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タグ:ヴィクトリア・デ・ロス・アンへレス ( 5 ) タグの人気記事   

カーネーション~Clavelitos   

5月の第二日曜日、今日は「母の日」です。19世紀アメリカで始まったこの習慣が日本に伝えられたのは大正時代といわれています。外国がまだ遠い「外つ国(とつくに)」だった時代、今のようにリアルタイムで自由に情報を獲得できるわけではなかった時代。にもかかわらず、「大正浪漫」という言葉に象徴されるこの時代の文化の華やかさは見事なものです。当時の人々の進取の気性と柔軟かつ奔放な適応能力に、しばしば驚かされます。

カーネーションは地中海沿岸原産の花です。母の日とカーネーションとの関係については諸説あるようですが、その一つは、十字架にかけられたイエスを見送ったマリアの目から涙が溢れた、その涙の跡から生まれた花がカーネーションだったというもの。母の心、母の愛を象徴する花とされています。

さて、そのカーネーション~スペイン語でclavel(クラベル)~は、スペインの国花です。Clavelに愛情をたっぷりこめた呼び名「Clavelitos」は、タイトルもそのままに、トゥーナ(スペインの大学生による音楽隊)が演奏する有名な曲になっています。


こちらはサンティアゴ・デ・コンポステーラ大学のトゥーナが歌う「Clavelitos」


同じ曲を「小さなウグイス」と呼ばれたホセリートが歌います。
何か訳あり?の映画の一場面のようです。


往年のテノール、アルフレード・クラウス「Clavelitos」


スペインには、サルスエラの作曲家バルベルデの「Clavelitos」という作品もあります。
タイトルは同じですが、こちらはエレガントでチャーミング!
ビクトリア・デ・ロス・アンへレスの名唱でお楽しみください。

by Megumi_Tani | 2015-05-10 19:22 | スペイン音楽 | Comments(0)

ビクトリア・デ・ロス・アンへレス没後10周年 (2)   

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没後十周年を迎え、様々な動画がアップされています。先日のブログで、彼女の驚異的なレパートリーの広さをご紹介しました。  『ビクトリア・デ・ロス・アンへレス没後十年(1)

こちらは、人間味あふれる、しなやかなバッハです。
(左上の白文字をクリック ⇒ 画面が大きくなります)


歌&英語でのインタビュー


こんな記事もあります。
Diez años sin la soprano Victoria de los Ángeles
El Arte de Vivir El Flamenco
没後十年記念行事

先日もご紹介した、彼女の人生をたどるドキュメンタリー・フィルム 『Brava Victoria

二十世紀最高のソプラノのひとりとして、世界で大活躍したロス・アンへレスですが、やはり、故郷バルセロナへの想いは格別だったことでしょう。

Palau de la Música (カタルーニャ音楽堂) での演奏会


Gran teatro del Liceu(リセウ大劇場)火事の後、建設資金を集めるために開かれた演奏会。


そして、そのリセウ大劇場での最後の演奏会。
音質があまりよくありませんが、ぜひ。ビクトリア・デ・ロス・アンへレス、魂の歌です。

by Megumi_Tani | 2015-01-31 21:09 | スペイン歌曲 | Comments(0)

ファリャ再発見   

ファリャの音楽、と聞いて、まず浮かぶイメージは…「灼熱のアンダルシア」だろうか。これでもか、これでもか、と押し寄せる野性的なリズム、時に爆発的に、時に妖しく鳴り響く旋律、一瞬の閃光のようでありながら、実は緻密に構築された音楽。とにかく熱い。音楽だけを聴くと、どんなに「濃い男」かと思ってしまうが、実際のファリャは痩せて小柄で、いつも黒ずくめの服、若い頃から禿げ頭の潔癖症。まぁこう言っては何だが、地味で風采があがらない。性格は、律儀で、生真面目で、神経質。贅沢を嫌い、清貧に徹し、死後、自分の作品がただ儲けるためだけの商売に利用されないよう遺言まで残している。敬虔なキリスト教徒であった彼にとって、己の作品は神様への捧げものだったのだ。だから最後まで、より純粋で美しく高貴な音楽を求めずにいられなかった。こんな人物の一体どこからあの熱い音楽が生まれて来たのか???外から見ただけではまったく分からない、人間の内なる魂の力に感嘆する。

ファリャはスペイン南部の港町カディスの生まれだが、母親はカタルーニャ出身だった、というのが、また興味深い。音楽好きの母が幼いマヌエルにピアノを教えてくれた。いわゆるステレオタイプ的に分類すれば、熱いアンダルシアとクールなカタルーニャには少々(かなり?)ズレがある。カタルーニャ人の母親から生まれても、あんなに濃いアンダルシア的な音楽を作る。きっと人間には、「生まれ」とは全く別の次元で、その人の魂の欲求、叫びがあるのだ。

同じことを、昨年暮れ、カニサレスのコンサートを聴いたときにも感じた。カニサレスもカタルーニャ人だ。再びステレオタイプ的に分類すれば、カタルーニャとフラメンコには少々(かなり?)ズレがある。そのカタルーニャから、パコ・デ・ルシアも認めるフラメンコギターのスターが生まれた。やはり、人間には「生まれ」とは別の次元で、その人の魂の欲求があるのだと思う。お人柄は知らないが、舞台上のカニサレスは、とても真摯に、生真面目に、己の音楽に取り組む人に見えた。彼がマエストロ・ファリャを尊敬し、「はかなき人生」や「七つのスペイン民謡」を独自の編曲で演奏しているのも興味深い。

カニサレス・カルテットによる『ファリャ』


『悩ましい愛の歌~恋は魔術師より』 昔の楽譜は表紙も素敵です!
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演奏は、こちら。


音楽講座のおかげで、ファリャ再発見の3月でした。

by Megumi_Tani | 2014-03-27 00:47 | スペイン歌曲 | Comments(0)

ビクトリア・デ・ロス・アンへレス東京公演   

たまたまご縁があって渡った街がバルセロナ。そこで師事した先生は、なんと!あのビクトリア・デ・ロス・アンへレスの伴奏者だった。本人の無自覚無計画ぶりとは裏腹に、今こうして書いていてもGracias a Dios~神様のおかげ…としか言いようのない、本当に恵まれた私の留学生活でした。

80年代後半から90年代にかけて、ビクトリア・デ・ロス・アンへレスとマヌエル・ガルシア・モランテは世界中で演奏会を開き、日本へも何度も訪れました。私は日本に居ながらにして、二人の演奏を聴き、恩師に会うことが出来たわけです。恵まれた留学の、そのまたエピローグのような年月でした。娘がお世話になった先生にご挨拶をしたい、と、両親が北海道から上京し、カザルスホールの最前列で二人の演奏会を聴いた翌日、帝国ホテルで先生にお目にかかったのも懐かしい思い出です。

この時期、東京公演で必ずプログラム入りしていた曲が「パーニョ・ムルシアーノ」と「黒人の子守歌」です。ビクトリア・デ・ロス・アンへレスは「パーニョ・ムルシアーノ」がお気に入りだったようで、CDにもいろいろな時期の歌唱が残っていますし、インタビュー番組でも歌っています。

「黒人の子守歌」は、やはりバルセロナゆかりの作曲家で、グラナドスやモンポウより一世代若いモンサルバージェの作品『五つの黒人の歌』の中の一曲です。この『五つの黒人の歌』は、実に個性的、独創的、魅力的な作品で、ビクトリア・デ・ロス・アンへレスはピアノ伴奏、オーケストラ伴奏両方で、それはそれは見事な録音を残しています。今回のリサイタルでは「黒人の子守歌」と終曲の「黒人の歌」を歌わせていただきます。いつか全曲をお聴きいただける機会があればいいなぁ…。

ビクトリア・デ・ロス・アンへレス東京公演のアンコールは、「カルメン」「さらば、グラナダ」「エル・ビート」等々。カルメンのあの有名な前奏が鳴ると、客席はもう大喜びでした。

<パーニョ・ムルシアーノ>
銀細工師さん、教えてほしいの 恋人のキスをつなぐには どれだけ銀が要るかしら? 
彼がくれた熱いキス これを銀細工にしたいの だってあたしは彼の忠実な恋人ですもの
<黒人の子守歌>
おやすみ坊や ちいさな可愛い子 ヤシの実みたいな頭 コーヒー豆みたいな顔 
白い悪魔がやってきてお前を食べちゃうよ… でもほら!もうお前は奴隷じゃない 
ちゃんといい子にしてたなら ボタン付きの洋服を買ってもらえるよ おやすみ坊や おやすみ…
<黒人の歌>
ヤンバンボ!ヤンバンベ! まっくろ黒人のひと騒ぎ! 踊るはヤンボの一本足! 飲んで歌って大騒ぎ! 酔って歌って行っちまう! オッと!みせます!でんぐり返し ヤンバンボ!

1986年東京公演アンコール「さらば グラナダ」
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東京公演(1988‐1990)から抜粋したCD
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by Megumi_Tani | 2013-05-21 23:57 | スペイン歌曲 | Comments(2)

モンポウの歌曲   

プログラムノート第2回は、フェデリコ・モンポウの歌曲についてご紹介します。

スペイン歌曲と出合ってまだ間もない頃、モンポウ作曲「夢のたたかい」という作品を、ビクトリア・デ・ロス・アンへレスのLPレコード(!)で初めて聴きました。スペインには、こんなにも繊細で美しい歌曲があるんだ…。エル・ビートやガルシア・ロルカ採譜による古謡「18世紀のセビリャーナス」しか知らなかった私には、新鮮な驚きでした。レコード店を片っ端から探してみると、モンセラート・カバリェやホセ・カレラスのLPはあるけれど、テレサ・ベルガンサのLPはない。しかも歌詞カードを見ると、綴り方が何だかスペイン語と違っている。カタカナ読みできるはずの歌詞が読めない…。なぜ?…。当時の私は、カタルーニャについて、カタルーニャ語について、何も知らなかったのです。手がかりを探そうにも、肝腎の楽譜が手に入りませんでした。のちにバルセロナへ渡り、老舗の楽譜店Casa de Beethovenでドキドキしながら「“Combat del somni”の楽譜をください」と言った時のこと、先生におそるおそるこの曲のレッスンをお願いしたときのことを懐かしく思い出します。

ピアニストとしての腕前を有していたモンポウは、「歌と踊り」「内なる印象」など、多くのピアノ作品を残しました。一方で、歌曲の分野にも「夢のたたかい」のほか、「魂の歌」「牧歌」「川面に雨がふりしきる」「シル河の金の砂」など、独自の印象深い作品があります。私のCD「魅惑のスペイン」に収録した「雪」は大好きな作品ですが、日本ではほとんど演奏される機会がありません。触れればこわれてしまいそうな儚さ、にぶく透明な世界。薄曇りの冬の空から、はらはらと舞い落ちる雪のかけらが見えるようです…。

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by Megumi_Tani | 2013-04-25 12:08 | スペイン歌曲 | Comments(2)