化センター春期講座『“アマポーラ”をスペイン語で歌おう♪』第1回目が終了しました。受講生全員が昨年のクラスやセミナーからのリピーターさん。スペイン語の読み方、歌詞の載せ方、こぶしのコツetc。皆さん、それはそれは熱心に取り組まれ、あっという間に90分が過ぎました。2回目は今週19日。楽しみにしています♪
《セルバンテス文化センター春期講座》

講座会場のオーディトリアムでは、前夜、スペインの有名な歌手ルス・カサルのトーク&ミニ・コンサートが開かれていました。アントニオ・ヒル・デ=カラスコ館長のインタビューに答える形での長時間に亘るトーク、続いて〈Historia de un amor〉〈Negra sombra〉など4曲を熱唱。客席は満員で、最後はスタンディング・オベーションの盛り上がり。そのルス・カサルと同じ舞台で「アマポ~ラ♪アマポ~ラ♪」と、受講生さんも熱唱!何とも贅沢なクラスです。

e0172134_21573880.jpg

〈アマポーラ〉の作曲者ホセ・マリア・ガルシア・ラカージェは、1860年、カディスの生まれ。1860年といえば、イサーク・アルベニスが生まれた年です。ラカージェとアルベニスが同じ年齢だったとは!故国スペインの音楽を愛し、後輩達を可愛がり、誰からも兄のように慕われたアルベニス。彼は《5月》の作曲家です。1860529日に生まれ、1909518日に天に召されているのです。

さて今日、出先でふと手にした週刊誌。表紙に目が留まりました。和田誠さんによるスペインのタイルの絵。描かれている文字は
A Izaac Albeniz que vivió en la Alhambra Primavera 1882

1882年春、アルハンブラに暮らしたイサーク・アルベニスに寄せて
あら!こんな題材を表紙に使ってくれるなんて!と、それだけでもニンマリだったのですが、そこでまた、ふと気がつきました。これは5月18日号。つまり、上述の通り、ちょうどアルベニスの命日の号なのです。単なる偶然?いや、もしかしてもしかするとアルベニスへの敬意?文春さん、そこまで意図していらしたのかしら?もしかしてもしかしてそうだとすれば、粋。






by Megumi_Tani | 2017-05-14 22:24 | スペイン音楽 | Comments(0)

天使の応援?   

秋リサイタルに向けて、選曲も佳境。今年のタイトルは《スペイン浪漫Ⅲ~E.エンリケ・グラナドス生誕150年、F.モンポウ没後30年に捧ぐ》。浮かび上がるイメージ、ストーリー、伝えたいこと、声、ピアノの響き…。それらを、どんな形でこの世に具現化するか。わずか2時間のあの時空を目指して、エネルギーのすべてを注ぎ込む。楽しいけれど大変、大変だけれど楽しい作業だ。

どんなに好きでも、人間、たまにはくたびれる(笑)。そんな時、いつも心に浮かぶ光景がある。1986年夏、アルベニス生誕の町カンプロドンで聴いたビクトリア・デ・ロス・アンへレスと師マヌエル・ガルシア・モランテの演奏会、そのリハーサルだ。
e0172134_024172.jpg

バルセロナから車で2時間ほどのところにあるカタルーニャの鄙びた町カンプロドン。中世の面影をそのまま残す町の修道院で演奏会は開かれた。私は弟子特権?で、二人のリハーサルを最初から最後まで、ずっと聴かせてもらった。客席には私ひとり。美しく、贅沢な時間だった。スペインでも日本でも二人の演奏会を何度も聴いたが、このリハーサルは格別で、あたかも一幅の絵のごとく鮮明に心に焼き付いている。この時に聴いたアルベニスの『Barcarola』は、後に私の大切なレパートリーになった。Youtubeでも見つからない、ほぼ無名の曲だが、歌えば、心は一瞬であのカンプロドンに飛んで行く。歌の原点に立ち返らせてくれる。 『ビクトリア・デ・ロス・アンへレスの想い出

ここ数日ボンヤリとそんなことを考えていたら、なんと!FBで、バルセロナ在住の建築家丹下敏明氏が自ら撮影したカンプロドンの写真をアップしてくださった。嬉しい偶然!
e0172134_00752.jpg

e0172134_003538.jpg

e0172134_0059100.jpg

シエスタの時間にホテルを抜け出し、町を歩き回ったことを思い出す。懐かしい…。こういう時は、ちょっと厚かましいけれど、天使(Àngel ~アンヘル)が空の上から応援?してくれている気がする。ありがとうございます。頑張ろうっと!

カタルーニャ音楽堂での記念リサイタル。1:01:30あたりから『Barcarola』です。

by Megumi_Tani | 2017-03-20 00:04 | スペイン歌曲 | Comments(0)

アルベニス 『舟歌』   

ある時、突然「出会う」演奏がある。一瞬で心の奥に届き、深く刻まれ、その鮮明な記憶は消えることがない。何かの時、何かの原点になり、何かを示してくれる。

初めてその経験をしたのは、マリア・カラスのリュウを聴いた時だ。学生時代は、何だかそら恐ろしい声のような気がして、マリア・カラスが苦手だった。卒業後、たまたま出かけたレコード屋の輸入盤フェアで、彼女のLP『隠れた名アリア集』に遭遇。ふと気が向いて購入した。帰宅後、プレーヤーに針を下し、リュウのアリアが聴こえて来た時の衝撃。まるで雷に打たれたような、と書けば、いかにも大袈裟だが、まさにそんな感じだった。マリア・カラスはすごい…。私の中のマリア・カラス観は一聴でひっくり返ってしまった。



こういう時、そのひっくり返った理由を言葉で表現するのは難しい。言葉を越えた何かが魂に働きかけてくれた、とでもいうのだろうか。あたかも天からもたらされた滴のように…。

次に思い浮かぶのが、アルベニスの『舟歌』だ。30年前の夏、私はバルセロナ市から招聘を受け、音楽祭グレックに出演、師マヌエル・ガルシア・モランテの伴奏でリサイタルを開いた。本番が無事終了。数日後、ビクトリア・デ・ロス・アンへレスと師の演奏会を聴きに、アルベニス生誕の町、カンプロドンへ出かけることになった。急なことで、ホテルは満室。従業員用の部屋を無理矢理空けてもらい、泊まった記憶がある。

弟子特権?でリハーサルからずっと聴かせてもらった。ビクトリアの歌と師のピアノ、二人の信頼から生まれる音楽。えもいわれぬ美しい時間だった。そこで、アルベニス『舟歌』を初めて聴いた。何と穏やかな、何と優しい響き…。それから十年以上が過ぎて、偶然日本でその楽譜に遭遇した時の喜び!その後また様々なプロセスを経て、初めてリサイタルで演奏した時の嬉しさ!この曲を歌えば、いつも、あのカンプロドンが蘇る。
e0172134_22564885.jpg

「9月のリサイタルで『舟歌』を歌います。三十年前にカンプロドンで聴いた二人の演奏が今も心に深く刻まれています」と、師にメッセージを送った。「そんなに時間が流れたとは信じられないね。大成功を祈っているよ」と返信が届いた。音楽は時空を越えている。

『舟歌』も、ほとんど誰も歌わない曲。同じアルベニスの『カディス』といい、マラッツ『スペインのセレナータ』といい、カザルス『さようなら…!』といい、今年のプログラムには珍しい曲が多い。マニアック?いえいえ、隠れた名曲ばかりです。お楽しみに!

第25回リサイタルスペイン浪漫Ⅱ~エンリケ・グラナドス没後100年に捧ぐ
ご来聴をお待ちしています060.gif

カタルーニャ音楽堂での二人の演奏会 1分20秒あたりから『舟歌』です。

by Megumi_Tani | 2016-08-28 23:02 | リサイタル | Comments(0)

アルベニス 『カディス』   

幼い頃からスーパー・ピアニストとして世界を股にかけて活躍したアルベニス。後年は、スペインを代表する作曲家として、色彩感豊かな魅力溢れる作品を数多く発表した。故国の音楽を愛し、その発展を願い、郷友、後輩達への助言、援助を惜しまず、当時のスペインの音楽家達の兄貴分のような存在だった。晩年、重い病に罹った折は、グラナドス、カザルスら、彼を慕う“弟分たち”が南仏の保養地へ見舞いに訪れている。奇しくもグラナドスと同じ48歳でこの世を去った。

アルベニスの作品は圧倒的にピアノ曲が多い。おそらく日本で最も有名な「グラナダ」もオリジナルはピアノ曲だ。しかしこの魅惑の旋律をピアノだけに独占させるのはもったいない!?とばかりに、ギター編曲版が登場。そして後に、歌詞がはめ込まれ、歌曲にまでなった。今回リサイタルで歌う『カディス』も同様だ。オリジナルのピアノ曲がギター曲にも歌曲にも姿を変えた。後付けの歌詞では、魅力的なカディス娘への熱い恋心が歌われている。独特のゆったり弾むリズムが何とも心地よい。

時にスリルに満ち、時に熱く心煽るスペイン音楽のなかで、アルベニスの音楽が鳴るとホッとする。信頼に満ちた明るさ、豊かで穏やかなロマンティシズム…。善良で太っ腹、人情に厚く、皆に慕われたというお人柄が偲ばれる。

ピアノ版『カディス』


のどかな映像とともに…ギター版『カディス』


グラナドス『スペイン舞曲第5番アンダルーサ』、マラッツ『スペインのセレナータ』、そしてアルベニス『カディス』と、今回はアレンジものが盛り沢山だ。こうして自由にジャンルを行き来する作品が多いことも、スペイン物の魅力のひとつかもしれない。とはいえ、歌曲版『スペインのセレナータ』『カディス』は、ほとんど演奏される機会がありません。どうぞお聴き逃しなく。

第25回リサイタルスペイン浪漫Ⅱ~エンリケ・グラナドス没後100年に捧ぐ
ご来聴をお待ちしています060.gif
e0172134_05439.jpg

by Megumi_Tani | 2016-08-25 22:23 | リサイタル | Comments(0)

イサーク・アルベニス百周年記念(その2)   

アルベニス没後百年記念イベント、22日は、カルロス・サウラ監督作品『イベリア』(2005)がスペイン大使館で上映された。
パンフレットには「この映画はアルベニスの音楽とフラメンコ、スペインのクラシック・ダンス、コンテンポラリー・ダンスの融合を集結したもの」とある。ポップ・クラシック、ジャズ、フラメンコetc、様々なスタイルにアレンジされたアルベニスの曲にのせて、男女の激しくも繊細で美しいダンス映像が繰り広げられた。

カルロス・サウラの名前は『カルメン』(1983)で初めて知った。今は亡きアントニオ・ガデスが舞い、パコ・デ・ルシアがギターを奏でる贅沢な作品。スペイン狂ホヤホヤの私は夢中になり、映画館に何度も足を運んだものだ。

「熱くて強い」これがスペインの大きな魅力だとあらためて感じた。泣いても笑っても、もちろん!怒っても、いつも強い。確固たる凛々しさがある。それでいて、実はその奥には、深い優しさ、繊細さが秘められている。同じ種類の魂をもつ者同士なら、一瞬で通じ合えるような…。

しかし、この強さは、やはり尋常ではないかもしれない。以前、リサイタルのアンケートにこんな記述があった。「初めてスペインの歌を聴き、感動しました。でも、あまりの情熱に怖くなりました。あんなに激しい思いをぶつけられたら、僕はどうすればいいのか分かりません」……光栄である。

by Megumi_Tani | 2009-05-24 07:50 | スペイン音楽 | Comments(0)

イサーク・アルベニス百周年記念   

今年は、スペインの作曲家イサーク・アルベニスの没後百年にあたる。昨夜は、「音楽史の中のイサーク・アルベニス-その独創性と重要性」と題して、濱田滋郎先生の講演会が開かれた。会場はスペイン大使館。六本木にあるモダンな建物である。2006年、この同じホールで歌わせていただく機会があった。私とピアニストにとっては懐かしい場所でもある。

アルベニスは、1860年5月、カタルーニャ地方北部・カンプロドンに生まれた。4歳にしてピアノの公開演奏を行うなど、早くから天才的なピアノの才能を発揮。演奏活動の一方で、民族主義的作品から、アカデミックあるいはサロン風のものまで、ピアノ曲を中心に多数の作品を発表。バルセロナ、マドリード、ロンドン、パリ・・・各地で活躍した後、1909年5月、病によりこの世を去った。

彼の愛すべき温かい人柄、他の作曲家たちとの交流、作品にまつわるエピソードetc、多彩な内容が濱田先生ならではの切り口、語り口で紹介され、2時間の講演はアッという間に終了。明解な通訳がまた、心地よかった。

濱田先生の楽しそうな様子。本当にスペイン音楽がお好きなのだなぁ…と、こちらまで嬉しくなる。私がスペインの歌と出会った時、すでに先生はスペイン音楽研究の大家だった。我が身を振り返れば、あまり陽のあたらない分野をひとすじに歩み続けるには、語れぬご苦労が多々おありだったことが十分察せられる。しかしお目にかかってお話すれば、そんなことはどこ吹く風、スペインへの素朴な情熱がただ熱くひたすらに燃えている、そんな先生だ。私自身はもちろん、ジャンルを越えて、スペイン音楽に関わっている者は皆、濱田先生の存在に励まされ、勇気をいただいてきたと思う。いつまでもお元気で!!と、あらためて願った夜だった。

百周年に敬意を表し、秋のリサイタルでは、アルベニス作品の中からスペイン色鮮やかな二曲を歌う。

by Megumi_Tani | 2009-05-20 19:34 | スペイン音楽 | Comments(0)